第29話 洞窟

俺とソフィアが回り込んで確認したところ、如何やら洞窟の入口を塞ぐ形で大蛇は横たわっていたようだ。



「ソフィア、聖魔法の聖光を剣に付与して浄化をしながら洞窟の中へ入ってみよう」


「分かりました」


丁度、ガッツさんから鋼とミスリルとの合金で出来た剣を買っていたのでその剣に付与する事にした。


「ソフィア、準備は良い?」


「はい、出来てます」


準備が整った様なので、開いた隙間から早速洞窟の中へと足を踏み入れた。

剣が纏う聖光の耀きが澱んだ空気感を浄化していく。

15mほど奥へと入って行くと、そこには大きな空間が広がっていた。

ただ、その広さに比例して澱んだ空気感も半端なく強力だった。


「ソフィア、魔力を補充して。聖光をブーストして一気に浄化してしまおう」


「分かりました。何時でも大丈夫です」


俺とソフィアは両手で剣を持ち前方に掲げると、魔力を補充して聖光をブーストした。

すると、目を開けていられない位の眩しい程の聖光の耀きが一瞬の内に洞窟内に広がった。そして、徐々に周りの空気感が清浄なものへと変換されていった。


10分後...。


「ここは、あの大蛇のお家のようだね」


「そんな感じがします。あっ、エディオン様...あそこを見てください、まだ奥に何かありそうです」


ソフィアが見つけてくれた洞窟の奥の方にある扉に向かって二人で近づいて行く。

そして俺はその扉の持ち手に手を掛けると奥の方へ扉を押し開いた。

すると、その開けた扉の先にもまだ通路が続いていた。


俺とソフィアは剣を再び掲げると、その通路を先へと歩き始めた。


10mほど歩くとそこには10m四方の空間が有り、聖光の耀きで照らされた中央の地面には1m位の丸い石が置かれていた。


聖光の耀きで空間は既に浄化されているが、置かれている丸い石からは未だに瘴気が漏れ出していた。


「これが元凶みたいだね」


「元々は何でしょうか」


「ん~、石だと思うけれど、こんな大きさの魔石は見たことが無いし」


「もしかしたら、あの大蛇の卵なのでは」


ソフィアのその指摘に、ハッと感じる物があった俺は取り敢えずその丸い石の回りに瘴気が拡がらないように結界で囲い洞窟の外で横たわっている大蛇の下に行く事にした。


瘴気の無くなった洞窟の外へと出てみると外の空気感も自然の環境に近い感じがするようになっていた。


「先ずは、泉とその周辺の浄化が先かな」


「そうですね。お手伝いします」


俺とソフィアは両手を繋いで意識の共有をする。

そして、浄化する範囲を意識しながら魔力を練って効果を拡げていく。


勿論のこと、その範囲には泉と森と大蛇も含まれている。


浄化する範囲に魔力が行き渡った事を確認すると同時に、二人で魔法名を口にした。


「「purification《ピュリフィケーション》」」


俺達二人を中心に指定した範囲に魔法陣が浮かび上がり浄化の光が降り注いだ。


そして、降り注いだ浄化の光が消えたのを確認する俺とソフィア。

それと同時に周りの景色に目をやると、泉もその周りの森も綺麗に輝いていた。


「大蛇の穢れも綺麗に消えているね」


「はい、そのようです」


ただ生命力をだいぶ消耗しているらしく、目覚める気配は感じられない。


そこへ、女神のアイネ様が俺の意識の中に語り掛けて来た。


「エディオン、聞こえますか」


「はい」


「両手で大蛇の体に触れて下さい。私がエディオンを通して神気を送ります」


俺はアイネ様の言う通りにして大蛇の体に両手を添えた。


「エディオン、目を閉じて心を無にしておいて下さいね」


アイネ様がそう言った数秒後、俺の身体を通して大蛇に触れている両手を介して神気が送られて行くのがわかった。


それから、数十秒後神気が通る感覚が無くなり作業が済んだことを理解した。

そして、大蛇から触れていた手を離しそこから離れると......

横たわっていた大蛇が光に包まれて、一人の大人の女性へと姿を変えた。


その様子を見ていたソフィアが直ぐに女性に近付き、ウエストポーチからバスローブを取り出すとその身体に羽織らせた。

そして、女性はまだ意識をとり戻しそうに無かったので、俺とソフィアはその場から洞窟入口の横へと移動してテントを組立て、女性をその中に寝かせておいた。


「取り敢えずここで野営する事にして、準備を始めようか」


「はい」


現在時刻は、午後1時過ぎ。

ソフィアと二人昼食を済ませた後、俺達は椅子に座ってテントの傍に出していたテーブルで紅茶を飲みながら甘いクッキーを食べてのんびりと過ごし、女性が目覚めるのを待っていた。


そして、午後2時過ぎ......。

女性が目覚めたようで、テントの中から着崩れていたバスローブを着直しながら女性が歩み出て来た。

そして、お辞儀をすると「ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えてきた。


「え~と、初めまして。俺はエディオンです」


「わたしは、ソフィアです」


「私は、ヘザーと言います」


お互いに挨拶が済み、俺はこれまでの経緯をヘザーさんから聞く事にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る