第11話
「アルス、お前には魔法の才能がある。しかも、かなり強い魔法師になれる魔力がある」
「魔法の才能?」
緊張感を含んだ声色で話かけてきた父親の言葉の意味が俺には分からない。
いきなり強い魔法師になれると言われても魔法については今日、初めて聞いたばかりなのだ。
「ああ、しかもこれだけ強い魔法の才能というのは、一万人に一人いるかどうかの才能なのだ」
なるほど……。
一万人に一人いるかどうかの才能か……。
それって……。
――かなり大事なんじゃないんですか!?
――と、思っていた時期が俺にもありました。
魔法指南書は魔力の有無を確認するためだけの物だった。
それと、魔法指南書という名前はついているが、構成は幾何学的な文様が描かれた青銅の板を重ねただけの物で、本とはなんぞや? と! 突っ込みを入れるレベルで……。
まぁ、そもそも
鉄すら見たことないのに、パルプを作る技術があるわけがない。
紙というのは、技術的には難しいものではないが、文明の進化過程というのはいくつか段階を隔てることで前に進む。
青銅文化ということは、パピルスか羊皮紙かあたりを使っているのだろう。
そういえば、父親の執務室というか書斎には入ったことがない。
一度、執務室に入れてもらって何に文字を書き記しているのか確認するのも良いかも知れないな。
そんな父親だが、俺に魔法の才能があることが判明したため、その報告に行くため現在は領地を出ている。
一万人に一人の才能と言われる魔法の才能。
それは、国の防衛、領地運営を含めて、とても有用で有益。
魔法を教える人間を国や領地の偉い人が派遣するほど力を入れているのだ。
ちなみに、俺の家――つまりシューバッハ騎士爵の寄り親は、フレベルト王国アルセス辺境伯のため、父親であるアドリアンは、アルセス辺境伯領の首都に当たる都市アルセイドに向かった。
そして……。
父親が出かけてから、すでに3週間近くが経っている。
母親の話だと、アルセス辺境伯領の首都アルセイドは、馬で片道一週間の距離らしいので、もうとっくに戻ってきていてもいいのだが……。
まぁ、もしかしたら辺境に魔法師が誕生するなんて思っていなくて嘘だと思われた可能性もありそうだ。
なんと言ってもシューバッハ騎士爵が治めている町というか村というか農村というか山村は、人口が200人しかいない。
そんな山村で、一万人に一人の割合でしか見つけることが出来ない魔法師が、誕生したとしたら、俺だったら! まずは疑う。
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