第34話 少し寄り道

村を襲っていたゴブリン達を討伐した後、その後の処理と亡くなった村人たちの埋葬を手伝うと陽が傾き始めていた。


俺達はこのまま村で一晩過ごす事を村人たちに話して、簡単な食事を村人たちに提供することにした。


70人程の村で8人が命を落としたのだが、既に埋葬したことも在り村人たちは至って冷静だった。

案外強かで前向きな考えなのだろう。

この世界では人の死は身近なものだから逞しく無いと生きていけないからな。


そんな中、ソフィアとヘザーさんが村の女性達と一緒になって料理を作っていく。

そして、大鍋を何個も使い出来上がった料理を子供たちが配り始めた。


食事も終わり片付けを済ませると、村人たちは其々の家へと帰って行った。


俺達もテントを設営して、中で一休みする事にした。


「明日は村の周りを探索魔法での索敵した方がいいかもね」


「わたしも、なんとなくそういう感じがします」


「何処かにゴブリン集落があるという事」


「たぶん、今日討伐した数から推測するとそいう事かと」



翌朝......。


壊れた家屋や柵などは村人たち総出で処理するそうなので、俺達はゴブリンの集落を見つける為に村から出発した。


「今朝の村長さんの話だとこの方向から現れたらしいから、先ずはこの方向を探索してみよう」


俺とヘザーさんで辺りを警戒して、ソフィアに探索魔法での索敵をやってもらう。


「この方向なのですが、先の方で崖になっているようで左右どちらかの方向から来たと思われます。それと探索魔法だと精度が落ちるようです」


「じゃ、魔力感知に切り替えて横方向へ範囲を拡げて探索してくれるかな」


「はい、やってみますね」


暫くすると、魔力の反応があったようでソフィアが目を開けてこちらに視線を向けた。


「魔力の塊が見つかりました右方向です。上位種が居る可能性もあるかと思います」


「場所が特定出来れば何とでもなるさ」


俺達は特定出来た情報を村の方へ伝えようかと考えたが、時間が勿体無いと判断して直接ゴブリン集落の殲滅に向かった。



森の中を歩くので1時間ほど掛けてゴブリン集落のある場所の近くへと到着した。

その場で、殲滅する為の対策を三人で検討していく。


「俺は、ドルフさんから預かった剣の性能を試したいから、魔法攻撃は範囲を限定して行おうと思う」


「私も、この剣の取り回しを実践で経験したいです」


俺の提案した事に乗っかる形でヘザーさんも意見を述べた。


「分かりました。では、わたしは範囲を限定した魔法を打ち込みますね」


ゴブリン達には申し訳ないが、俺達の実験台となって貰おう。


ソフィアがゴブリン集落に目線を移し魔法名を唱えた。


「bog《ボォグ》」


多分、昨日村を襲撃したゴブリンが戻って来なかったので再度襲撃をする手筈だったのだろう、30体ほど固まっていた足元にソフィアの詠唱と共に泥沼現れ一気に飲み込むと乾いた状態の元の地面へと戻った。


グギャギャギャッ‼


周辺に散らばっていたゴブリン達が騒ぎ始める。


すると、岩穴からゴブリンの上位種が姿を現した。


「岩穴の中が根城だと探索魔法では精度が低いのも納得だね。

さて、大物も出て来たことだし殲滅に移ろう」


俺達三人は剣を手に取り、残りのゴブリンを討伐する為にゴブリン集落の方へと駆け出した。

そして、直ぐに女性二人の姿を認識したゴブリンが二人の方へと殺到する。

俺は二人の強さを信頼しているので、構わず上位種の方へと突き進んだ。


ガキッ~ン!


剣と剣が交錯した音が響く。


そして、何度も剣を交えていく。


反応がいい、以前の上位種より手練れのようだ。


もしかすると、岩穴の奥にもまだ残りが居るのかもしれない。


そう判断を下した俺はドルフさんから預かった剣に風魔法の風刃を纏わせ一気に切り掛かった。


ズシャッ!


すると風刃は相手の剣諸共、身体を両断した。


さて、どうするか......


一人で岩穴に入ってしまうのはリスクが多過ぎる。


なので、俺は迷わず外に出ているゴブリン達を倒していった。


30分後...。


「二人共、大丈夫」


「「はい」」


「ヘザーさんは、剣の扱いはどうでした」


「はい、十分に使いこなせました」


時間にして3分ほど休息をして、俺達三人は岩穴の中へと足を踏み入れた。


「ん~、臭いが酷いです」


「光魔法の清浄を使いながら進もう」


そして、臭いを気にしなくて良くなった二人は足取りが軽やかになった。


岩穴の奥へと到達するとそこは10m四方の空間になっていて、中央の地面に魔法陣が描かれていた。


すると、急にその魔法陣が耀きだし光の粒子が型を作っていく。


そして、光の粒子が定着するとそこにゴブリンキングが姿を現した。


俺達三人は、即座に戦闘態勢へと移行する。


ゴァ~~~!


ゴブリンキングの咆哮が戦闘開始の合図となった。


だがキングは咆哮の威圧が効か無いで俺達が平然としているのが不思議なのか、動き始めるのを一瞬躊躇していた。


俺達三人は威圧耐性MAXなので、咆哮の効果は全く効かなかったのだ。

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