第5話 急転直下

屋敷を後にした俺達家族の馬車は教会に向けて疾走していた。


「お父様、どうして教会に向かっているのですか?」

「エレーナ、それはだな教皇様から許可を得ている貴族だけが、教会が管理をしている転移部屋を使用する事が出来るからなんだよ」


「国王様じゃ無いんだね」

「エレーヌ、それはねこの王国では国と教会が対等の関係で結ばれているからなのよ。どちらかに力が偏ってしまったら争いが起きるかも知れないから其々で役割を決めて果たす事にしているのよ」


「それで、教会に向かっているんですか」

「そうよ」


教会に到着した俺達家族は、父様が礼拝堂の入口で受付を済ませると礼拝堂の中へと入った。


「済みません司祭様、急なお願いをしてしまい」

「いえいえ、大丈夫ですよ。さぁ、こちらへどうぞ」


司祭様の案内で、転移部屋へと移動した俺達家族は魔法陣の上に立つように司祭様から促された。


「では領主様、中央の台座にあるクリスタルに魔力を流して魔法陣を起動して下さい」


父様が、クリスタルに魔力を流して魔法陣を起動させる。

すると、一瞬の内に王都にある大聖堂の転移部屋へと俺達家族は転移された。


「ようこそ、王都の大聖堂へ。出口はこちらになりますので御案内致します」


転移部屋で待っていた案内役のシスターの言葉に従い後を着いていく。


「ありがとうございました」


父様はそう言うと、案内役のシスターに金貨の入った小袋を手渡した。


大聖堂の地下には貴族専用の出入口があり、その場所には送り迎え用の馬車も用意されていた。

そこで、俺達家族はそこから馬車に乗せてもらい、王都の学園まで送り届けて貰った。


学園に到着して正門の所で受付を済ませると、案内してくれると言う警備の衛兵に付き添われて学園内の医務室へと俺達家族はやって来た。


するとそこには、俺達家族の事を待っていたジェフリー兄さんが立っていた。


「ジェフリー兄様、アンソニー兄様の具合はどうなのですか?」と、エレーナ姉さんがジェフリー兄さんへと詰め寄る。


「落ち着けエレーナ。今すぐどうこうという事では無いから」と、ジェフリー兄さんがエレーナ姉さんを窘めた。


「それで、どうなんだ」


父様の問いかけにジェフリー兄さんが答える。


「怪我の方は既に完治しているんだけど、解毒をする事が出来ないんだ」


「それは、どうしてなの?」


今度は、母様が問いかけた。


「毒の種類を特定する事が出来きないようなんだ」


「それは、複数の毒が混ざっていると言う事かしら」


「そうかも知れないし、違うかもしれないし。学園専属の治療師でも判らないようなんだよ」


ただ、医務室の入口前で話をしていても、周りの人たちの迷惑になるので取り敢えずアンソニー兄さんが寝かされて居る病室に行く事となった。


「兄さん入るよ」とジェフリー兄さんが一声掛けてから、俺達家族は病室の中へと足を踏み入れた。


「顔色が優れないな」

「そうね、大丈夫なのかしら」


父様と母様が心配そうにアンソニー兄さんの様子を見ている。


そんな優しい両親の事を気に掛けながら、俺は女神様から教えて貰い鍛えられた魔法を使ってみることにした。


先ずは、俺の魔力を薄く延ばすようにしてアンソニー兄さんの身体全体を包み込んでいく。

その作業を終えると、今度はその魔力に載せて毒に特化した解析の魔法を掛けて行く、すると直ぐに毒の種類が俺の脳内へと送られて来た。


女神様曰く、解析するときは的を絞った方が早いと言っていたからだ。


俺が魔法を使える事が家族全員に知られてしまうのはもう少し後になってからにしたかったのだが、俺が毒の種類を教えないとアンソニー兄さんがここで死んでしまう可能性もあるので、解析が出来る事だけ伝えることにした。


「父様、母様。...少しいいですか」


「んっ...どうしたんだ、エディ???」


俺は両親を呼び寄せると、屋敷の書庫で見つけた本を読んで練習していたら解析の魔法が使えるようになったと噓をついて、毒の種類を伝えた。


「そうか。分かった、その解毒薬を用意してもらおう」

「ありがとうエディ」


他の三人は理由が判らずキョトンとしていたが、後から父様に説明してもらおう。

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