第15話
そこで、ようやく俺は気がつく。
どうやら、彼女は自分に自信がないのだなと。
それはいけない。
教える人間が、自分に自信がないと教え方に迷いが生まれるというものだ。
ここは、彼女自身に自信を持ってもらうことが重要だろう。
なら、俺がすることは彼女を肯定することだけだ!
まぁ、見た目が5歳の男が、どこまで彼女を元気付けることが出来るか分からないが…・・・。
「アリサ先生! お世辞ではありません!」
俺は、腹に力を入れて彼女の瞳をまっすぐに見て語りかける。
「――え? ……アルス様?」
「アルス様ではありません! 今は、ただの男! アルスと呼び捨てにしてください!」
そう、今は! アリサ先生の生徒にしか過ぎないのだ。
アルス様と言われて貴族と平民の差に気を取られて魔法の教え方に手加減を加えられたら大変になるのは俺なのだ。
ここは、はっきりとアルスと言ってもらったほうがいい。
「――で、でも……アルス様は……」
まだ頑なに俺の名前を様つけしてくる。
やれやれ、生徒と先生の関係なのだから、きちんと弁えてほしいものだ。
まぁ、その辺を教えるのも年長者の役目だ。
「ハッキリと言わせていただきます!」
「――は、はい!」
彼女は、俺の言葉に頬を真っ赤に染めて瞳を潤ませている。
おそらく、年下の俺に叱咤激励されたことで、内心とても悔しく思っているのだろう。
だが、俺は彼女をきちんとフォローする用意がある!
伊達に人生経験が豊富なわけではないのだ。
「アリサ先生は、とても魅力的な! 可愛らしい女性です! そう! とっても可愛らしいです! 僕が成人していたら即、お嫁にもらいたいくらい可愛いです!」
「……ほ、本当に……? 私、平民だし……ハーフエルフだよ? 亜人の血を半分引いているのよ? それでも本当に?」
俺は彼女が、少しだけ自信を持ったことを嬉しく感じていた。
それにしても亜人であるエルフの血が半分混じっていたから、彼女の耳は尖っていたのか……。
「アリサ先生、ハーフエルフは迫害の対象なのですか?」
俺の言葉に彼女は小さく頷いてきた。
そして、先ほどまでの嬉しそうな表情から一転、表情を曇らせてしまう。
おそらくだが、俺がハーフエルフは、迫害対象と知らなかったから、励ましの声を掛けてくれたと勘違いしたのだろう。
そんなことはない。
教えを乞う上で、指導者に自信を持ってもらうことは重要なことだ。
「そうですか……。ですが! 僕は、たとえアリサ先生がハーフエルフであったとしても! あなたの可愛らしさが、損なわれるとは思っていません! むしろハーフエルフだから、いいんじゃないですか! 人間とエルフの両種族の特徴を持つなんて、すごいことです! 誇るべきことです! すばらしいことです! 人類の至宝と言って過言ではありません!」
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