第40話 決着と・・・

ブラッディベアと冒険者達の戦いはゆうに1時間を超えた。

次第に戦況は、ブラッディベアが有利となっていた。


途中、交代で上級ポーションを飲んでは疲労回復を図ってはいるのだが人間と魔物では体力が桁違いであり、特にブラッディベアなど大型の魔物はその体力が半端ではないのだ。



どうしたものか!



手を出すには早い気もするし......。



「エディオン、邪魔にならないように魔弾で牽制するだけでも良いのでは」


「ん~、それもありか。それなら、いやダメだな...やっぱりある程度、上位種との戦闘を経験させるべきだと思うんだ。彼等の技術向上の為には必要な事だからね」


「そうですね、エディオン様の言う通り経験に勝るものは有りませんものね」


「エディオンは、下手に手助けをするのは良くないと考えているのね」


「そうだね。この世界はある意味、弱肉強食の世界だから奪われたくなかったら自分達で頑張って守らないとね。まぁ、それでも危なくなったら最終的には助けるけどね」


俺達三人は戦況を見ながら小声で話をしていた。



グワッー!


ッダァー!


何人かがブラッディベアの返しの裏拳を受けて吹き飛ばされていった。


そこから一気に形勢がブラッディベアの方に傾いてしまった。


残りのパーティーメンバーで戦ってはいるが前衛の剣士と槍士が居ない状態では流石に手に負えないだろう。


こちら側では、ギルド長が帯剣している剣に手を掛けてその様子を見て駆け出そうとしていた。


ここで、指揮官が居なくなると統制が取れなくなるので、俺はギルド長に声を掛けた。


「ギルド長、俺達三人が行くから戦闘している冒険者を下げてくれ」


「えっ」


「早くしないと全滅するぞ」


「分かった。全員下がれ~‼」


ギルド長の叫び声を聞いた前線の冒険者達が一斉にこちらへと撤退してくる。


それと、入れ替わる様に俺達三人が前線へと駆け出した。


オスを俺が、メスの方をソフィアとヘザーさんの二人が...


俺は一度で始末する為に女神様謹製の剣を手にして、風魔法の風刃を纏わせるとブラッディベアへと肉薄する。

するとブラッディベアは肉薄した俺に対して右腕を振り下ろしてきた。

俺はその右腕をジャンプして避けると、その右腕を足場にして更にジャンプした。

そしてブラッディベアの首を目掛けて剣を一閃、そのままブラッディベアの背後へと飛び降りた。


ズズッン!


俺が地面に着地したと同時に、ブラッディベアの頭部が地面へとずり落ちた。



「ヘザーさん、左から行きますので右をお願いします」


「えぇ、任せない」


ブラッディベアのメスは私達が女性と分かっているのか余裕の表情を浮かべていた。


でも、私達はエディオン様には及ばないですけれども、それなりに強いんですよ。


わたしとヘザーさんは、エディオン様と同じ様に剣に魔法を纏わせながら攻撃を仕掛けます。


わたしは、火魔法の豪炎を...ヘザーさんは、水魔法の氷結を...。


ブラッディベアが振り降ろしてくる左右の腕を上手く捌きながらその時を待ちます。


そして、その時がやって来ました。


ブラッディベアがヘザーさんに右腕を振り下ろした時に左腕が無防備になったのです。


それを隙を逃さず、わたしは豪炎の剣で肘を内側から切りつけました。


すると綺麗に肘は切断され、切り口は炎で焼かれました。


ガァァァ~!


切断され炎で焼かれたその痛みにブラッディベアは上体を振ります。


その時、無防備になった右腕にヘザーさんが氷結の剣で切り掛かりました。

ヘザーさんはわたしと同じ様に、肘を狙ったようですが少しタイミングがズレてしまいました。それでも、右の手首を切り落とす事に成功しました。


グゥアァ~!


そして、氷結の剣で切られた手首から肩口までが一気に凍り付いていきます。


最後は、エディオン様が首を跳ねて戦闘は終了となりました。

時間にして5分程の出来事でした。



「「「ウォー‼」」」



ブラッディベアが地面へと倒れ伏した瞬間、討伐に成功した事に対して戦場にいた冒険者達から一斉に歓声が上がりました。


◇◇◇◇◇


その日の夕方......。


街の中央広場では、祝勝会が盛大に開かれていた。


今回の戦いにおいて怪我人は複数出たが、命を落とす者が居なかった事は非常に重要だった。


俺達三人の周りには前線で戦っていたA・Bランクの冒険者パーティが集まりどんちゃん騒ぎとなっていた。


その前線での状況を知らない冒険者達は首を捻り、祝勝会という名のお祭りを楽しんでいた。



そして、翌朝......。


「昨日はありがとう。ギルド長として礼を言わせてくれ」


「いいえ、冒険者としての役割を果たしただけですから」


「それでもだ。しかし、あそこまで実力が有るのにどうしてCランクの冒険者のままなんだ」


「あ~、それは俺達が旅人なので、一つの街のギルドで常駐しないからですよ」


「そうか。ではまた旅を再開するのか」


「そうですね。でも、七日位はこの街に居ますので依頼は受けますよ」


「それは、ありがたいな。そうだ、ギルドカードを出してくれ今回の報酬を入金するから」


俺達はギルドカードをギルド長に預ける。


「ちょっと、待っててくれ」


そう言うと、ギルド長は机へと向かい机の上にある魔道具へとカードを翳した。

そして、俺達の方へと戻ってくるとカードを返してくれた。


「えっ、ランクが上がってますけど」


「そりゃそうだ、単独でブラッディベアを討伐出来るんだ。

俺とAランクの冒険者パーティのリーダーの推薦で上げさせてもらった。

三人には、これからも頑張ってもらわなくちゃな」


こうして、今回の報酬はAランクの冒険者パーティへの昇格と金貨が其々に100枚ずつという結果になった。

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