文学少女シリーズ1巻より「国会議事堂」「初恋」「苺大福」

音奏

第1話

 “国会議事堂”の前でぼくは、偶然にも“初恋”の相手と七年ぶりに出逢ったのだった。


「久しぶり、七年ぶり……かな」

「……誰だっけ? 私のこと知ってる人?」

「ちょっと待って。小学生の時の同級生の顔を忘れるか?」

「んーーーー、名前なに? 教えてくれれば思い出すかも」

「カケルだよ、カ・ケ・ル」

「あ〜〜〜〜、カケル君ね。小学生の時のクラスメイト」

「だから、そういってるだろ。最初から七年ぶりだって」

「そんな経ってちゃわかんないよ。顔だってかなり変わってるしさ。背もすごい伸びてる」

「そうかな? 背はあの頃から三十センチ伸びたかも」

「ほらね。やっぱ普通は分からないよ。よく私のこと分かったよね」

「そりゃ、まあね」


 流石に好きな人を見間違えることはないとは言えない。


「私ってそんなに変わってないかな〜。大人っぽくなったつもりなんだけどな」

「変わったよ。それでも分かる人にはわかるもんさ」

「そんなもん?」

「そんなもん、そんなもん」

「そっか。じゃあ、またね」

「ちょっと待って」

「なに? 久しぶりに会ったね。で、話し終わりじゃないの」

「えっと……そ、そこにさ、わ、和菓子が食べる店あるんだよね」

「それで?」

「い、“苺大福”でも食べながら、ゆっくり話さない?」

「え〜、私を誘ってるの? ふふふ」

「ダメ……かな?」

「ん〜、別にいいよ。今は彼氏いないし」

 今は? それってOKってことなのか! 付き合えるかもしれない! よっしゃああああああ!


「おじゃまします〜」

「いらっしゃい。おや、あんたは見覚えある顔だね」

「どうもおばさん」

「やっぱり、昔よくきてた雫ちゃんだよね。大きくなったね」

「知ってるんだ」

「うん、よくきてたから」

「彼氏かい?」

「やだっ、ただのクラスメイトですよ」

 ただのクラスメイト……。

「でも二人っきりで入るなんて脈ありかい? うふふふ」

 口に手を当てて笑うなよ。

「私、彼氏いるので、本当は見られるとまずいんですけど、おごってくれるっていうから」

 おごるだけ? おごるなんて一言もいってないぞ。 ってか彼氏いるんかい!

「そうかい、そうかい。雫ちゃんにも春が来たんだね」

「春ではなく、冬ですけどね」

「冬?」

「もう冷え切ってるってことです。別れたいんですけど、なかなか言い出せなくって」

「ふ〜ん、そうなんだ大変ね、青春は」

「ええ」

「まぁ、苺大福食べてってよ! これは私からのおごりよ!」

「いいんですか?」


 一人だけ話しに入っていけない自分が情けなく感じる。


「いいのよ。新しい彼氏さんがここにいるじゃない! ねっ!」

 急に新しい彼氏と振られて困惑するものの「えっ、あっ、はい」と答えれた。

「えっ、カケル君が新しい彼氏になるの?」

「いいんじゃない、優しそうで」

「……そうね、これからよろしくね。新しい彼氏さん」


 えっえっ、まじで?


「はい! よろしくお願いします!」


 雫ちゃんは冷え切っていた彼氏と別れ、雨宮カケルと恋人同士になった。


 これから先もずっと一緒なことを切に願ってーー。

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文学少女シリーズ1巻より「国会議事堂」「初恋」「苺大福」 音奏 @hazuki04

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