第12話 実力を隠蔽するようだ
イレギュラーな出来事は起こってしまったが、当初の予定通りハングリーラビットを間引きする為の討伐訓練は無事終了となった。
そして、領都ルージュの街へ帰える為の撤収作業が始まる。
そんな中、父様がスコット騎士団団長を呼んで何やらひそひそと話を始めた。
「スコット、ちょっといいかな」
「はい、何でしょう」
「エディの事なんだが。
ブラッディウルフのボスを一人で討伐した事を、外部に漏らさないようにして欲しい。今回の訓練討伐に参加している団員には、緘口令を強いて情報統制をお願い出来るかな」
「はい、畏まりました。エディオン様を守る為ですから、団員全員が納得の上で協力をしてくれるでしょう」
「頼んだぞ、スコット」
その間も撤収作業をしていた騎士団の団員達は、来た時と同じようにあっという間に作業を終わらせてしまい、用意してあった荷車にハングリーラビットとブラッディウルフの亡骸を積み込む作業に移っていた。
そして、全員の帰還準備が整ったところで俺達は街への帰途についた。
その日の、晩餐後......。
領主の執務室では、3人の男がグラスに入った酒を飲みながら歓談していた。
「スコット、今日はご苦労だったな」
「いやぁ~、あんなイレギュラーが起きるとは思いませんでしたよ」
「グレゴリー様、スコット団長、何があったんですかな?」
「今日はなエディを連れて、ハングリーラビットの間引きに行ったんだがな」
「はい、その事なら存じ上げていますが」
「そこで、さっき言ったようにイレギュラーが起きたんだよ」
「?????」
「ブラッディウルフが5頭も同時に現れたんだよ」
「それは、大変な事では無いですか。1頭に対して最低でも優秀な騎士団員が5人は必要な案件ですよ」
「そうなんだ。そうなんだがな、今回はエディがな一人でボスを倒してしまったんだ」
「そんな事有り得ないですよ、幾らエディオン様が優秀でも」
「チッチッチッ! それが本当なんだよ。魔法を使って一瞬で終わらせてしまったよ。そのお陰でブラッディウルフに苦戦していた俺達も討伐する事に成功したんだからな」
「グレゴリー様、それは、本当に...本当の事なんですね」
「本当の事だぞ、ここで噓を言ってどうする。エディが、俺の目の前でやってのけたんだからな」
しばらく、エディの事を酒の肴にして飲んでいた三人が急に真剣な表情で話し合いを始めた。
「そこでだ、今回の件が陛下の耳に入らないようにしたい」
「今日参加した団員達はエディオン様の事を大事に思っているから大丈夫だと思っているんだが、何処から情報が洩れるか分からないからな」
「ハングリーラビットは肉の供給の為に市中に流すが、ブラッディウルフの方は屋敷の中だけで処理しようと思っている」
「そこで、カインにはブラッディウルフの情報が表に出ないように使用人達をまとめて置いて欲しい。ボスの討伐はあくまで騎士団が行ったとしてだ。エディの名前が表に出ないようにしてくれ、いいな」
「はい、エディオン様のお名前が表に出てしまわないように、私が使用人達のほうをしっかりと教育しておきます」
◇◇◇◇◇
今日も女神様にアドバイスをして貰い助けられてしまった。
もう少し早く思考を巡らせる事が出来るようにならないと、瞬時の判断に遅れが出てしまうよな。
最低でも、三つは同時進行で思考を巡らせるようにならないとなぁ。
どう、訓練すれば良いのだろう???
効率の良い方法は...無いんだろうなぁ、地道に毎日頑張るしかないか。
◇◇◇◇◇
「さて、そろそろ...お開きにするか」
「そうだな」
「そうでございますね」
「二人共、頼んだぞ」
「了解だ。任せてくれ」
「はい、責任を持ってやらせていただきます」
『あらっ...そう言えば。私ったら、エディ君に今日これを渡し忘れたわね』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます