第28話 次の街へ行く前に

14日間ほど滞在したハミングの街をついに出立する日がやって来た。


ここまでの数日は『暴風の盾』のメンバーと繰り返し模擬戦をしたり冒険者ギルドの依頼を受けたりしていた。


それによりポイントも充分に溜まり、俺とソフィアはギルドランクが晴れてCランクへと上がった。


「いよいよ、次の街に行くんだな」


「はい、お世話になりました」


「いや~、俺達の方が散々お世話になりっぱなしだったよ」


「気を付けて、旅を続けてね」


『暴風の盾』のメンバーの皆さんと別れの挨拶をして俺とソフィアは次の街へと旅を再開した。


「行っちまったなぁ」


「まぁあの二人なら、よっぽどの事が無い限りだいじょうぶでしょう」


「最後の模擬戦、俺達は手も足も出ない状態にまで追い込まれたからな」


「また、一緒に過ごせるといいわね」


◇◇◇◇◇


「暴風の盾の皆さんはみんな良い人達でしたね」


「そうだね、みんな向上心があって良いパーティーだったね。

さて、これから向かうフレアの街に行く前に、俺達はちょっと寄り道をしなくちゃいけなくなったんだよね」


「そうでしたね。それでアイネ様は何と言われたのですか?」



それは、ハミングの街街を出立する前日のこと......。


宿の食堂で夕食を済ませて部屋で出立の為の荷物整理をしている時だった。

女神のアイネ様が唐突に話しかけてきたのだった。


「エディオン、聞こえているかしら」


「はい、何でしょうアイネ様」


「実はね......と言う事なのよ」


......。


「泉が瘴気で汚されているからその泉の浄化をして欲しいと言う事だったよ」


「では、その瘴気の大元を探し出して倒さなくては解決しないと言う事ですか」


「そういう事だと思うけれども、浄化の方が大変なんじゃ無いかと思うんだよね」


「それは、如何いう理由でですか」


「浄化する範囲が分からないからだよ。

凄く広大かも知れないし、逆に小さいかも知れないしね」


「なるほど、そういう事ですか。納得しました」


ソフィアと話しながら街道を進んで行くと、アイネ様が言っていた道を外れる為の目印の物が見えてきた。


「あの岩山が目印だね」


「特徴的な岩山ですね、何か動物の横顔にも見えますが」


「そうだね。キラーモンキーの横顔が似てるんじゃない」


「ウフフッ、そう言われれば確かに似ているかもしれません。

実物はかなり狂暴ですが、あれならば動ないので安心ですね」


俺とソフィアはその岩山を起点に山の方へと進路を変更する。

道を変えて1時間ほど歩いたところで陽が傾いて来たので移動する事を諦めて野営の準備をする事にした。


「エディオン様、今夜はわたしが夕食を作りますね」


「いや、手分けしてササッと作ってしまおう。

久しぶりの徒歩での移動だったから、思っているよりも疲れが蓄積していると思うからね」


「分かりました、ではお願いします」



翌朝......。


野営した場所を綺麗に片付けて出発する。


「ここからは、マップ機能を使って進もうか」


「初めてですね、その機能を使うのは」


「以前は使っていたんだけれど、ソフィア以外の人に知られるのは良くないからね」


「そうですね。それで、どうですか場所は分かりましたか」


「ここから、歩きで1時間というところかな」


マップの表示に従って今度は森の中へと進んで行くのだが、探索魔法での索敵はソフィアに任せている。

こういう時は二人での行動が便利だと思う。

一人であれもこれもは流石にしんどい。


予定通り、歩くこと1時間。

瘴気に汚された泉が目の前に見えてきた。


「この辺で一旦進むのを止めよう。ソフィア、索敵の方はどう」


「今の所、周りに凶暴な獣や魔物の気配は感知出来ません」


「そうか、ありがとうソフィア」


目的の場所に到着したので、俺はより魔物に特化した探索魔法の魔力感知に切り替えて索敵を行っていく。ソフィアが行っていたのは気配察知である。


「泉の東側、奥の方に強い魔力反応があるね」


「わたしも、魔力感知に切り替えてみます。あっ、有りますね」


「じゃぁ、ここから泉を東側に回り込んで様子をみようか」


「はい」


俺達は存在隠蔽の魔法を使いながら魔力反応のある方へ回り込んで行く。


ある程度近づいたところで、今度は遠見の魔法を使って目で確認する。


そこには、全長で20mはある大きな大蛇が横たわっていた。


「どうだろう、あの大蛇が元凶には感じないんだが」


「その様ですね。大蛇の向こう側に元凶が有る様に感じます」


「大蛇はそれが原因で動きが取れないのか、又は元凶を抑え込もうとしているのかの何方かだろうな」


「わたしも、そう考えます」


俺達はお互いに目線で確認し合い、魔法障壁を纏うと大蛇の方へと近づいていった。だが、俺達が近づいても大蛇は一向に動く気配は無かった。

死んではいないようだが、瀕死の状態ではあるようだ。

先ずは元凶を確認するのが先決と考え、俺とソフィアは泉の方へ回り込んで大蛇の向こう側へと移動した。

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