第11話【謝るぐらいならお礼を言いなさいな】
「わかりました。
70万です。
これ以上は無理ですまじで」
岡さんとの激闘の末プラス20万をして合計70万が予算になった。
「さすが透ちゃん!
カッコイイ!!
愛してる!!」
適当な事言ってんな。
「じゃあ、一姫ちゃんのスリーサイズとかを測ってくるね〜。
一姫ちゃん行こ」
「はい」
「透ちゃん大人しく待ってるんだよ。
後でコソッと一姫ちゃんのスリーサイズ教えてあげるから」
「ダメです!
それはホントに怒りますよ!」
一姫は真っ赤な顔になって岡さんに抗議する。
「冗談だよ〜。
一姫ちゃん真っ赤になって〜。
可愛いなぁ〜。
じゃあ、バイバイキ〜ン」
そうして椎名は岡さんに背中を押されて部屋から出ていった。
「やっぱり、見た目といい、言動といい子供にしか見えん。
十年後、岡さんがどんな見た目になってるのかが楽しみな半面、なんか不安でしょうがない」
岡さんの場合、十年後も見た目が全く変わっていないことがもしかしたらあるかもしれないという期待ともし見た目が老けたとして性格があのままだったらカオスなことになるという不安が一斉に押し寄せてきた。
「仕事でもするか」
俺はポケットから携帯を取り出しメモ帳のアプリを開く。
清書するはパソコンでするが下書きやアイデアのメモは携帯ですることは多い。
普通に生活していても今のような待ち時間は結構あるのでその時間を有効活用しているのだ。
◇◆◇◆
「お待たせー!!!
って、透ちゃん仕事中?」
バーン!と音を立てて扉を開け放ち岡さんと椎名が部屋に入ってくる。
扉ぐらい普通に開けてくれませんかね?
集中してたこともあってビクッてしてしまったじゃないですか。
この人に言っても意味が無いのは分かってるから言わないけどさ。
「暇つぶしでやってただけですから大丈夫ですよ。
今日もう帰って大丈夫ですか?
あ、会計ってどうするんですか?
ハッキリとした金額が出てないのに前払いは出来ませんし、後払いですか?」
「どっちでもいいよ。
初めての人とかは頭金ありの後払いでお願いしてるけど常連さんとかには好きな支払いのしかたしてもらってるんだ。
前払いでも後払いでも分割払いでも好きなのでいいよ。
あ、前払いの時はちゃんと余った分は返すから心配無用だよ」
「それじゃあ、受け取りのときでいいですか?
こんなにするとは思ってなかったのでそこまでお金もってきてないんですよ」
「おっけー。
とりあえず、私に一任してくれた一着以外のデザイン画が出来たらメールで送るね」
「はい、よろしくお願いします」
「じゃあね。
二人ともバイバイ〜」
「それではまた」
「し、失礼しました!」
そうして俺達は店を出て帰路についた。
「あの、透くん」
「ん?
どうした?」
「ありがとう」
いきなりどうしたんだ?
「何?実は前からメイド服着たかったとか?」
「違います〜。
あのね、さっき岡さんにいろいろしてもらっていた時に私の境遇とか透くんが私にしてくれている事とかを全部じゃないけど話したんだ。
それを岡さんは静かに最後まで聞いてくれてその後、アドバイスとかをくれたんだけど。
そこで改めて透くんが私にしてくれていることの大きさを感じてね。
本当に申し訳ない気持ちになったんだ。
それで、何故かそんな気持ちになっているのを察知した岡さんに「謝るぐらいならお礼を言いなさいな。その方が人っていうのはやって良かったって思えるものよ」って言ってくれたんだ。
だから、本当にありがとう。
感謝してます」
「へぇ〜。
あの人ってそんないいことを言える人だったんだな。
はじめて知ったよ」
「ふふっ。
透くんも照れることがあるんだね」
「そりゃ人間ですからね。
それより今日の晩御飯は何を作ってくれるんだい?
スーパー寄って帰るからちゃんと考えておけよ」
「ん〜、透くんは何が食べたい?」
「トムヤムクン」
「また珍しい料理名が出てきたね〜。
いいよ、今夜はトムヤムクンを作るよ」
作れるんかい!
適当に言っただけで食べたことないから楽しみだ。
そんな感じに比較的和やかな雰囲気のまま家まで帰ったのだった。
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