第35話 現状の確認
魔法陣から現れたゴブリンキングは直後に威圧の咆哮を放ったのだが。
俺達三人が平然と佇んで居るのを見て一瞬の間フリーズしていた。
だが、直ぐに戦闘態勢へと移行するゴブリンキング。
キングの名は伊達ではないらしい。
俺達三人は、俺がメインで切り掛かり二人がその隙をついて攻撃を加えると言う戦法で戦いを開始した。
先程と同じでキングには申し訳ないが、ドルフさんの剣の実験台になって貰おう。
そんな事とは露知らず、攻撃を仕掛けてくるキング。
俺は取り敢えず身体強化の魔法は使わずに純粋な力だけで戦う。
剣を交える度に感じるがドルフさんの創り上げた剣は本当に性能が良い物となっていた。少量の魔力を流すだけでキングの振る大剣を物ともせず逆に刃毀れを起させるのだから。
それから、サポートに回っている二人も剣の扱いに慣れた様子で隙をついてはキングの肉体を削っている。
さて十分に、剣の性能を知る事が出来たのでそろそろ終わりにしよう。
二人に目線を合わせて戦闘を終わらせる事を伝える。
そして、二人が同意の頷きを返してくれた瞬間、俺は剣の性能をフルに使うために魔力を注入した。
注入された魔力により蒼く耀きだす剣。
その蒼い輝きを目の当たりにしたキングは一歩後ろへと脚を引いてしまった、その動きを逃さずに俺は思い切り踏み込んで剣をキングへと振り下ろした。
グホォッ‼
左肩から右脇腹へと振り下ろされた俺の剣はキングを綺麗に切り裂いた。
「ふぅ~、終わったね」
「「はい」」
「問題はこの魔法陣だよね」
「そうですね」
「これは完全に、意図的にこの岩穴に施されたものですね」
俺達はキングの亡骸を始末した後、魔法陣の取り扱いを如何するか悩んでいた。
「消去してくださいね」と唐突に俺の意識の中にアイネ様が割り込んできた。
「え~と、簡単に出来る物なのですか」
「勿論よ。エディオン、ちゃんと教育して上げたでしょう」
あ~、俺は小さい頃のアイネ様のスパルタ教育を思い出してしまった。
「ごめんね。二人共魔法陣から離れていてくれる」
ソフィアとヘザーさんに声を掛ける。
怪訝そうな顔をしていたが素直に魔法陣から離れてくれた。
俺は魔法陣の中央に立ち、両手を魔法陣に翳すと消去の魔法名を口にした。
「elimination《エリミネーション》」
すると、鏡が割れる様なパリーン!と音がして魔法陣が一瞬で消え去った。
その様子を見ていた二人が驚いた表情のまま俺の下に駆け寄って来る。
「エディオン様、消去出来たんですか?」
「そう...小さい頃アイネ様から教えて貰っていたんだ。すっかり忘れていたんだけど」
「もしかして、アイネ様が来られました」
「いや、いつもの意識の中に語り掛けてくる方」
◇◇◇◇◇
あの後、岩穴から出て来た俺達三人は手分けして表に放置していたゴブリン達の処理をして、岩穴の入口をその周りの土を物質変換で同じ性質の岩にして塞いでおいた。
そして、村に帰り着くころは夕方近くになっていた。
村の方も村人総出で作業を頑張ったらしく、すっかり綺麗に片付けられていた。
俺達は、探索の結果報告をする為に村長さんの家を訪ねた。
「あっという間に綺麗に片付きましたね」
「いや、いつもの事ですから手慣れたものですよ」
「では、探索の結果から報告しますね」
それから、詳細に事の成り行きを村長さんに聞かせた。
「そうでしたか、有難うございました。
ただ、何もお返し出来ないのが申し訳ないです」
「いいえ、それは望んでいませんから。偶々、旅の途中で気が付いたからやっただけの事ですから。ただ、8人の方が亡くなっていますし、こちらもこれからも頑張って下さいとしか言えませんから」
「いえいえ、ゴブリン集落を殲滅して下さっただけで有難い事です」
この日、もう一日村の一角でテントを設営して就寝して、翌朝村人全員の見送りを受けて旅を再開した。
「随分な量の食料などを置いて来ましたよね」
「ほら、その代わりキングとかの魔石を全部貰ったから、要は物々交換だね」
「でも、それ以上だったと思いますよ」
俺は二人の意見に苦笑いを返しながら街道を進むのだった。
そして、予定よりも三日遅れでアーネスト領の領都ソフランに到着した。
「流石に領都ですね、人が溢れんばかりです」
ヘザーさんの感想に...
「でも、ルージュの街の方が人も多いし、何と言っても街中が綺麗でしたよ」
ソフィアは一度ルージュの街に行ったからの感想だろう。
俺としては街中の臭いが気になるところだ。
領都なのにこの○ド○のような臭いは無いと思う。
「取り敢えず、宿の確保に向かおう」
「そうです、少し休憩したいです」
「私も、何か少したべたいです」
その時、三人のお腹辺りからグ~~と音がした。
「じゃ、宿を探しながら屋台でも回って軽く腹ごしらえもしよう」
三人で顔を見合わせて笑ったあと、行動に移すのであった。
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