第33話 アーネスト領の領都へ
俺達は、襲ってきた冒険者達の身柄をギルドへと引き渡しその後の処分はギルドの方へ任せた。
丸投げともいうが...
その際、担当してくれた男性職員は眉間に皺を刻み、女性職員は笑いを堪えていた。
翌日......。
俺達は頼んでおいた剣を受取にドルフさんのお店に顔を出していた。
「聞いたぞ、大和の主砲を潰したらしいな」
それを聞いた女性陣が苦笑いを浮かべる。
「ワシも気を付けんとな。まぁ、下世話な話はこの辺にして置いてじゃ。
嬢ちゃんの剣は仕上がっておるぞ」
そう言うと、ドルフさんさんが鞘に収められたミドルソードをヘザーさんに手渡した。
受け取ったヘザーさんは、早速鞘から剣を引き抜いて見る。
「どうじゃ。持ってみた感じは」
「はい、持ち手がしっくりと手に馴染みますし重さも十分です」
その仕上がりにヘザーさんも満足そうだ。
「エディオン、この剣を使って見てくれ」
そう言って、今度は俺に新しい剣を手渡してきた。
「え~と、これは...」
「魔鉱石とミスリルの合金で出来ておる。
使ってみて、その感想を知らせて欲しいのじゃ。
エディオン程の技量が無いと生かせない剣になっておるはずじゃからな」
「いいんですか」
「なぁに、製作の為の実験をしてもらおうと言うだけの事じゃからな。
遠慮なく持ってってくれ」
「そういう事なら、遠慮なく使わせて頂きます」
◇◇◇◇◇
こうして、装備が整った俺達はその日の内にアーネスト領の領都ソフランに向かって旅を再開した。
「やはり移動に馬車は使わないのですね」
「まぁ、急ぐ旅でもないし。
それに、アイネ様からの依頼がいつ来るかも分からないからね」
「また、何か有るのでしょうか」
「俺は、アイネ様に助けてねと言われているし...
俺を、この世界に連れて来てくれたのがアイネ様だから助けたいと思う。
それに、ソフィアも授かったからね、そこは頑張らないと」
「そこに、私も加えて下さいね」
「勿論ですよ、ヘザーさん」
俺達は楽し気な会話を交わしながら、街道を領都に向けて歩いて行く。
フレアの街を出て二日目、この日は久しぶりの大雨となっていた。
土の街道はドロドロになり歩くこともままならなくなる。
街道をそれて雨宿りする場所を作ろうかと思ったが、野営地まで頑張って歩き通した。
「ふぅ、やっと野営地に到着しました」
「さて、ササッとテントを出して設置しよう」
俺達が作業をしていると、その後何組か野営地へと急いでやって来ていた。
商人の商隊とその護衛達、それとは別に冒険者パーティーが二組だった。
彼らも雨宿りをする為に、急いで作業をやり始めた。
俺は、横目でチラチラと向こう側を確認しながらもテントの設営を完了させる。
「二人共先にテントの中に入って着替えを済ませて、風邪を引くといけないから」
「はい。では、お先に失礼します」
俺は、二人の着替えを待っている間テント入口の軒先に取り付けた日除けの下で雨宿りをしていた。
「もう、大丈夫ですよ」
テントの中から聞こえたソフィアの声を聞いて俺も着ていたポンチョの雫を払いテントの中へと入った。
「あら、エディオン。あなた、濡れていないの」
ヘザーさんが、俺が濡れていないのを不思議がっているようだ。
「あ~、それはですね。外で待っている間に、ウォッシュとドライの複合生活魔法を使って綺麗にしたからですよ」
「エディオン様。それは、狡いです」
ソフィアからは「狡い」を頂きました。
その後、二人にも同じ様にウォッシュとドライを使って綺麗にして差し上げた。
結局、この日は雨が止むことは無く明方近くまで降り続いたのだった。
翌朝.....。
其々、野営地を出立して行く。
そして、俺達は一番最後に野営地を出発した。
「領都のソフランまでは、後どれくらいですか」
「ここからだと、残り一日という距離かな」
「何事もなくたどり着けると良いですね」
歩きでの移動は、そこかしこに色んな物が見えてくる。
綺麗な花だったり、清らかな水の流れだったり小さな生き物だったりと普段は気にも留めない物が見えてくる。
そして街道を半日ほど歩いた所で、進行方向右手側の街道から少し離れた場所で黒煙が上がっているのが見えた。
最初は討伐した魔物でも処理しているのかと思っていたのだが、微かに聞こえてくる悲鳴に似た叫び声にその判断が間違っていることに気が付いた。
「二人共、聞こえた」
「「はい」」
「転移するから、俺の肩に手を置いてくれる」
言われた通りに直ぐに置いてくれた二人を伴って俺は転移した。
そして、相手に気付かれない距離の所に転移した俺達は直ぐに抜剣すると村の集落で暴れているゴブリン達を切り捨て始めた。
30分後、全てのゴブリンは倒したが村人の中にも犠牲者は出ていた。
俺達三人が剣に着いた血糊を払い、鞘に剣を収めると村人たちが集まってきた。
「どなたか存じませんが、ありがとうございました」
「いえ、もう少し早く気が付ければ良かったのですが」
そんな俺の言葉に、村人たちは来てくれただけでもありがたかったと言葉を掛けてくれた。
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