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私が好きになった人…神崎パパ。


もう10年も前になる…風の便りで息子…神崎護が刑期を終えた。と聞いた。

懐かしさが溢れ出す。


あの頃は何かにすがりたかったんだと思う。


お金にすがった…不安だったから神崎パパにもすがった。


でももし今、神崎パパが現れたら…そしたら神崎パパの子供を産みたい。


私と神崎パパの子供…凄く欲しいと思う。


…それはやはり、神崎パパを好きな事なのかな?


でも神崎パパはいない。


他に思い当たる男…トオル…?


久しぶりにステラマリスに遊びに行く事にした。


トオルに会いに行く。


ステラマリスの戸を開けた途端、外へジャズの音楽がこぼれる。


店内…真っ先に目に入るのは、ミクママの笑顔。

この店一番の売りだと思う。


[あら、恵美ちゃん。お久しぶりね]

私の事を[ちゃん]付けして呼ぶのはミクママだけ。


お客様やスタッフは[様]を付ける。

キャサやトオルは呼び捨てし、他は[さん]を付けて呼ぶ。


[もう28才よ]

私は言った。


[あらあら、私なんてまだ25才よ]

ミクママは私の肩を叩いて冗談を言い、笑った。


人を幸せにさせる笑顔だった。


相変わらずのミクママの優しい笑顔…前にキャサから、[ミクは男なのよ]と教えられ驚いた。


どこから見てもミクママは女性にしか見えなかった。

男だと言われて、なんとなく小さな男のカケラが見える。


でもそれが女以上に女らしく見えた。


ユダも相変わらずユダだった。


トオル…オーバーなアクションでうやうやしくお辞儀をする。

[これはこれは女王様。お待ちしておりました]

芝居がかった態度と、相変わらずの自信満々の笑顔。

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