第18話【私とあの人1】
「はぁ〜。
ねぇ、雪奈〜。
私どうすれば良いの?」
私、小野寺佳織はあの人達の「ここには当分来ない」「乗り換え」などのショックな発言を耳にし、泣きながら逃げ出してしまいました。そしてそのまま店長に許可を貰いアルバイトを早退してしまっいました。私を心配してあの人が追って来たけど店長が気を利かせて途中で止めてくれたので涙でぐしゃぐしゃになった不細工な顔を見られずにすんで少しだけホットしました。
そして今、私は妹の部屋にあるベッドにうつ伏せで寝転がり足をバタバタさせながら勉強机に向い勉強している二つ年下の妹、小野寺雪奈に声をかけていた。
「はぁ、はこっちのセリフだよ。
やっと何か話す気になったの?」
「うん」
「まず、私にごめんなさいは?
帰ってきてからずっとこの世の終わりみたいな顔して私が「どうしたの?」って聞いても無視を決め込んだ癖して私の部屋に入り浸ってることに対しての謝罪は?」
「誠に不甲斐ないお姉ちゃんで申し訳ありません」
私はベッドの上で土下座する。
「よろしい。
で、どうしたの?」
「前にバイト先のお客さんでとってもお世話になってる人がいるって言ったの覚えてる?」
「うん。
お姉ちゃんが人見知りを克服するための荒療治でメイド喫茶のアルバイトを始めたのはいいけど失敗しまくってもうダメかもって思ってた時にそのお客さんが熱心にアドバイスしてくれて、それがあったから今はアルバイトが楽しいって言ってたやつだよね?」
雪奈が言った通り私がメイド喫茶のアルバイトを始めたのは人見知りで何時でもビクビクしている大っ嫌いな自分を変えるためだった。
でも、アルバイトを始めたからといってすぐにそれが改善されるはずも無く、はじめの頃はお皿を洗っている時に落として割ってしまったことも何回もあったし料理を運んでも躓いてお客様に料理をぶちまけてしまったこともある。それに加え、注文を聞きに行ってもオドオドしすぎて上手く注文が聞けないともう散々な結果だった。そんな日が続き私自身のメンタルがボロボロに砕けお店にも迷惑がかかるしもう辞めた方がいいのではないかと真剣に考えていた時にあの人に出会ったのだ。
その日、私はあの人にお水を運んで行ったのだが躓いて転んでしまいお水をぶちまけてしまった。
私は慌てて謝りながらお水を拭いていると「手伝うよ」と一緒に拭くのを手伝ってくれた。その場はそれで終わったのだがもう一度しっかりとお礼を言わないといけないと思った私はあの人が店を出る時にもう一度お礼を言いに行った。
するとあの人は「え?ああ、全然気にしなくていいよ。他のお客さんは知らないけど俺の前ではいくらでも失敗してくれてかまわないから。失敗は誰でもするんだ。そこからどうするかが大切なんだろ。有名な漫画やアニメの名言ぱくったような胡散臭い言葉だけど実際その通りだと俺は思ってる。店長に少し聞いたけど君は自分を変えようと頑張ってるんだろ?正直凄いと思うよ。最後まで諦めずに頑張って。俺でよければ何時でも練習台になるから」と手を振って帰っていった。
私はその彼の言葉に救われたのだ。
もう諦めよう。私なんてどうせ変われっこないんだ。そう思っていた私をもう一度頑張ろうと思わせてくれた。
その日のアルバイトの後、店長にこの事を伝えたところ大変喜んでくれてあの人の接客は全て私に回してくれると約束してくれた。
その後も私は何度も失敗を繰り返したがあの人が笑って許してくれ時にはアドバイスをしてくれた。
そして数ヶ月が過ぎた頃、私は失敗することもほとんど無くなりアルバイトの時だけは自分に自信をもって取り組むことができるようになった。
それもこれもあの人のおかげ。
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