第27話 模擬戦という名のシゴキ

ハミングの街に来て三日目の朝......。


宿の食堂で俺とソフィアが朝食を食べていると、ロッドさん達が2階部屋から食堂へと降りてきた。


「おはようございます」


「あ~おはよう。後で頼みたい事があるから、食事が済んだら部屋でのんびりとしておいてくれ」


「あっ、はい。分かりました」


午前10前、部屋の扉がノックされロッドさんが声を掛けてきた。


「済まないロッドだ。俺達の部屋に来てくれるか」


「はい、分かりました」


俺とソフィアは部屋を出てロッドさん達の部屋へと向かう。

既に部屋のドアは開いていて、中を覗くとロジャーさんに手招きをされたので俺達は素直に部屋の中へとお邪魔した。


「二人共ここに座っていて、いまお茶を用意するから」


すると直ぐにクレアさんが全員分の飲み物の入ったカップを運んできた。

そして、全員が受け取ったところでロッドさんが話を始めた。


「飲みながらでいいから話を聞いてくれ。

食堂で言った二人へのお願いなんだがな、俺達と模擬戦をして欲しんだ。

二人は俺達よりも遥かに剣技が優れている。

そして、俺達はAランクを目指しているんだがこのままだと万年Bランクで終わりそうなんだ。そこで、昨日の夜みんなで話し合ったんだが二人に剣術を鍛えて貰おうと言う話で纏まったんだよ。ただ、こちら側の一方的なお願いになるからダメな時は諦めるから、お願いを聞いて貰えないだろうか」


「いいですよ。ソフィアも大丈夫だよね」


「はい、大丈夫です」


「本当に良いのか。こちらとしては有り難いんだが...」


「「大丈夫ですよ」」


こうして、俺とソフィアは『暴風の盾』の皆さんと模擬戦をする運びとなった。



その日の午後......。


訓練場は冒険者ギルドではなく鍛冶屋のガッツさんの所の裏庭を使うと言う事だったので俺とソフィアは時間よりも早めに宿を出てそちらに向かっていた。


あの後...お願いを聞いた後だが。

何故、ギルドの訓練場では無いのかと俺が聞いたところ、ロッドさんが他の冒険者達が模擬戦を見て俺も私もと言って来るのが目に見えて分かっていたからだと。

そうすると自分達の時間が削られてしまうし、俺達の負担が増えてしまう事を考えてガッツさんの所を使うことにしたらしい。


何となく分かるような気がする、全員では無いだろうが。


鍛冶屋に着いた俺達はガッツさんに挨拶をして裏庭へと足を踏み入れた。


先ずは身体を動くようにする為に体操を始める。

それが終わると、今度は剣を使ってゆっくりと型を反復しながら徐々に身体の動きを整えていった。


充分に身体が出来上がった頃『暴風の盾』のメンバーが約束の時間より少し前にやって来た。


「早いな、俺達も準備するから少しだけ待っていてくれ」


ロッドさん達も軽い準備体操を始めた。


15分後、お互いに準備が整いいよいよ模擬戦の始まりだ。


やり方としては、取り敢えず一対一で軽く手合わせを行う。時間は5分間だ。


先ずは、俺とロッドさん。ソフィアとロジャーさんで行う。

武器は樫の樹の木剣だ。


「では、始め‼」


アリシアさんの掛け声で模擬戦が始まった。


初めはゆっくりと剣を合わせながら打ち込みをして行く。


カーン、カーンと樫の木の硬く心地の良い音が響く。


そして、3分を過ぎた辺りからは徐々に剣速を上げていく。


カンカン、カンカンと木剣のあたる音も鋭さを増していく。


そして、時間終了。


「いや~、参ったまいった。途中から防戦一方で着いて行くのがやっとだった」


「俺も情けないが同じだったよロッド。ソフィアちゃんの方が体力あるわ」


二人はぜ~ぜ~、はぁ~はぁ~と肩で息をしながら話をしていた。


その後は、アリシアとクレアさんと模擬戦をして。

そして、俺とソフィアが入れ替わり模擬戦をしてと、3セット2時間の訓練を行っていった。


「二人共体力ありすぎ。全然息が上がってねぇ」


「私達は基礎体力を上げないとまず着いていけないわね」


「でもこれで足りない部分はハッキリとしたよな」


「むぅ、もっと若ければ...」


クレアさんだけ可笑しな感想だったが、其々に課題が見つかって成果があったのではなかろうか。


「「ありがとうございました!」」


俺達が終了の挨拶をすると。


「良い稽古だったぞ。お茶を用意して置いたから飲んで行け」


ガッツさんが途中から見ていたようで、労をねぎらってお茶を用意してくれていたようだ。


俺達はその言葉にお礼を言いながら用意されていたお茶を飲み干した。


◇◇◇◇◇


俺達『暴風の盾』のメンバーは一風呂浴びて食後の後、再び集まって今日の反省会を始めた。


「いや~、思った以上に強かった」


「体力も桁違いだった」


「私達の時は軽く流している感じだったしね」


「あの二人にもう少しの間鍛えてもらえれば、一つ階段を昇れると思うの」


Bランクとして頑張って来たがAランクを目指すにはもっと精進しなければいけないという事を実感したメンバー達だった。

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