第6話 優しい家族

毒の種類を伝えた後、直ぐに父様が治療師の所まで出向いて俺の伝えた毒に効く解毒薬を貰って来た。勿論、処方する治療師も帯同してきている。


そして、毒の種類に合わせた順番で治療師がアンソニー兄さんへと投与をしていく。

すると、徐々にアンソニー兄さんの顔色は健康な状態へと回復していった。


それを見た俺達家族は全員、不安な表情から安堵の表情へと変化を遂げた。


「良かったわ、本当に......」


母様が一番心配していたのだろう。薄っすらと目に涙を浮かべていた。

それは、父様も他の皆も同様だった。


二日ほど、アンソニー兄さんの容態を経過観察して治療師から完治のお墨付きを貰ったので、俺達家族は領地へと帰る事になった。


「父さん、母さん、それに皆にも心配を掛けてしまい済まなかった。これからは気を付けるよ」


「そうだぞ兄さん、俺があれ程一人で突っ込むなと言ったのに、言う事を聞かないからだ」


「それは、本当に悪かったと思っているし、反省もしているよ」


「分かってくれればいいさ。解毒薬を見つけてくれたエディにも感謝しろよ」


「エディオンありがとう。助かったよ。今度帰るときのお土産は期待していてくれ」


「分かった。でも、これからは気をつけてね」



それぞれに別れの挨拶を済ませ、二人の兄を学園に残して俺達家族は領地へと帰って来た。



◇◇◇◇◇


「兄さん、今回はエディが居たから良かったけど、次は無いよ!」

「分かっているよ。でも、エディは俺達よりも随分と早く魔法が使えるようになっていたんだな」


「解析だけらしいけど、直ぐに色々と使えるようになるんじゃないか」

「母さんも、エディは頭が良いし魔力量も多いと言っていたしな。どうして王都の学園に入学しなかったんだか」


「エディにはエディの考えがあるんだろう」

「向こうでも首席らしいから、こっちでも首席を取れたんじゃないか」


「そうなると、俺達の尊厳に拘わるけどな」

「それもそうか」


◇◇◇◇◇



「あなた、お疲れ様でした」

「エレン、子供達はみんな寝てしまったのか」


「えぇ、ぐっすりと寝てますわ!」


「今回は、エディが居て本当に助かったな」

「本当に...」


「だが、いつの間に魔法が使えるようになっていたのか。学園に入学する頃には使えていたのかも知れないな」

「あの子は、小さいうちから書庫に入っては、一人で本を読んでいましたからね。あらっ...」


「どうしたんだ、エレン???」

「そう言えば、あの子。書庫の隅っこの暗い所で本を読んでいたのよ。もしかするとその頃から魔法を使っていたのかも」


「そうか。5歳位の頃だな。私が書庫に本を探しに行くと、エディは確かに良く隅っこの方に居たな」

「その頃には使っていたんでしょうね。そうなると、光の魔法も使えると言う事かしら」


「だろうな。まぁ、静かに見守ってやることにしよう」

「そうですわね。あの子の人生ですものね」



『速水さん、良い家族に恵まれたわね。私も何か考えておかなくちゃね』

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