第21話 レノアの街で

「ソフィア、昨日はありがとう。

幌馬車の乗客3人も軽い怪我で済んでいたから良かったよ」


「でも御者の人は残念でした」


そう乗客の怪我を中級ポーションを使って癒やした後、振り落とされてしまったであろう御者の人を探しに行ったのだが、既に帰らぬ人となっていた。


盗賊達の方はこの町に詰めている騎士団に引き渡して処理をお願いした。

そして殆どの騎士が顔見知りで直ぐに手続きの方も終わらせてくれたので助かった。

ただ、その手続きの際...隣にいるソフィアを見てニマニマされたのは心外である。


◇◇◇◇◇


そして、いま現在......。


俺とソフィアはこのレノアの街の冒険者ギルドへ向かっている処である。


「エディオン様、あそこでしょうか」


「そうみたいだね。

あっそうだ...昨日も言っておいたけれどギルドの中では呼び捨てでお願いするよ」


「はい、気を付けます」


ルージュの街では一度も依頼を受けてこなかったので、このレノアの街で依頼を受けてギルドの仕組みを理解して置こうと考えたのだ。

この先、他の領地又は国に行く事を考えると必要だと思ったからだ。


ソフィアと二人ギルドのウエスタンドアを押し開き建物の中へと足を踏み入れた。


「先ずは、依頼板を見に行こう」


「はい」


依頼票は綺麗に整理して掲示してあり、あちらこちら探す苦労をしなくて済んだ。


「定番の薬草採集から受けてみようか」


「そうですね」


薬草採集の依頼票を依頼板から剝がして受付へと向かう。


「この依頼を受けたいのですが」


受付嬢にそう声を掛けて、依頼票と二人のギルドカードを一緒に提出する。


「はい、薬草採集ですね。カードをお預かりします」


テキパキと事務処理をしていく受付嬢。

その手際の良さに感心していると処理が済んだようで依頼票と二人のギルドカードをカウンターの上に戻してきた。


「依頼表の受注処理が終わりました。

お二人とも初めてのようですから少し説明をしますね。

この薬草は街の東側で採集する事が出来ます。

採集のやり方と種類はこの冊子を読むと分かるようになっています。

期限は特に有りませんがなるべく新鮮な状態でギルドの方へと納品をするようにして下さい。以上です」


受付嬢の丁寧な説明を受けた後、俺とソフィアは街を出て薬草採集に向かったのだった。


「さて、採集場所に到着したけど如何しようかな」


「如何しようかなとは...???」


「植物鑑定を使えば直ぐに見つかると思うんだけれど学園の授業でやっていたように鑑定無しで探してみようかなと、冊子もある事だし」


「そうですね。宝探しのようで楽しそうです」


方針が決まったところで、二人して冊子を見ながら採集を始めた。



3時間後...。


「ふ~、ここまでにして置こうか」


「そうですね」


途中、お昼ご飯を食べながら休憩をしたが依頼の数量は確保出来たと思う。


そして、その日の内に薬草をギルドに納品して初めての依頼を無事に終わらせる事が出来た。



10日後...。


「お待たせしました。こちらが新しいギルドカードになります」


受付嬢からDの文字が刻印されたブロンズ色のカードを手渡された。


そう...俺とソフィアはこの10日間、ギルドのクラス上げを頑張っていたのだ。

見習い期間中に他所の街に移動してしまうと評価がリセットされると聞いたため正会員になる事を念頭に活動していたのだ。


「ありがとう(ございます)」


「お二人は直ぐに次の街に行かれるのですか?」


はて?少し含みのある問い掛けのようだが...


「もうしばらくは、このレノアの街に滞在する予定です」


「そうですか、良かったです。

一つギルドからの依頼があるのですが、宜しいでしょうか」


「えぇ、まぁその内容にはよりますが...」


そこから、依頼の内容について説明を受ける為に個室へと案内された。


「如何でしょか?」


「ソフィアはどう思う...」


「わたしは、問題ないと思います」


俺はソフィアが受けても良いと判断したので依頼を了承することにした。



二日後...。


俺とソフィアはギルドの裏手にある厩舎の方に来ていた。


「がははっ、俺はBランクパーティー『暴風の盾』のリダーのロッドで剣士だ」


「俺はロッドの弟でロジャー、同じく剣士だ」


「私はアリシア、魔法使いよ」


「私はクレア、治療師よ。でも弓も得意だからね」


先に挨拶をしてくれたロッドさん達はそれぞれが結婚しているらしい。


「俺はエディオンです。剣士ですが魔法も使えます」


「わたしはソフィアです。短剣がメインですが魔法も使えます」


俺とソフィアは後々説明するのも面倒なので二人とも魔法を使えることを知らせておく。


「おっ、そうか。二人とも魔法が使えるんだな。

今回の依頼の内容は聞いて知っていると思うが、ゴブリン集落の規模の確認だ。

50体以内なら殲滅、それ以上なら引き返して新たに討伐隊を組みなおすだ。

ただ、その場に応じて臨機応変には対応するがな」


「はい、了解しています」


「よし、じゃ出発しよう」


俺達6人はギルドが用意してくれた幌馬車に乗り込み目的地を目指した。

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