第23話 護衛依頼を受けて

ゴブリン集落の殲滅を終えて三日、いよいよこの街を離れる時がきた。

そして、俺はソフィアとのんびり二人旅を楽しもうと思っていたのだが...


なぜか、再び冒険者ギルド裏手の厩舎に来ていた。


「いや~、すまんな二人共」


声の主は、ロッドさんだ。



昨日、街を離れるという事をギルドに報告に来たら、討伐報酬を受取りに来ていたロッドさん達に捕まってしまったのだった。

なんでも、このレノアの街から領を越えた隣街まで商人の荷馬車3台の護衛を引き受けたらしく、顔見知りで実力が有る俺達を誘いたかったらしい。


多分野営の時、楽が出来るからだろうと俺は推察しているのだが。

そこで、ソフィアにも訪ねたのだが嫌では無いという事で引き受けることとなった。


◇◇◇◇◇


早朝の街中を商人と待ち合わせをしている南門へと幌馬車を走らせる。


南門前の広場に到着すると、商人の荷馬車は既に待機していた。


「取り敢えず、顔合わせをするぞ」


ロッドさんの合図で全員が幌馬車から降りて商人のところへと向かう。


「やぁジェシカさんいつも早いな、出発準備は出来てるか」


「大丈夫よロッドいつでも出発出来るわ。あら、そちらの二人は初めてね」


「あぁ、この二人は丁度隣街まで行くと言うから護衛任務に加わって貰たんだ。結構強~ぞ」


ロッドさんが手招きをするので近くに行きジェシカさんに挨拶をする。


「初めまして今回護衛任務に加わらせて貰ったエディオンと言います。隣はソフィアです」


「ソフィアです」


「あたしは行商人をしているジェシカだよ、隣街までよろしくね」


顔合わせが終わると役割分担に従って位置に就き出発となった。


荷馬車3台と俺達が乗る幌馬車が南門を抜け街道を南下して行く。

そして隣街に行く途中にある三ヶ所の村に寄っては行商をしながら進むらしい。

思っていたよりはのんびりな旅となりそうだった。


順調に進めれば、馬車の移動が1日、村で2泊を三回繰り返して領を越えた隣街に到着する予定だ。全体の日程では9日間を予定している。


......。


各村での行商は何事もなく平穏に行うことができ移動も順調だった。

領内の騎士団による巡回が上手く機能している証拠だろう。

そして俺達は三ヶ所目の村を出発する朝を迎えた。


「じゃ、出発するぞ」


ロッドさんが威勢の良い声を出し荷馬車3台と俺達の乗る幌馬車が動き始めた。

そして移動は殊の外順調に進みその日の夕方には領境にある検問所へとたどり着くことが出来た。

更に、このまま先に進んでも良かったのだが治安の良いウエスフィールド領内の方で野営する方が良いという事で、俺達は検問所近くにある野営地へと馬車を移動させ一晩を過ごす事になった。



2時間後...。


俺達護衛も夕食と片付けを済ませ、明日からの行程を確認する為に焚火を囲んで話し合いをする事になった。


「エディオンとソフィアの二人は隣の領地に入るのは初めてだったな」


「はい、そうですね」


ロッドさんは何か問題が有りそうな憂鬱な表情を顔に浮かべている。


「何か問題があるんですか」


俺はロッドさんに問いかけてみた。


「実はな、隣のアーネスト領は非常に治安が悪いんだ。

ウエスフィールド領よりも圧倒的に盗賊の数が多い、それと獣や魔物の討伐も冒険者任せになっていて数が多いんだ」


「冒険者達は頑張っているんだけれどね、騎士団の方がさっぱりなのよ」


ロッドさんの言葉にアリシアさんが愚痴を足してくる。

俺は治める領主によってこうも違うのかと呆れてしまう。


「それと、隣町のハミングに着くまでは特に気を付けなくてはいけないわ。

まぁ、その先も余り変わらないのだけれども。

領の端側が特に危ないの盗賊と一部の騎士達が癒着しているという噂もあるから」


クレアさんが更に火に油を注いでくる。

俺とソフィアの事を気遣って話をしてくれているんだろう。


最後にロジャーさんが...


「いまの説明で分かると思うが、隣の領では盗賊は生きて捕まえてもいつの間にか釈放されているんだ。だから襲われたら躊躇せずに討伐してくれ、それが周りにいる人達の助けになるから。いいな、エディオンもソフィアも」


「「はい、分かりました」」


俺が思っているよりも更に酷い状態のようだ。

如何にウエスフィールド領内が平穏な環境なのかをロッドさん達の話から汲み取る事が出来た。


父様や騎士団皆の働きには感謝しかないな。



翌朝......。


ジェシカさん率いる荷馬車の3台と俺達護衛の幌馬車は検問所を抜けて、アーネスト領へと入った。

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