第1話

「マカゴル・モーラの弟子なる人物と接触及び勧誘。それを今回君にやってもらいたい。」


魔術結社、黒鬼門の一室に3人はいた。男のうち、1人はごく普通の体型で、もう1人はとても大きく岩を印象付けられる。3人目は2人とは正反対の存在の様な少女で第三者から見ると2人が今にも少女を襲おうとしている絵図に見えるかもしれない。


「あの、そんな大役を任されるのは大変名誉な事だとは思うのですが、彼の弟子という話が本当だとしたら私では力が及ばないと思うのですが…」


噂が本当だとしたら恐らく自分では何もできない


「そんな獣じゃないんだからいきなり攻撃なんかしないよ。」


「更に言うと、我々よりも先に接触をはかった所もあるらしい。勿論、怪我無しで帰ってきたと。」


大男の情報が確かだとしたら危険ではなさそうだ、しかし…


「じゃあ、もう何処かの組織に入ったんじゃないですか?」


「…現時点で接触をはかった組織は3つ。しかし…これを接触したと言うべきなのか。」


「?」


「『』。接触した全員がそう答えるんだよ。」


「それは…全員が洗脳の魔術に掛かった、ということですか」


少女がそう言うと細身の男は笑い出した。


「ごめん、君を笑った訳じゃなくて。思い出してね」


「…何ですか」


「んんっ…。話には続きがあってね。留守でした、と答えた瞬間、洗脳が解けたんだ。」


それを挑発行為と取ってもう一度洗脳魔術の対策、準備をして向かったが、また洗脳にかかり、とうとう組織の中でも精神系の魔術を得意とする魔術師が向かったがその人物も「留守でした」と答える。


「結社が一つ潰れかけてるまでのピンチらしい。」


「ミイラ取りが、と言うやつか。」


「面白くない?結社の一員にと勧誘したらかつてないほどのピンチって」


悪趣味だな、と思いながらも確かに少し面白いと思い、顔が笑ってないか咄嗟に確認する。


「ま、こんな訳で死ぬ危険は無いよ。魔術を食らって帰る可能性も大きいけど。」


「嫌ですよ!洗脳を受けたということは無防備な状態になるって事でしょ?大体、洗脳されるということはその時に情報を抜かれているかもしれないんですよ!諦めましょうよ。」


「大丈夫!直接魔術を受けた者を見たけどそんな痕跡は無かったから。安心して行ってみよう、ね!」


「…それに、もしかしたらこれは彼なりの試験のつもりかもしれん。」


「『これぐらいの魔術を破れない魔術師とは組みたくない』、ということですか、確かに洗脳だけなら何とかなりますけど…。」


「安心しろ。今回は我々2人も常に見ている。何かあれば必ず対応する。」


ここまで執心しているのに自分では行かないのは絶対安全とは思ってないからだろう。


こういう自分勝手な所が彼等が魔術師たる証拠であり、魔術師には必要なものなのだろう。


憂鬱な気分になりながら、魔術師桑名 馬琴は任務を開始した。

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