第17話 ウルフとの戦闘

50m先の草原の中に姿を現したのは、グレーウルフ2匹とブラックウルフ1匹のウルフ系の魔物だった。


「グレーウルフはまだしも、ブラックウルフは厄介な相手だな」

「先輩、ブラックウルフは俺に任せて貰えませんか」


「エディオン君、君一人で大丈夫なのかい?」

「はい、騎士団の訓練で対峙した事がありますから」


「分かった。ブラックウルフの方は、エディオン君に頼もう」


先輩方は8人でグレーウルフ2匹と俺は一人でブラックウルフと対峙する事がきまった。


すると、俺達の話し合いが終わるのを待っていたかのように、3匹のウルフがこちらに向かって駆け出してきた。


俺は、我先にと突っ込んで来た2匹のグレーウルフの頭上を軽く飛び越えると、身体強化しておいた足を使って一気に加速、後方からくるブラックウルフに肉薄する距離まで一瞬の内に間合いを詰めた。


そして、俺が一気に近付いたことで、一瞬ギョッ!とした表情を見せ、足を止めてしまったブラックウルフ。


“先手必勝‼”


俺は、その一瞬の隙を見逃さずにロングソードの剣先をウルフの喉元へ深々と突き刺し引き抜いた。


グフッ!


口から血を噴き、喉元からは血を大量に流しながら地面へと横倒しになるブラックウルフ。


暫くは、ピクピクと体を震わせていたが、その内にその動きも無くなった。


“討伐完了‼”


俺は、ブラックウルフの亡骸を見ながら胸の内で一言叫んでいた。



しかし、先輩方の方も気になっていた俺は、直ぐに後方で戦闘をしている先輩方8人の方へと振り返った。


すると先輩方は、グレーウルフ相手にまだ手古摺っているようで、戦闘は継続されていた。


そして俺が少し様子を見ておこうかと判断した時だった、ロングソードを持った剣士の二人の先輩が、グレーウルフの体当たりで吹き飛ばされてしまった。


それから、残った二人の剣士は2年生の先輩らしく、吹き飛ばされてしまった二人を見たことで動揺してしまったらしくその場から動けないでいた。


そして、残りの魔法職の4人では近接戦闘は勿論出来ないことなので、俺は2匹のグレーウルフに対して軽めの威圧を当てることによって意識を俺の方へと向けさせた。


案の定、俺の方へと踵を返して向かってくる2匹のグレーウルフ。


そこで、俺は......。


以前、女神様から教えて貰った方法(植物を使った拘束の魔法と土魔法の槍の同時使用)で、2匹のグレーウルフを同時に瞬殺した。


その様子を見て、啞然とした表情で立ち尽くしていた先輩方に声を掛ける。


「済みません。飛ばされた二人の容態を見に行って貰えますか」


俺に声を掛けられて、ハッ!と我に返った先輩方は二人の元に駆け寄って行った。


それを確認した俺は、学園から貸し出されているマジックバッグに3匹のウルフを回収すると、先輩方の方へと近付いていった。



そして、今は拠点としているテントへと戻ってきている。


吹き飛ばされてしまった先輩二人は、幸いにも性能の良い防具を身に着けていた事で、その防具の性能に守られて打撲で済んでいた。


それから、この拠点としているテントの場所での反省会も検討されたが、更に魔物が現れると対処しきれないので、撤収を選択して学園に帰った後に再度反省会をする事となった。


撤収作業を終えてから2時間余り、俺達は学園へと無事に帰って来た。


そして、学園内にある生徒用の会議室へと移動してきた俺達は、今回リーダーを務めた3年生の先輩が担当の先生を連れて来るのを待っていた。


ガラ..ガラ..ガラ..


と、引き扉が開けられると、3年生の先輩と担当のマーロン先生が部屋の中へと入って来た。


「やぁ、待たせたね。

君達の班は大変だったようだね。

だけど、怪我も無く全員無事に帰って来てくれて良かったよ。

早速だが、確認するから学園が貸し出したマジックバッグをこちらに持って来て見せてくれるかな」


そう言われた、俺とアダムはマジックバッグを先生の処へと持っていくと会議テーブルの上へと置いた。


「どれどれ、なるほど...なるほど。

3匹共、よく倒せたね。

こいつらと遭遇して、怪我もなく帰って来たんだから大したものだ。

後々の事は、僕たち教師の方で対策を考えるから、君達はハングリーラビットの方のレポートだけ出しておいてくれ」


そう言うと、担当のマーロン先生は会議室を出ていった。


先生が居なくなった後、1時間ほど反省会とレポートの作成をして、この日は解散となった。



◇◇◇◇◇


「今回は、エディオン君が居てくれて助かったよ」


「本当に、3匹のウルフを見たときは死を覚悟しましたから」


「でも、1年生であんなに強いなんて」


「まぁ、彼は領主様のご子息だから、小さい内から英才教育を受けているだろう」


「そう言えば、騎士団の訓練で討伐も経験済みのようでしたしね」


「俺達も1年生に負けないように、頑張らないとな」


◇◇◇◇◇


翌日......。

今回Aクラスの1年生から3年生が行った合同訓練の場所で起きたイレギュラーに対しての緊急会議が学園長を交えて行なわれる事となった。



「では、会議を始めよう」


学園長のライアンが会議の開始を宣言した。


Aクラスを担当した教師のマーロンが聞き取り調査の内容を報告していく。


「昨日の討伐訓練でAクラスが遭遇した件について報告します......」


それから、二時間ほど会議が行われた。

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