第7話 動き出す魔物達

歳月が過ぎるのは早いもので、10歳になった俺は初等部の4年生に進級した。


そして、4年生になったという事は、いよいよ学園の方で魔法の授業が正式に始まるという事だ。


今までは魔法を行使した際に、その痕跡を隠蔽しなければいけない状況が多かったのだが、これからはその制約を気にすることなく、俺は自由に魔法を行使することが出来るようになる。


制約が無くなる事で、これからは女神様からの頼まれ事も、周りの目を余り気にすることなく、安心して果す事が出来るようになるだろう。



魔法の授業が始まる前日の夜遅く、久しぶりに女神様が俺の処へと現れて声を掛けてきた。


「速水さん、いえエディ君の方が良いわね」

「女神様お久しぶりです。何か問題が起きましたか」


「そうでは無いのよ。明日から学園の方で魔法の授業が始まるでしょう」

「はい」


「それでね、一つだけ注意をして置こうと思ったの」

「え~と、それは何でしょうか」


「これまで、私のお願いで何回か魔物の討伐をして貰っていたでしょう」

「はい」


「それで、エディ君の能力値が年齢に見合わない状態になってしまっているの。

だから学園での授業で魔法を使用する際は、周りの子達に合わせて欲しいのよ」


「分かりました。明日からは制約無しで使用出来ると思ってわくわくしていたので、その事をすっかり忘れていました。女神様ありがとうございます」


「いいのよ。今までは制約が多かったからエディ君の気持は判るわ。でも、使用するときはくれぐれも気を付けて頂戴ね」


「はい、気を付けます!」


その後、少し話を交わすと女神様は天界へと帰って行った。



◇◇◇◇◇


「兄さん、学園の討伐訓練の度に思うんだけど」

「なんだ、ジェフリー」


「最近やたらと、出て来る魔物の数が増えてきていないか」

「あ~、それは俺も気付いている」


「まぁ、俺達のような学園生レベルで何とかなる魔物だから良いけれどさ」

「但し、訓練された騎士団や上級の冒険者が対応しなければ勝てないような魔物にこれからも遭遇しなければだけどな」


「領地の方は大丈夫なんだろうか」

「父さんも居るし、騎士団の方も厳しい訓練を科しているから大丈夫だろう、ドラゴン辺りが襲って来ない限り。仮に、ドラゴンが襲って来たりしたら、こちらはもうお手上げになるしな」


◇◇◇◇◇



翌朝......。

昨夜、女神様から受けた注意事項を胸に刻み込み、逸る気持ちを静めるようにしながら俺は学園へと向かった。


「おはよう、エディオン君」

「おはよう、ユーナさん」


そんな中、珍しく登校の途中で俺はクラスメイトのユーナさんに遭遇した。


「ねぇ、今日から魔法の授業が始まるね」

「そう、いよいよ今日からだね」


「よっ、お二人さん。おはよう!」


と、今度はサーニャさんが俺達に声を掛けてきた。


「何の話をしていたの...」

「今日から、魔法の授業が始まるね。と話し始めていたところよ」


「そうか、今日からか」

「え~と、サーニャさんは知らなかったの」


「そんなこと、ある訳がないじゃない」


そう返事を返して来たサーニャの眼は明らかに泳いでいた。

まぁ、ここで敢えて突っ込む事は止めておこう。


その後も、三人で談笑しながら学園の正門を抜けて教室までやった来た。



1時限目開始の鐘が鳴り、いよいよ魔法の授業が始まった。


魔法科の先生による、魔法を使用する際の注意点とそれに伴う危険性について詳しく説明がなされていく。


何事も最初が肝心だからね。


授業中、魔法を行使する時に自分が怪我をしたり、周りの人たちに怪我を負わせたりしては困るからだ。


ふと思う事があり、俺はクラスメイトを見渡して見た。


すると浮ついた感じなどは無く、皆が真剣に先生の話を聞いていた。


良き事かな良き事かな。



◇◇◇◇◇


俺も4年生に進級したことで、授業の方が夕方4時前まであるので屋敷に帰る時間も当然遅くなり夕方5時近くになっていた。


薄暗くなり始める帰り道を、俺は一人駆け足で屋敷へと向かう。

これは、日頃の訓練の一つだ。

学園での授業時間の関係で騎士団の訓練場へ行けなくなってしまったので、体力を付ける為に苦肉の策としてやっているのだ。


その代わり、学園の休みの日は騎士団の訓練場へ行っているのだが、その辺りの行動原理は、あまり子供らしくないかも知れない。


それに、女神様からは最近魔物の動きが活発になっていると言われているので、訓練を怠る事は出来ない。


「そう言えば、王都の学園に居る兄さん達は大丈夫なのだろうか。今度、手紙を書いてそこら辺のことを聞いてみる事にしよう」


◇◇◇◇◇



『いよいよ、エディ君にこれを渡す日が近付いて来たわね』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る