第22話 殲滅か撤退か

幌馬車を走らせること半日、目的の場所付近に到着したようだ。


「余り近付くと野営が出来ないからな、この辺で待機しようと思う」


そう言うと、リーダーのロッドさんが幌馬車を停止させた。

そこは3m程の大きな岩が何個か有りゴブリン集落に対して壁になっている所だった。


「ロジャー風向きはどうだ」


「ここは良い具合に風下になっている」


「そうか、じゃ夕飯にするか」


ロッドさんがそう言うと、女性陣が早速夕飯の準備に取り掛かる。

それを見ていたソフィアが二人の女性に声を掛けた。


「あの~、お手伝いは...」


「ソフィアさんは今日は良いわよ。でもやり方は見て覚えておいて損はないからね」


俺は騎士団の訓練で経験しているから問題は無いがソフィアに取っては初めての経験になる事だから丁度良かった。


30分程で夕飯の準備が整うと、みんなで一緒に食事を始めた。


そして、食事を終わらせ片付けが済んだ後、ロッドさんが全員を集めて...


「夜の見張りの順番なんだが、エディオンとソフィアは最初だ。

その後は俺とアリシア、ロジャーとクレアという順番でどうだ」


「私達は問題ないわよ。いつもよりも時間が短くて済むしね」


「じゃ、エディオンとソフィア頼んだぞ」


「「はい」」


陽が沈み、辺りが暗くなり静寂が訪れると焚火の中でぱちっぱち木が弾ける音が聞こえてくる。


「ソフィア寒くない?」


「はい、大丈夫です」


俺とソフィアは焚火の炎を見ながら探索魔法を拡げて索敵を行っていく。


「ゴブリン集落は結構な数がいるね」


「はい。明日はロッドさん達で大丈夫でしょうか」


「まぁ、魔法は使えると言ってあるからいざとなったら広範囲の極大魔法を放って殲滅してしまうしかないかな。アイネ様も魔物は減らして欲しいと言っていたからね」


「では、その魔法は私が放つことにしましょう。エディオン様の実力はまだ隠しておきたいですから」


「ありがとう、ソフィア」


交代の時間まで、俺とソフィアは会話をしながらも焚火の灯りに誘われて近づいてくる獣や魔物を魔法を使って仕留めておいた。



翌朝......。


野営した場所を片付けて、幌馬車は残して行く。

もちろん、馬達が襲われない様に獣と魔物が近づかない様に結界を施してだ。


30分程奥まった場所まで歩いて行くと、草原と森の際辺りにゴブリン集落は出来ていた。


岩陰に隠れて集落全体の様子を伺う。


「思った以上に数が居るな」


ロッドさんが顔を顰めながら小さな声で口にする。


「どうするロッド」


ロジャーさんがリーダーであるロッドさんに決断を迫る。

数的に一旦戻ってから冒険者達に招集を掛けて、再度ゴブリン集落に戻って来ても更にこの倍まで数が増えてしまいそうだからだ。


「ここで殲滅した方が良いのは分かっているんだが、エディオンとソフィアも居るしな」


俺達の事を気にしてくれているのは有り難いのだが、このままでは街の方まで被害及びそうな感じではある。


そこで俺はロッドさんに提案する事にした。


「俺達は大丈夫ですよ。そこで提案なんですがソフィアが範囲魔法を仕掛けるので討伐漏れを残りの俺達で倒すというのはどうでしょうか」


「それは有り難いが、魔力は大丈夫なのか」


「はい、大丈夫ですよ」


ソフィアが明るくロッドさんに向かって返事を返す。


「分かった、じゃエディオンの提案してくれたその作戦で行こう。

ロジャー、アリシア、クレアいいな」


「「「いいぜ(いいわよ)」」」


みんなの同意を得られたので作戦を実行に移す。

ソフィアが徐々に魔力を練り上げていく、それと共にゴブリン集落の上空に黒雲が範囲を指定された通りに覆いつくした。


「いきます!」


ソフィアの掛け声と共に黒雲から雷鳴が発生して稲光と共にゴブリン集落に向かって雷の矢が降り注いだ。


そして時間にして数十秒の事だったが、目の前には雷の矢に撃たれて黒焦げになったゴブリン達が横たわっていた。


焼け焦げた匂いが漂ってくる中。


「おい、残党が居ないか調べるぞ。息があったら止めをわすれずにな」


ロッドの声に全員が頷いてゴブリン集落に向かって駆け出した。



2時間後......。


幌馬車の所まで戻って来た俺達はお茶を休息を取っていた。


「いや~、ソフィアの魔方の威力にはビックリしたな」


ロッドさんの言葉にパーティーメンバーも首を大きく縦に振って同意している。


「済みません。魔力を込め過ぎてしまいました」


「大丈夫よソフィアさん、そのおかげで私達は楽が出来たんだから」


「そうそう、ゴブリン集落も殲滅出来たしね」


「そうだぞ、最初のあの数を見て倒し切るのは骨が折れると思っていたからな大助かりさ」


みんなからお褒めの言葉を頂いてハニカミながら笑顔を見せるソフィア。

今回は良いパーティーと行動を共にすることが出来て良かったと思う。


「ほんじゃ、レノアの街に帰るとするか」



ロッドさんが手綱を握り馬達に合図を送る。

静かに幌馬車が動き始め、レノアの街に向かって走り始めた。

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