第2話
「……ふぁあああ」
俺は寝ぼけたまま、欠伸をする。
子供の身体ということもあって、とても眠い。
「アルス、顔を洗ってきなさい」
「はーい」
俺は、母親の言葉を聞きながら台所に向かう。
台所は、土の上に板が並べられているだけで、お世辞にも衛生面的にいいとは言えない。
「そういえば……」
俺は台所に置かれている水の入った大きめの瓶の蓋を開ける。
そして、中を覗き込むと色々と不純物が浮かんでいた。
「……」
こ、これは……。
現代日本人の感覚から言って、ちょっと使えないかな……。
昨日の夜、前世の知識と意識が蘇るまでは、まったく気にしていなかったが、明らかに不衛生な水だというのが分かる。
「はぁ……これは、俺が水を汲んでくるほうがいいな……」
正直、この水を使って料理をされると、日本人的感覚から言わせてもらえば、絶対に! お腹を壊す自信がある。
そうと決まれば、まずは母親と交渉だ。
「お母さん!」
俺は、台所から自分の部屋というか両親が寝起きしている部屋に戻る。
じつのところ、騎士爵の位を持つ家と言っても、家の広さはたいしたことはない。
日本の家屋で表すなら3DKくらいだろう。
一部屋が書斎になっていて、そこはハルスの村を統治するための仕事部屋となっている。
あとは、家族が寛ぐ部屋で居間であり、最後の一部屋が両親と俺が寝起きしている部屋なのだ。
つまり、何が言いたいのかと言うと平屋建ての木造建築で3DKなのに外見は、農家の家より小さく見えてしまうということだ。
まぁ、統治を任されているだけで俸給は、実質のところフレベルト王国から払われているわけで――、その俸給額も貴族の末端である騎士爵であるからして、お察しの部類だと思う。
教えてもらったことはないけど、俺が前世の記憶を取り戻す前には、よく母親であるライラが、「今月も赤字だわ」と呟いていたのを何度も聞いたことがあった。
あの頃は気がつかなかったが、今思えば、財政的にはかなりきついのかもしれない。
問題は、俺は、この家から殆ど出たことがないから村の様子が良く分からないというところだが……。
それでも、水汲みは母親がしていることは、引き継いだ記憶から知っている。
女性が水汲みにいけるのだ。
そんなに遠い場所ではないだろう。
「アルス、どうしたの?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます