第2話 行動範囲は屋敷の中

つい先日5歳の誕生日を迎えて、屋敷の中を自由に歩き回れるようになった俺は書庫の中で本を読む事が日課となっていた。


「エディちゃん、何処なの...」


俺を探すエレン母様の声が聞こえてきた。


「ここだよ」


俺は、書庫の奥から母様に返事を返す。


「まぁ、こんな隅っこの暗い所で御本を読んでいると目が悪るくなるわよ」


そう言うと、母様は俺の手を掴むと引き立たせた。


「ごめんなさい。御本を読み始めたら夢中になっちゃって」


「それはいいのよ。ただ、明るい所で読んで欲しいかな」


「はい、気を付けます」と、俺は素直にエレン母様に謝っておいた。



実は、母様が書庫に入って来る前までは、光の魔法を使ってちゃんと本の文字が読める明るさの灯りはともしてはいたのだ。


ただこの世界では、魔法の使用方法は10歳にならないと教えて貰えないので、俺は家族に内緒で使用していた。


では、そもそも何故? この歳で、俺が魔法を扱えるのかと言うと。

それは、女神様が魔法の使用方法を、俺に直接指導してくれていたからだ。



そう...あれは、俺が3歳の誕生日を迎えた深夜0時の事だった。


ベッドの中で熟睡していた俺の脳内に唐突に女神様が語り掛けてきたのだ。


「速水さん、鋼さん」と...。


そして、脳内覚醒した俺は(表立って起きたわけではない)言葉を返した。


「あっ女神様、おはようございます」

「健やかに成長出来ているようですね」


「女神様にお会いするのは、俺がこの世界に来てからは初めての事ですね」

「そうね。でも本当はね、成人の儀の時に会う予定だったのよ」


「普通はそうなんですね。それなら、今日はどうされたんですか?」

「実はね。早い時期に魔法を覚えて貰おうと思ったからなの」


「それは、何か理由が有るんですね」

「そうなの。ここに来て、魔物達の動きがね活発になってきているの。それでね鋼さんには、この周辺の魔物の動きが活発になった時に、その対処をお願いしたいのよ」


「それは、いいんですが。俺はまだ3歳になったばかりですよ。大丈夫なんですか」

「大丈夫!そこは、私が何とかするから安心して」


それから、女神様によるスパルタ教育が昼夜問わず毎日行われる事となったのだ。


まぁ、幼児は寝ることが仕事なので、両親や兄弟姉妹にはバレる事なく魔法の勉強をする事が可能となっていたのだった。


所謂、睡眠学習と云われる類のものだろう。



さて、今現在の俺の状況はと言うと......。


母様に手を引かれて、屋敷の南側に整備されている母様専用の庭園にある東屋へと向かっている。


「エディちゃん、お外も気持ちが良いのだから庭に出て駆けまわっても良いのよ」

「はい、母様。でも、母様が手入れをしている草花などを駄目にしてしまっては申し訳ないので」


「あらぁ~、エディちゃんたら考えてくれているのね。ありがとう!」


母様と会話をしている内に東屋へと着いたようだ。

そして、東屋の中には先客が居り双子のエレーナ姉様とエレーヌ姉様が待っていた。


「「エディちゃん、いらっしゃい!」」


姉の二人が元気な明るい声で迎えてくれた。


「さぁ、お茶にしましょうか」


母様の声に、メイド長が紅茶とお茶請けを東屋のテーブルへと運んできた。

そして、俺達四人の前に綺麗に紅茶とクッキーを載せた皿を並べていく。


それから30分ほど、四人でお茶会を楽しんだ。


そして、そのあと屋敷の母屋へと戻ったのだが、晩餐までにはまだまだ時間が空いていたのでそれぞれの部屋で過ごす事となった。



そうだ、一応ここで家族の紹介もしておこう。


俺の産まれた家は、ウエスフィールド伯爵家。

俺を転生させてくれた、死と再生を司る女神様はアイネ様である。


父様:グレゴリー

母様:エレン

長男:アンソニー(双子の兄)

次男:ジェフリー(双子の弟)

三男:エディオン(通称:エディ)

長女:エレーナ(双子の姉)

次女:エレーヌ(双子の妹)

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