第26話 ハミングの街で
翌日......。
俺とソフィアは、ロッドさん達の案内で街の主に武器を扱う鍛冶屋を訪れていた。
ドワーフの下で修行を重ねた人族の人が経営しているお店で腕は確かだと教えて貰ったのだが、頑固な所はドワーフの親方の影響を強く受けていて少し気難しい性格らしい。
「おやじ~いるか~」
ロッドさんがかなりな大声で呼びかけたのだが、人が出て来る気配は感じられなかった。
店の奥の方で金属を叩く音がしているので居ることは確かなようだが、仕事に集中して聞こえていないのであろう。
「チョット待ってろ、俺が奥に行って呼んでくる」
そう言うと、ロッドさんは店の奥へと入って行った。
5分後...汗と煙で煤けた顔をタオルで拭きながら一人の男の人がロッドさんの後ろから歩いてきた。
「いや~、済まんすまん。聞こえんかった」
「エディオン、ソフィアこのおやじが紹介したかった鍛冶師のガッツだ」
「こんには、初めましてエディオンです」
「初めまして、ソフィアです」
「んっ、俺はガッツだ。奥でも聞いて来たが、二人共剣を見せてみろ」と、ガッツさんに言われた俺とソフィアは腰に帯剣している剣を鞘ごとガッツさんへと手渡した。すると、直ぐにガッツさんは剣を一本ずつ鞘から抜いて検分を始めた。
「まぁまぁ手入れはされているが、研ぎ直した方がいいな」
「どれくらい時間が掛かりますか」
「そうだな、二日というところか」
「分かりました、それでお願いします。
それと、それの代わりの予備の剣が欲しいのですがお願いできますか」
「んっ、そうだなぁ...お前さん達に合う剣は......ちょっと、待ってろ」
そう言うと、ガッツさんは店の奥へと入って行った。
店の奥からは何やらガサゴソと探し物をしているような音が聞こえているのだがその内ガラガラガシャ~ンと音が聞こえてきたので、俺達が慌てて駆け込もうとしたところ埃まみれになったガッツさんが奥から出て来た。
「おやじ、大丈夫だったのか」
「あ~、ちょと頭の上に何やかんやら落ちてきただけだ」
と然も何ともないように平然と言ってのける。
俺はその言葉を聞いて本当は人族ではなくてドワーフなんじゃないかと疑いをもってしまった。
「御主はこれを、嬢ちゃんの方はこっちだ」
そう言って手渡された剣は、俺が光沢のあるロングソードでソフィアが同じく光沢のあるショートソードだった。
「そいつは二つともミスリルと鋼の合金で拵えてある、二人共背が高いからその方が取り回しがしやすいだろう」
剣をガッツさんから受け取った俺達を見てロッドさんが声を掛けてきた。
「二人共、裏庭が有るからついてこい」
その言葉に従ってロッドさんの後を追いかけていく。
「ここなら、振り回しても大丈夫だ」
そこは裏庭というよりはかなり広いスペースの訓練場だった。
そして、俺達の後ろをパーティーメンバーとガッツさんも着いて来たようだ。
早速、俺とソフィアはある程度の距離を置いて新しい剣で剣技を試してみた。
最初はゆっくりと剣全体のバランスを、そして徐々にスピード上げて剣のしなり具合を確認していく。
隣では、ソフィアも俺と同じ様に確かめていた。
仕上げは身体強化も併用して型に添ってスピードをマックスにして5分程剣技を確認して終了した。
ソフィアも同時に終わらせた様だった。
すると直ぐにソフィアが自分のウエストポーチからタオルを二人分取り出して俺の方へ近寄り一つ手渡してくれた。
二人で汗を拭きとりながらロッドさん達の方に視線を向けると、ポカンとした表情で俺達二人の事を見ていた。
「あれ、皆さんどうしたんですか???」
「・・・・・・」
反応が無いので今度は少し大きめの声を出して...
「みなさ~ん、大丈夫ですか~」
ハッとした表情をしたのち平常に戻ったようだ。
「いや~、何かこの世の物とは思えない程の剣技と剣速だったよ。二人共まだ10代だよな」
「えぇ、二人共まだ18歳です」
と答えると、俺達二人以外の人生の先輩達がガ~ンという吹き出しが出そうな程の顔の表情をしていた。
その後は、ガッツさんに剣の整備料金と新しい剣の代金を払って鍛冶屋を後にした。
◇◇◇◇◇
夜になり宿に戻った俺達『暴風の盾』は、パーティーメンバーが俺の部屋に集まり話し合いをしていた。
「いや~、昼間のエディオンとソフィアの剣技と剣速には驚いたな」
「あの歳であそこまで昇華させているんだからよっぽど小さいうちから剣術を習ってきているんだろうな」
「ソフィアちゃんもエディオン君には及ばないまでもかなりの腕前よね」
「しかも二人共長身だし、ソフィアちゃんなんか女性からしたら垂涎の的よ」
「「「「はぁ~!」」」」
「俺達もBクラスとして恥じないようにもっと鍛錬を積まないといけないな」
「二人に模擬戦を頼んでみようか、どう思うロッド」
「まぁ、エディオンとソフィアの邪魔にならなければな」
「ガッツさんに頼んで裏庭を貸してもらえば、ギルドの連中に二人の実力がバレなくて済むんじゃない」
「それがいいと思うわ。二人はのんびりと旅を続けたいと言っていたしね」
この夜、エディオンとソフィアの知らぬところで『暴風の盾』のメンバーによって模擬戦をすることが決められたのであった。
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