第13話 二人の兄は奮闘する

俺はアンソニー、ウエスフィールド家の長男でエディの兄でもある。

そして、弟のエディは俺の命の恩人でもある。

そのエディから送られて来た手紙には、つい先日は領内で行われた騎士団の討伐訓練に父さんと一緒に参加したと書いてあった。


そこで、何かあったようなのだが詳しい事は書かれていなかった。

まぁ、手紙でのやり取りだから直ぐに聞く事が出来ないのは残念だが。


領地内ではあるが、騎士団の討伐訓練に参加出来る程の優秀な弟を持っている俺なのだが、今は学園での生活で非常に悩んでいる事がある。それは、双子の弟のジェフリーも同様にだ。


高等部に進級して半年、夏季休暇の前の討伐訓練に参加しているのだが、思うような成果を上げる事が出来ないでいるからだ。


「ジェフリー、そっちはどうだった」

「いやぁ~、すばしっこくて捕えるのが大変だよ」


「ハングリーラビットは逃げ足が速くて、直ぐに巣穴に潜ってしまうからな」

「アンソニー兄さんの方はどうだったの」


「俺の方は、連携の為の練習が不足していて、ただのグレーウルフなのに一匹倒すのに1時間近く掛かってしまったよ」


「「はぁ~!」」


二人同時に、ため息をつく。


「ジェフリーもエディからの手紙を読んだんだろう」

「あぁ、読んだよ。俺も領地内の騎士団と一緒に、討伐訓練に参加して見たかったよ」


「学生同士だと、どうしても限界があるよな」

「そうそう。夏季休暇は家に帰るから、父さんに相談してみよう」


こうして俺とジェフリーは夏季休暇の目標を、騎士団の訓練に参加する事と設定したのだった。



半月後......。

俺とジェフリーは、夏季休暇を利用して領内の屋敷へと帰って来ていた。


そして、俺達二人は懸案だった騎士団の討伐訓練に参加出来る運びとなった。


「「父さん、許可して下さりありがとうございます」」


「今回、私は仕事で参加出来ないが、スコット団長の言う事をしっかりと聞いて訓練に励むように。いいな!」


「「はい、足手まといにならないように気を付けます」」


今回、俺達が向かうのは所は、父さんとエディが一緒に参加した時の場所の近くで、林が隣接している草原の方だった。


「スコット団長、ここではどんな魔物や動物が出てくるんですか?」


「アンソニー様、ジェフリー様。草原の方ではハングリーラビットもしくはキラーマウスになります。林の方では、ウルフ、ボア、ガゼル等になりますね」



そしてスコット団長と話をしている内に、訓練予定地に到着したようで......。


「全た~い止まれ! 設営を始め~!」


と、ロバート第一副団長から大声で号令が掛る。


今回俺達は、騎士団の訓練に正規の団員扱いとして参加しているので設営の作業も一緒になって行う事になっている。


なので、俺とジェフリーも号令に従って他の団員に混ざってテントの設営などを行っていった。


そして、約20分程で設営を終えると、今度は...。


「全員、正規の装備を身に纏い5分でこの場所に集合するように」


と、直ぐにアンジー第二副団長から次の指示が出される。


目まぐるしく指示が飛ぶ事に馴れていない俺とジェフリーは、団員達の足を引っ張らないように必死になって、その行動に喰らい付いていった。



◇◇◇◇◇



夕方近くになり訓練を終えて、屋敷へと帰って来た俺とジェフリーは、訓練の疲れを取る為に自分らの部屋に入ると、夕食の支度が出来るまでの時間を利用して、仮眠を取っていた。



その頃、執務室では......。


「スコット団長、上の二人はどうだった」

「まだ高等部に進級して間もないですからね、年齢的にも体力などは標準的だと思いますよ」


「そうか。剣の扱い等はどうだった」

「精進が必要でしょうね。エディオン様に比べると全然未熟です」


「エディの剣の扱いはどれ位のレベル何だ」

「騎士団の中で比較すると、ローバートと同等ですね」


「そんなにか」

「そうですよ。エディオン様は、基礎訓練を小さい頃から休まずにされていましたからね」


「そうだな。この夏季休暇中、上の二人には頑張って訓練に励んで貰わないとな」



夕食が終わった後、俺とジェフリーは父さんに執務室に来るようにと言われた。


「二人共、今日の訓練はどうだった。アンソニーから感想を聞こうか」


「はい、正直言って大変でした。学園での訓練が如何に生ぬるいかが分かりました」


「うむ。ジェフリーはどうだった」


「はい、体力的にも辛かったですし、剣の扱いなどは足元にも及ばないと感じました」


「そうか。では私が、スコット団長から聞いた評価を話そう、二人は共に体力的なものは年齢から言うと標準的で良いそうだ。ただ、剣の扱いについては精進が必要だと言っていた」


「俺も、そう思います」

「俺もです。ですから、騎士団の訓練場で剣の稽古を団長か副団長につけて貰えませんか」


「良いだろう。二人もやる気が有るようだから、私が頼んでおこう」


「「父さん、ありがとうございます」」


父さんに、感謝の気持ちを言葉して伝えると俺とジェフリーは執務室を退出した。

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