第15話 春と言えば進級

この春から中等部へ進級する俺は、母様に連れられて学園指定の制服を購入する為に、ルージュの街の中心部にある商業地区へとやって来た。


「母様、ここはいつ来ても賑やかですね」

「そうね、ここが賑やかだから、この街ひいては領内が潤っているのよ」


そうこう話をしている内に、俺と母様の乗った馬車が洋装店の前で停車した。

馬車を降りて、洋装店の中へと入っていく。


「ようこそお越しくださいました。エレン様、エディオン様」

「今日はよろしくお願いしますね」


「はい、畏まりました」


挨拶が済むと、母様と俺は店主に案内されて貴賓室へと向かう。


「エレン様はこちらにお掛け下さい。エディオン様は採寸を致しますのでこちらの台の上にお上がり下さい」


母様は、テーブルに運ばれて来た紅茶を飲みながら俺の採寸を眺めている。

俺は、店主の言う通りのポーズを取りながら採寸をして貰っていた。


「エレン様、エディオン様は直ぐに体が大きくなられると思いますので、見栄えが悪くならない程度に少し大きめに作られた方が宜しいかと思いますが」


「そうね。では、お任せするわ」


「はい、畏まりました」


こうして、1時間程掛けて細部にまで気を配りながら店主は採寸を終わらせた。


「本日は、お越し下さりありがとうございました。仮縫いの方が一週間ほどで済みますので、その時はよろしくお願いします」


「えぇ、大丈夫よ。では、よろしくお願いしますね」


母様の挨拶が終わると、馬車に乗り込み母様と俺は屋敷へと戻った。



四の月、領都の学園に通う俺は中等部へと進級した。


そして中等部に進級した事で、これからは実習に討伐訓練が含まれる事になる。

討伐訓練自体には男子生徒が主に参加するのだが、将来の女性騎士や女性冒険者を目指す女子生徒も何名かは参加する事となっている。


クラスメイトは初等部のままで相も変わらずだが、体格・体型などはやはり年齢に見合ったものへと成長していた。


俺も13歳になり、背も伸びて170㎝となっていた。

父様が190㎝近くあるので、まだまだ伸びしろは残っているだろう。

それに、母様も身長175㎝は有るし。


 

◇◇◇◇◇


そうそう......。


そう言えば、昨夜は久しぶりに女神様が寝ている思考の中に来られて、渡す物が有るからと天界へと連れて行かれた。(無論、思考世界のなかでの事だが)


そこで、女神様から俺に渡された物は、ウエストポーチで亜空間の収納庫と繋がっているいう規格外のポーチだった。

また、収納庫の方には女神様謹製の各種装備品も納められていた。


そして、収納庫に付けられている機能はそれだけではなく、俺の意志で数を増やしたり減らしたり、容量を増やしたり減らしたりする事も出来るという物だった。


どうしてこんなにも便利な機能の付いたポーチを俺に???と、女神様に問いかけたところ『討伐訓練が始まると、物を運ぶのが大変になるでしょう』と、返答が帰って来た。


なので、俺は素直に「ありがとうございます」と、女神様に感謝の気持ちを言葉にして返しておいた。


◇◇◇◇◇



中等部で通う事になる新しい教室で、クラスメイトとの顔合わせが済んだ翌日。


いよいよ、中等部の授業が始まる。


「ねぇ、エディオン君は討伐訓練が始まると参加するんでしょう」

「そうだね。普段も騎士団の訓練に混ざって、討伐に行くことが有るからね」


「そうなんだ。そこは、やっぱり領主様の息子なんだね」

「まぁ、領地や街を守るのが役目みたいなものだからね」


「そうか、それで私達庶民が安心して暮らせるんだね」


俺が隣の席のユーナさんと話をしていると、魔法科の先生が教室へと入って来た。


「さぁ、皆さん授業を始めますよ。今日は中等部に進級した皆さんに、これから始まる授業のカリキュラムについて説明をしていきます」


授業開始から45分の間、中等部3年間で行うであろう魔法科の授業カリキュラムを書いてあるプリントを見ながら、先生の説明と照らせ合わせを行った。



休み時間......。


「魔法科の授業は、実習が7割で理論が3割になるんだね」

「でも、自分の身を守る為には直ぐに対処出来ないと困るからね。実践は大事だよ」


「そうよ、ユーナ」

「そう言うサーニャこそ実習の時、手古摺っていたじゃない」


「まぁまぁ、ここで揉めないで。少しづつ慣れて行くしか無いんだから」


白熱しそうになった二人を何とか宥めた処で、次の授業が始まる合図の鐘がなった。

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