第72話

 ジャイガルドとアレクサンダーに、フィーナの妹レイリアを医者に診せるため商業国メイビスまで行くことを伝えると二人とも、神妙そうな表情をした。

 やはり、教えるのは不味かっただろうか?

 こんなところで、俺の計画が潰えるのは困る……。


「なるほどー……それなら、俺様も手伝うぜ!」

「こ、このアレクサンダーもアルスの旦那のために力を貸しますぜ!」

「本当にいいのか?」

「もちろんだ! フィーナは俺様の子分だ! つまりフィーナの妹レイリアも俺の子分ってことだ! 子分を助けるのは親分の仕事だ!」

「ぼ、ぼくだって! 仲間の妹が――こ、困っていたら力くらい貸します!」


 二人の目を見る限りフィーナの妹レイリアのことを、心から案じているのが伝わってくる。

 そのまっすぐな視線に俺は――。


「わかった――。くれぐれも話は他に洩れないようにしてくれ」

「任せておけ!」

「アルスの旦那も、大船に乗ったつもりでいてくだせえ!」

「お、おう……」


 何か反応が軽いんだよな……。

 本当に大丈夫か?

 

「それじゃ俺様は親父が持っている倉庫の鍵をとってくらあ!」

「ぼ、ぼくは――防寒着の予備がないか確認してくるよ」


 二人は、それぞれの目的のために村へ通じる道を戻っていった。


「やれやれ――。他人のために、何の見返りもなく動けるなんて信じられないな……」


 俺は二人の背中を見ながら呟くと「そう? でも、アルスくんが動いたから皆が力を貸してくれたと思うよ?」とフィーナが語りかけてきた。


「……」


 しまった……。

 フィーナが居たことをすっかり忘れていた。

 つい地で話をしていた。


「とりあえず……だ。俺達は俺達の仕事をしよう。フィーナついてきてくれ」

「う、うん――」


 俺はフィーナを連れて森の中に入っていく。

 そして、森の中から1分ほどの木の幹に傷がついているのを確認したあと、土を掘り返していく。

 すると土の中からは、30個近くの木箱が姿を現した。

 全て魔王城から回収してきたものだ。

 もちろん中身は、魔王城から持ち出してきたものが入っている。


「フィーナ、これをアイテムボックスに仕舞ってくれ」

「――え? で、でも……これって……」

「狼などの皮とか牙だ。時折、倒して回収したのを集めていたんだ」

「そうなの?」

「ああ! これも医者を呼ぶ足しにはなると思っていたんだ」

「アルスくん……そんなに前から……」


 フィーナが瞳に涙を溜めながら「ありがとう、ありがとう」と何度もお礼を言ってくる。

 

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