第33話【メイド服の行方1】

「あ、そういえば一姫」


母さんの有難い話から少し経ち、皆でテレビを見ているとふと学校での事を思い出した。


「はい、どうかしましたか?」


「今日学校で誠司から聞いたんだけどさ。

昨日、一姫の友達が一姫を心配して一姫の両親の事とか会社のことを色々調べたらしいんだ」


「そ、そうですか」


俺の話を聞き一姫が俯きながらそう呟く。

そりゃそうだろう。

一姫のこれ迄の境遇は出来れば知られたくないものだ。

それを知った学校の友達が自分にどんな視線を向けてくるのか、それが不安でたまらないのだろう。


「ついに知られちゃったのね。

まぁ、ずっと隠し通すのは無理な事だから仕方ないといえば仕方ないんだけど一姫ちゃん、また学校に行きずらくなっちゃったわね......。

あ、そうだ!

一姫ちゃん、転校しちゃいましょう!

私の家の近くにも高校はあるしね!」


これは名案!と言わんばかりに母さんが言う。


「えっ!」


そして、その母さんの発言にいち早く反応したのは一姫では無く俺だった。

一姫がこの家を出て行くと一番困るのは俺だからだ。

理由は二つ。

家事をまた自分でやらなければならなくなること、もう一つは俺の癒しであるメイドが居なくなってしまうことだ。

二つ目は特に重要だ。

岡さんに70万円のメイド服だって注文している。

恐らくもう作業に取り掛かっているだろうし、岡さんの気合いの入れようからして取り消しなんて到底出来ない。


「何であんたの方が驚いた声上げてんのよ。

もしかして、あんたまだ私に隠し事してるんじゃいでしょうね?」


「そ、そんなことないですよ?

もう一姫の美味しいご飯を食べられなくなるのが困るって思っただけですよ?」


「あんたキョドり過ぎ。

さっさと白状しなさい」


そう言って母さんはバンバンと机を叩く。


「えっとですね...(中略)と言うことがありまして」


俺は観念して隠してた一姫にメイド服を着てもらう事などを話した。


「馬鹿じゃないの!

あんたがメイド好きだってことは知ってたけど弱ってる女の子につけ込んでメイド服着させようだなんて!」


「面目次第もございません」


母さんの怒りに俺はただ一姫に対して土下座することしか出来なかった。


「あの、私は全然構いませんよ。

家の中だけですし、家事をするのに当たっての仕事着と言いますか、汚れてもいい服と考えればむしろ便利かもしれません。

岡さん、メイド服を作ってくれる方が着やすさや汚れの落ちやすさなんかも考えて作ってくれるとおっしゃってましたし」


一姫ナイス!


「まぁ、そういう考えもあるかも知れないわね・・・。

でも、こいつにエッチな目で見られるわよ」


「男の子なので多少は仕方ないかと・・・。

それに私、男の人の変な視線には慣れているので全然気にしません」


一姫は美人だから普段からいやらしい視線を向けているのだろう。

もしかしたら俺も無意識にそんな目で見てるのかもな、気をつけないと。

──────────────────

ばんわ〜。

前の後書きに書かせてもらった作品も今日出したので良かったら覗きに来てください!

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