第4話 7歳児、普通はこんなもの

三日後、週初めの月の日に学園での授業がいよいよ始まった。


午前9時、1時限目の授業が始まる鐘が校内に響き渡る。


カラ~ン...コロ~ン...


「さぁ、皆さん。授業を始めますよ」と数学を担当する先生から声が上がる。


授業初日とあって、先生も生徒も緊張感でいっぱいだ。


黒板に走るチョークの音だけが教室の中に響いていた。



一週間後......。


「授業を始めますよ。皆さん、静かにして下さいね」と数学を担当する先生が声を大にして訴えていた。


先生はいつもの調子なのだが、生徒の方は学園と授業に慣れて来たせいか、最初の頃の7歳児の初々しさは無くなっていた。


まぁ、普通の7歳児なんてこんなものだろう。


先生に注意をされた事で、やっと静かになった教室内。


そして静かになった事を確認した先生は、黒板に向かって計算式を書き始めた。


その様子を見ていた俺は、とてもではないが子供を教える職業に就く事は無理だなと、この時思ってしまった。



俺達、初等部1年生の授業は1時限が45分で、午前中の3時限で終了となる。

2年生は、午後の4時限目まで。

3年生は、午後の5時限目まで。

4年生以降は魔法の授業も始まるので、午後の6時限目までの授業となっている。



一月後......。


午前中の授業が終わり帰る為に、机の上の教科書を鞄にしまっていると...

「エディオン君、真っすぐお家に帰っちゃうの」と、俺の隣の席に座っているユーナさんが声を掛けてきた。


「平日の午後は、騎士団の訓練場で剣の基礎練習をしなくちゃいけないんだよ」

「そうなんだ。子供なのに貴族のお家は大変なのね」


「全ての貴族の家が、そいう訳では無いんだけれどね」

「まぁ、エディオン君は領主様のところの子供だから仕方が無いのか」


「そういう事だね。でも、また気軽に声を掛けてくれると嬉しいな」

「うん。そうするね」


俺は、ユーナさんに挨拶をすると鞄を肩に掛けて教室を後にした。

そして、学園の正門横にある送迎用の馬車留めまで行き、執事長のカインが操縦する馬車に乗り込むと、騎士団の訓練場へと向かった。


そして、騎士団の訓練場に着いた俺がやることは、先ずは食堂で軽く昼食を済ませ少しの休息を取る事だ。

その後、午後の1時からは訓練場で2時間の基礎訓練を行い、汗ばんだ身体をシャワーで洗い流すと、屋敷に帰るというのが平日の日課となっていた。



◇◇◇◇◇



「ユーナ、エディオン君にやっと声を掛けられたのね」


幼馴染のサーニャが、悪戯っぽい顔の表情を浮かべながら私に声を掛けくる。


「もう、サーニャ揶揄わないでよ」


「でも残念だったわね、誘えなくて。エディオン君忙しそうだものね」

「領主様の子供だから、色々とやることがあるみたい」



◇◇◇◇◇



その夕方屋敷に戻ると、双子の姉さん達が玄関先で待っていた。


「どうしたの、こんな所で」

「あのね、アンソニー兄様が魔物の討伐訓練で怪我をしたらしくて、ジェフリー兄様から先程連絡が入ったの」

「怪我は大した事は無かったらしいんだけれど、毒を受けてしまっていたようで体調が安定しないそうなの」


「解毒薬は効かなかったの」

「王都の学園に保管してある解毒薬では駄目だったようなの」

「それでね、家族で来るようにとジェフリー兄様が言って来たの」


その晩、急遽王都の学園に行く事となり必要なもの以外は身に着けずに、俺達家族は屋敷を出た。

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