校外学習
〜 雄太サイド〜
俺たち、一年生は中間テスト最終日の放課後に美術館と博物館を回るというイベントが行われた。会場までは各々で行き、集合する。昼食に杏奈を誘い出すことには見事成功。いざ、会場に向かおうと彼女の教室へ行ってみると彼女はもう先にクラスメイトと行ってしまったらしい。やはり、彼女は俺になんて気はないのかな。
俺は、彼女に一目惚れした。彼女は隣のクラスのクラス委員だ。そのため俺たちの担任によく届け物をしてくる。初めて届け物をしにきた時、何かが蠢いた。
" あの子、かわいい "
とっさに、そう思ってしまった。
彼女が教室を出る時、ふと目があった気がした。彼女は可愛いらしい声で
「ホームルーム中失礼しましたっ。」
と言って、にっこり笑って出て行った。
あれから、俺は彼女に惹かれるようになった。彼女はクラス委員らしくしっかりしているが、たまにおっちょこちょいぶりを発揮したり、笑顔が何よりも可愛いらしい。気づいたら彼女の方も見てしまっていて。もう、ベタ惚れと言ってもいいくらいだ。
ある日、彼女と同じクラスの美奈が俺に
「杏那ちゃんのこと好きでしょ。」
と、にやにやしながら聞いてきたのだ。俺は今まで好きな人などできたことがなっかったため、そんな好きなのかと聞かれたところで好きかどうかなんてわからなかった。俺は無言で俯いてしまった。
「ねぇ?見てればわかるよ。たまにうちのクラスに来るけど、杏那ちゃんでしょ?なんで話しかけないの?」
「いや、別に杏那じゃねーし。」
「体育の時だってずっと杏那ちゃんのこと見てるじゃん。この前だって講演会ずっと一緒だったじゃん。」
「っっっっ! そうだよ、杏那が好きだよっ! だから何?俺には無理とかいうのか?そーだよその通りだよ。別にいいだろ、諦めるし。余計なことして関係崩したくねーんだよ。」
「へー、やっぱ好きなんじゃん。いいと思う、がんばれ。うまくいくよ、例えば見てるだけじゃなくて困ってる時とか手伝ってあげたりー? 笑笑」
「アドバイスありがとーございまーす。でも、そういうの結構でーす。諦めるんで。」
「あっそ、いいんじゃない?自分がそう思うなら。じゃね。」
え。そこは、頑張れとかそういうらしいこと言ったりするんじゃないの?
って、自分で突き放しといてなんだよ。
俺はこの日、初めて " 好き "という気持ちに気がついた。
校外学習はこの会話の2ヶ月前。
校外学習の帰り、美奈と皆の彼氏の凛太朗にカフェに行こうと誘われた。凛太朗とは幼なじみであり、同じクラスの親友だ。無論、この後特に用事もないし断るはずがない。俺たちは近くのカフェに入った。すると、美奈が
「杏那にいつ告るの?」
と言ってきた。無論俺は告るなどそういうのは無理。
「は?告んねーよ。」
「えー、杏那ちゃん狙ってる男子たくさんいるんだから早く告んなきゃ取られちゃうぞー 笑笑」
おい、マジかよ。告ってフラれてこの関係がダメになるのか、他の男子に取られてダメになるのどっちがいいかなんて俺には選べねーよ。
「てか、本当にあんなちゃんのこと好きなの?本当に好きならちゃんと気持ち伝えなよ。」
「そんなの無理だよ。俺はこの関係ですごい幸せだ。フラれたら何もかもが終わりだよ。」
「杏那ちゃんはそんな子じゃない。もし、雄太くんをフったとしても必ず今まで通り接してくれる。」
「おいおい、二人で随分盛り上がってんじゃねーかよ。」
ミルクティーを頼みに行った凛太朗が席に戻ってきた。
「雄太くん、杏那ちゃんに告んないんだって。本当に好きなのかな。」
「え、こいつまじで杏那のこと大好きだよ 笑笑」
「は?何言ってんだよ。杏那はただの友達だよ。」
「多分、杏那もお前のこと好きだよ。」
「は?え、んなわけあるかいな」
「ガチ、二人とも見てればわかるって」
「え、杏那ちゃんと雄太くんって両思い?」
「な?雄太、明日デートに誘ったんだろ?そん時告れ。」
「え、なになに。聞いてないよー、デートって。もうカップルじゃん。」
明日、告る?もし、失敗したらそこで終わりだ。
「わかった。機会があれば告る。」
「機会って、それ自分でつくんだろ」
よし、俺は明日のデートにかける。いい雰囲気にして告る。
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