第20話 仕切り直し

アイネ様が俺の下へと寄こしてくれたソフィア(命名:俺)と街道を歩きながらこれからの如何するべきかの段取りなどを俺は考えていた。


それは、旅を始めたその日の内に一人旅が二人旅へとなってしまい、いくつかの問題が起きてしまっていたからだ。


先ずは、一人旅を想定して食糧を準備していたこと。

寝床となるテントや旅に必要な日用雑貨なども一人分しか用意していないことなどだ。

しかも、ソフィアは女性でもあるしその衣服や下着の替えなどは全く無いのが問題だった。


どうしよう......。


「ピンポ~ン。そんな迷える子羊のエディオン君にわたくし女神のアイネが神託を授けましょう‼」


唐突にアイネ様が話しかけてきた。


「アイネ様、真剣に悩んでいるんですから、ふざけていないでアイネ様の考えを教えて下さい」


「そうね。答えは、領都のルージュに転移で戻って必要な買い物をする...かしら」


「はぁ~!まぁ、分かってはいましたが...それしか方法が無いですよね」


折角南門を抜けて意気揚々と旅を始めたというのに、その日の内に舞い戻る事になるとは...トホホホホッ!


そして既に陽も傾いて来ていたのでソフィアに事情を説明すると南門の近くまで転移で急いで舞い戻りルージュの街中へと歩き出した。


◇◇◇◇◇


そして三日後......。


俺とソフィアは必要な物を買い揃えて、再び初日に移動した地点まで南門を出た処から転移で戻って来た。


さて、心機一転...旅を再開しよう‼



先ずは、最初の旅の目的地であるウエスフィールド領内の第2の都市へと街道を南下して行く。


「ところでソフィア、歩くのにはもう慣れたのかな?」


「はい。アイネ様が素体を用意されてから七日経ちましたから充分に馴染むことが出来ましたから大丈夫ですよ」


「まぁでも急ぐ旅では無いからのんびりと行こう」


「はい」


出会った初日は歩き方がぎこちなかったのだが、買い物をするのに街中を結構歩き回った事で体と心が馴染んだのだろう。


旅の行程は、天候にも恵まれて1日目、2日目と何事もなく平穏に過ぎて行った。


3日目...夕刻には領内の第2の都市レノアの街に辿り着けるであろう距離まで進んだ時の事だった。



街道を歩く俺達の後方から、土煙を上げながら物凄い勢いでこちらに向かって進んでくる馬車が目にとまった。


「あれ、御者が乗っていないよね」


「そうですね。如何したんでしょう」


更にはその後方に目を向けると、何頭かの馬に騎乗したみすぼらしい格好の男達が前を行く馬車を追い駆けて来ているのが確認できた。


「ソフィアは前の馬車の御者台に飛び乗って制御してくれる。俺は後方の集団を相手にするから」


「はい、畏まりました」


暴走中の馬車が俺達の横を通り過ぎるタイミングでソフィアが御者台へと飛び乗った。

無事に飛び乗った事を確認した俺は街道脇の一本の大木に風の刃を纏わせたロングソードで切り付け街道を封鎖するように木を横倒しにする。


そして、それによって後から迫ってくる男達の進路を塞いだのだった。


「何しやがる小僧!」


倒木にぶつかる寸前に何とか止まる事が出来た馬上の男が声を荒げて威嚇してくる。


「何じゃなくて...何故あの馬車を追い駆けているんですか、そんなみすぼらしい格好をしたあなた達が」


「・・・・・・」


自分らの格好を指摘されて答えに窮する男達。


「見るからに盗賊やってますという格好ですよね」


「それがどうした‼」


自分から進んで素直に白状してくれたようだ。


俺はアイテムボックスから一本の紐を取り出すと魔法名を口にした。


「捕縛」


すると紐は自ら意思を持つかのように瞬間移動をして馬上の男達を瞬時に縛り上げた。


「はっあぁぁぁ~」


馬上で間抜け顔をしている男達を無視して、俺は倒木をアイテムボックスへと収納してしまう。

それから男達の乗る馬達に俺は軽い威圧を掛けて自分に従うように仕向けるのだった。


そして、ソフィアの飛び乗った馬車の方を確認すると100m程先で止めることが出来た様だ。

無事に停止した馬車のその様子を確認した俺は盗賊達を馬上に乗せた馬達に合図を送り馬車の方へと歩いて行くのだった。


「ソフィア、ご苦労様。怪我は無い?」


「はい、大丈夫です」


「それよりも馬車の中で転倒して怪我をしている方が3人程いらっしゃるのですが」


「分かった。確認してこよう」


俺は幌馬車の中へと足を運んで怪我の様子を確認する事にした。

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