第18話 月日は流れ

数年後......。


俺は、あれから順調に学園生活を送り高等部へと進級して早3年、高等部での最後の討伐訓練に向かう事となった。


今回の討伐訓練に向かうにあたって、俺は先輩としてAクラスのリーダーとして後輩達に声を掛ける。


「みんな、準備は出来てるかな。

今回は森林エリアでの討伐訓練となっている。

訓練した通りに連携に気を付ければ大丈夫だから頑張ろう!」


「はい‼」


Aクラスの1年生~3年生の18名でルージュの街の北門を抜けて森林エリアへと馬を走らせる。


1時間ほど馬で移動すると目的地である森の入口へと到着した。


「さぁ、到着した。

ここ、森の入口を拠点とするから準備を始めようか」


俺の号令に従って各々が動き出す。

そして、1年生も4回目の訓練になるのでキビキビと作業を進めていく。


30分ほどで全ての準備が整い、大型の開放タイプのテントが出来上がるとそのテントの中でテーブルを囲んで地図と割当表を見ながら作戦会議を始めた。


今回ここでの纏め役は、副リーダーのアダムが行う。


「今回の討伐訓練は森の中ということで立木や倒木に邪魔されて視界が悪い、それから木の上にも注意を払う必要がある。

索敵と気配察知を十分に行いながら慎重に事にあたって欲しい。

必ずしも討伐する必要はないから対処出来ないと思ったらここへ帰って来るようにいいな」


「はい‼」


「じゃ、A班から始めよう。

訓練時間は90分だ。

エディオン、俺が先に行くからB班をよろしく頼むな」


「分かった。アダムも気を付けてな」


こうして、俺達3年生は卒業に向けての学園での最後の討伐訓練を始めるのだった。


◇◇◇◇◇


俺はアダム率いるAグループを見送り、テントの中で椅子に腰を下ろすと“フッ”と息を吐き、少しの間目を閉じてこれまでの学生生活を思い出していた。


学園生活の方では、これと言った問題は起きる事などはなく、至って普通の学生生活を過ごすことが出来た。

これは、周りのみんなが領主の息子ということを気にせずに付き合ってくれたお陰であろう。

実家の方では、上の二人の兄たちが王都の学園を無事に卒業して領地へと戻って来て父様の下で領地経営の勉強を始めている。

そして二人の姉たちは領都の学園卒業後、母様の指導の下厳しい花嫁修業を終えて領地内で其々結婚して新婚生活を送っている。


俺はというと...。

学園が休みの時は主に騎士団の訓練に参加したり、女神アイネ様からのお願いを受けて魔物の討伐をしたり、泉の聖霊ローラ様のお願いを受けたりしていた。


◇◇◇◇◇


「エディオン、Aグループの訓練1回目は無事に終わったぞ」


「お疲れ様アダム。さて、今度は俺達だな。ユーナ準備はいいかな」


「えぇ、大丈夫よ」


俺は、ユーナの返事を確認するとBグループの後輩たちを引き連れて、森の中へと訓練に向かった。


......。


この日の訓練は何事ともなく、午前、午後と森の中での2回の討伐訓練を無事に終える事が出来た。


そして俺達が領都に向けて帰路を進んでいた時の事だった。


先頭を任せていたサーニャが最後尾の俺の所まで戻って来た。


「エディオン、この先の街道沿いに魔物の反応がある」


「分かった!俺が先頭を行こう。サーニャはここを頼むよ」


「分かったわ。よろしくね」


中段に居るアダムとユーナにも、其々に声を掛けてから俺は先頭に立った。


そして街道を馬で駆ける事5分後、魔物に襲われている一団に遭遇した。


俺は後輩達の安全を確保する為、100mほど手前で馬の歩みを止める。

そして、クラスメイトのアダム、ユーナ、サーニャに声を掛けた。


「3人はここで後輩達の安全確保の為に指揮を頼む。

俺は魔物の討伐に行って来るから」


「「「気を付けて行って来いよ(行ってらっしゃい)」」」


クラスメイトの声を受けて、馬に鞭を入れる。


ビシッ‼


100mの距離を一気に駆けて最後尾のグレーウルフを馬上から槍で薙ぎ払う。


そこから、停止している馬車の所まで何頭かを更に討伐していった。


そして馬車の周りでグレーウルフと戦闘をしている護衛の冒険者達に声を掛ける。


「助太刀します!」


「済まない、助かる」


馬上から確認すると左右の草原には20頭程のグレーウルフがまだ残っていた。


そこで馬車の周辺は護衛の冒険者に任せて、俺は草原の方を討伐する事にした。


馬上で草原に居るグレーウルフに目線を向けて各個マーカーを点けて行く、そして準備が整った処で一気に草原の草でグレーウルフの動きを封じて土魔法の槍で瞬時にその身体を貫いて息の根を止めた。

そして俺はマーカーの消滅を確認すると、街道上に残る残りのグレーウルフを仕留めて回った。


10分後...。


冒険者の方も無事に討伐を終えた。


「いやぁ、助かった。数が半端なくて如何しようかと思っていたんだ」


「いえ、偶々討伐訓練の帰り道で通り掛かっただけですから」


「あ~、向こうに居るのがそうか。学園の生徒なのに強いんだな」


「こちらに呼び寄せても構いませんか」


「いいぞ。出来ればこの数だ後片付けを手伝ってくれるとありがたいんだが」


「分かりました」


それから合流してきたクラスメイトと後輩達で討伐したグレーウルフから魔石を抜き取り、俺が土魔法で開けた大きいサイズの穴に亡骸を放り込んで行く。

そして、火魔法で火葬すると土を被せて埋葬した。


冒険者達は、討伐証明と魔石を抜き取っていた。



戦闘を終えて後片付けを済ませ、冒険者達と別れてから1時間後...。

俺達は無事に学園へと戻って来た。

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