第37話 末路に興味はない

あれから三日、俺達三人はギルドで依頼を受けたりしていたが、ゴロつきの連中が絡んでくることはなかった。


未だにマーカーは当てたままにしてあるので、根城とかの把握は既に出来ている。


俺達が、この街を離れるまで静かにしていてくれれば、こちらから何も行動を起こす必要は無いのだ。



「そろそろ、次の街に向かって旅を再開しよと思うんだけれども如何かな」


「そうですね。この街中の匂いには中々なれませんしね」


「エディオン、その次の街までは遠いのかしら」


「そうですねぇ...駅馬車で五日、歩きで十日という処でしょうか」


次の街は、アーネスト領の先にあるボトムズ領のダウニーという街になるのだが山岳地帯の山越えをするので日数が掛かるのだ。


「エディオン様。じゃ、今回は駅馬車を使うんですか」


「いや、冒険者ギルドで幌馬車を借りて行こうかと思うんだよ。

その方が、気兼ねなく旅が出来るからね」


「そうね、変な奴に絡まれても困るから、私はそれで良いと思うわ」


三人の中で話が纏まったので早速この日の夕方ギルドに幌馬車のレンタルを申請に行ってきた。

その際、それなら護衛の依頼を受けませんかと受付嬢に勧められたが丁重にお断りして置いた。


その理由は、俺達は旅が目的であって冒険者稼業が目的ではないからだ。

護衛を薦めてきたその受付嬢は残念がっていたが致し方がない。

それに、冒険者は俺達以外にもいるのだから。


翌朝、冒険者ギルドの裏手で予約して置いた幌馬車を借りて、俺達はソフランの街を出立した。


◇◇◇◇◇


「旦那、出発したようですぜ」


「そうか、では儂らも行くとするか」


ゴロつきとそれを取り纏めている黒幕の男がエディオン達の後を追うようにソフランの街を出発した。


◇◇◇◇◇


「偶には幌馬車での移動もいいね」


「でも、長い間座っているのも少し辛いものがあります」


「そうね、1時間から2時間位に一回は休憩が欲しいわ」


そう案外座っているのも大変なのだ。

ガタガタと道なりに揺れるから変に身体に力が入るしね。


「そろそろ、一回休憩しよう」


街道をゆくほかの馬車の迷惑にならない場所を見付けて端に寄せて馬を停止させる。


停止すると早速幌馬車の中から伸びをしながら二人が降りてくる。


「あ~、お尻がいたいです」


「私は、腰もいたいわ」


「俺は手綱を持っている腕が痛い」


今迄が歩きでの旅の方が多かったので身体が馬車の旅に不慣れなのが響いていた。


三人で身体を解す体操をして、水分の補給をする。

つでに、馬達にも飼い葉を与え水を飲ませておく。


「どこら辺りで、絡んで来るかな」


「まだ、マーカーは生きているんですか」


「あぁ、もしかすると...と、思っていたからね」


「懲りない人達ですね」


「今度は容赦なくやらせてもらうけれどね」


今度は、黒幕の男も来ているようだから情けは掛けない方針だ。

ただ、あの日古びた建物の中にいた男は来ていないようだ、フレアの街の方へ向かっているのがマップに表示されているからだ。


黒幕の男を見限ったのだろう。

賢明な判断だといえる。


「ここでは、まだ人目が多いからもう少し先まで進もうか」


俺の言葉に、馬車の中へと乗り込む二人。

俺は御者台に乗り込み、馬達の手綱を取り幌馬車をダウニーの街に向けて進めた。



ソフランの街を離れて3時間...と言っても馬の蹄の音はパコパコッとあくまでものんびりとしたものだが。


後ろの連中も追い付いてくる頃だろう。


駅馬車も人通りも無くなる時間帯だ。


そう思っているとマップ上のマーカーが一気に近づいてくる。


「そろそろ来るよ」


幌馬車の中の二人に声を掛ける。


「「はい」」


既に戦闘態勢は出来ているようだ。

街道の道幅が広くなった所の端へと馬を導きそして停止させた。


すると、後方から砂煙をあげながらゴロつき共の乗った馬車が2台やって来た。


「前回は、隙をつかれたが今日はそうはいかないぜ」


如何やらマーカーの事は知らないようだ、ただの魔法だと思っているのだろう。

まぁ、今回はマーカーを使う気は更々無いけどね。


今迄散々悪さをしているようだから懲らしめてやりましょう。

心の中で『助さん、格さん頼みましたよ』と言っておく。


「ふん、平然としていられるのも今の内だけだぜ」


リーダーの男が威勢よく良く吠える。


「それ、やっちまえぇ~」


男達が一斉に剣を抜き切り掛かってくる。


それを、準備は万端の女性陣が何食わぬ顔で切り伏せて返り討ちにしていく。


その様子を啞然と見ていたリーダーの男は俺の方へと切り掛かってきた。


一太刀で終わらせるのは簡単だが、痛みを与えるてからにする。


キンキンッ!


グシュッ!


キンキンッ!


ザシュッ!


満身創痍の筈だが、男の矜持か目だけは死んでいなかった。


「次は真面な商売をしろよ」


俺はそう言うと、一瞬の内に男の首を刎ねた。


残るは黒幕の男だけになったのだが、男はゴロつき達の惨状を見て乗っていた馬車から既に逃げ出していた。


「エディオン様、どうするんですか」


「如何しようか、マーカーは当ててあるからどうにでもなるけど。

二人はどうしたい...」


二人は如何したいかを考え始める。


少しして、答えが返ってきた。


「これまでの罪を洗いざらい喋らせるように自白をさせるのが良いと思います」


「そう、みんなの前で処刑されるのが相応しいわ」


「わかった、じゃマーカーを使って自白を促す呪術を掛けて置こう」


後は、ソフランの街で裁いてくれるだろう。


その後は街道に散らばったゴロつき共の遺体を乗って来ていた馬車へと積込み状態保存の魔法を掛ける。

そして、馬車を引いてきた馬達に来た道を帰るように促し、俺達三人はそれを見送った。


全ての処理が済んだ俺達は再びダウニーの街に向けて旅を再開した。

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