第39話 襲来

明方の警告の鐘の響きに目を覚ました俺達三人は、どう対処するか宿の部屋で話し合っていた。


「この鐘の鳴り方からすると、魔物の襲来を知らせる鐘の鳴らし方だね」


「エディオン様、どういう対応を取りますか」


「緊急事態で冒険者には緊急招集が掛かっている筈だから、穀倉地帯へと続く街道の門の方へ行くのが正解だろうね」


「じゃ、私達も参戦すると言う事ね」


「そうだね。でもここでのやり方が有る筈だから取り敢えずはその指針に沿って行動しよう」


俺達三人は装備を整えると、宿を出て冒険者達が集まっているだろう門の方へと歩き出した。


◇◇◇◇◇


「よし、冒険者はAランクの冒険者パーティを先頭にランクごと別れて位置に就け、周りとの連携を忘れるんじゃないぞ」


ギルド長の𠮟咤激励を受けて、約100名の冒険者達が門の外へと動き出した。


集団の最後方で待機していた俺達三人は、目の前に居たDランクの冒険者達にCランクの冒険者達がどの辺に居るのかを聞いて、門を出ていく冒険者達よりも少し速足でその位置へと向かった。


魔物達は約300体という事だが、上位種の数は把握できていないようだ。

小物ならば冒険者側も100人は居るということなので討伐は直ぐに終わりそうだが以前の岩穴の時のように魔法陣を介しての補充がない事を祈ろう。



そして、いよいよ先頭の方では戦闘が始まったようだ。


楔形の陣形でAランクの冒険者パーティが後方にいる上位種を討伐する為に突っこんでいく。

俺達は楔の中間あたり外側に居るので、横へ追い出されるようにして向かってくる魔物達を切り伏せて行く、後始末は更に後方に居るDランクの冒険者達が行うので俺達は魔物が動けないように切り伏せるだけで良いらしい。

だが、俺達が手にしている剣は性能が良いので一刀で始末していた。


最初の戦闘はゴブリンが主流だったが、ウルフ、オークへと魔物の種類が変化していく、その中で怪我で戦線を離脱する冒険者もチラホラと出て来た。


俺達はその穴を埋めるように少しずつ中央寄りに移動しながら魔物の討伐を続けて行った。


そして、最後のオークを討伐したところで残るは上位種のオーガ10体となったのだった。

それと対峙しているのは、Aランクの冒険者パーティ2組とBランクの冒険者パーティー4組らしく連携を取りながら戦っていた。


俺達は戦闘の邪魔にならないようにその戦いを遠巻きに眺めている。


「ソフィア、探索魔法で索敵をしておいてね」


「はい、エディオン様」


俺は、この場所に指揮する個体が居ない事が気になっていたのだ。


「ヘザーさん、魔力探知で魔力溜まりを探してもらえますか」


「えぇ、分かったわ。何かあるのね」


二人それぞれに探知を任せて、俺は目の前で行われている上位種との戦いを観察する。

それは、いざという時に加勢が出来るようにする為だ。



冒険者側は無理をせず一体一体を確実に仕留めて行く。


そして戦闘開始から3時間後、最初の戦闘が終了した。



最前線で戦った冒険者達が喜びあっていたが、そこへ俺が大声で叫んだ。


「次が来るぞ‼」



そう、二人に頼んでいた事が現実となったのだ。



穀倉地帯の方から現れたのは、ブラッディベアという魔物だった。

二足で立つとゆうに5mはある大物だ。

それが、二頭も現れたのだ。


多分この二頭から逃れる為に魔物達は移動を始めたのだろう。


ブラッディベアの腕の一振りはオーガなど一発でミンチ肉にしてしまうからだ。



そこへ、俺達の後方からギルド長がやってきた。


「拙いな、ブラッディベア二頭か。こいつらは番だな、倒さないと子供が生まれると更に脅威になる」


そして、ギルド長を視認した前線の冒険者達がいったん後退してきた。


今回のリーダーであろう1人がギルド長に尋ねる。


「どうします、ギルド長」


「討伐するしかないな」


そう、答えた後。

ギルド長が後方に向かって叫んだ。


「おい!準備して置いた、上級ポーションを全部前線に持って来い」


後方にいたDランクの冒険者達が上級ポーションを取りに走っていった。



上級ポーションが届くと最前線で戦っていた冒険者達に配られていく。

そして、全員に行き渡り飲みほした後...


「よし、全員生き残って街へ帰るぞ」



「「「オゥ~‼」」」



ブラッディベア一頭に対して、Aランクの冒険者パーティ1、Bランクの冒険者パーティ2で対処するようだ。


「エディオン様、助けないんですか」


「まだだね、ここは彼等に任せよう。

俺達はこの街の冒険者ではないし、旅人でCランクの冒険者だから最後の最後どうしようもなくなったら手助けしよう」


「そうよソフィア、彼等にも街を守るというプライドが有るのだから」



そして、プライドを掛けた戦いが幕を上げた。



後衛からの魔法攻撃加えながら、前衛が剣と斧、槍などで攻撃を仕掛けていく。


後衛の弓士も矢を放つが、ぶ厚い毛皮に阻まれて刺さる事はない。

だが、顔の辺りに飛んで行く矢は嫌がっているようだ。



今のところ、戦いの状況は五分五分だが時間が掛かると冒険者側が不利となっていくだろう。

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