第10話【予算】
「あの。
二人は前から知り合いなんですか?」
「うん、そうだよ。
メイド好き仲間なんだ!
あと、私が彼の小説のファンなんだ!
そのお渡し会の時に初めてあってね!
って、あ!
言ったらダメなんだっけ?!」
「いや、一姫にはもう言ってあるからいいですよ。
でも、他の人には気をつけてくださいね」
「う〜。
ごめんね〜」
「透くんって何で小説のこと秘密にしてるの?」
「言ってもいいことなんて一つもないだろ?
いじられるだけならまだいいよ、ヤンキーとかに金持ってるって思われたらカツアゲされるに決まってる」
「それ漫画やドラマの見すぎじゃない?
少なくとも私達が通ってる高校ってまあまあ偏差値高いからいくらヤンキーでもそんなバレたら取り返しのつかないようなことするとは思えないんだけど」
「ここに後先考えずに飛び出して雨の日なのに公園のベンチで傘もささずに雨に打たれてるやつはいるけどな」
「それは言わない約束でしょ!」
いや、そんな約束はしてない!
事情が事情なだけに少し不謹慎なことを言ったと反省はしているけどな。
「まあ、取り敢えず内緒にしてるから絶対に他の人にも言うなよ」
「学校で知ってる人っていないの?
ほら、いつも話している仲のいい友達がいるじゃない」
「言ってないよ。
だから学校で知ってるのは一姫だけだ。
やったね、女子が好きな特別ってやつだぞ」
「今全世界の女性に喧嘩売った?」
「一応ごめんと謝っておこう。
だが、全員が全員とは言わないが女子が特別って言葉が好きだってのは事実だろ?
この前テレビで言ってたし」
「ま、まぁ。
その傾向はあるかなぁ?」
「はははっ!
二人はとっても仲良しなんだね!」
「いえ、そんな事ないと思いますよ?」
「はい、昨日初めて連絡事項以外で話しました」
「え!?
そうなの!?
その割には息があってるよね!?」
「まあ、話しやすくはありますね。
俺の秘密を知ってる数少ない人ですし」
「はい、私も恥ずかしい姿を見せてしまってるので今更気を使ったり愛嬌を振りまいたりしないので話しやすいですね」
「恥ずかしい姿!
なになに!?
もうそこまで進んでるの!?」
「え!?
いいえ、違います!」
「おい!
紛らわしいこと言うなよ!」
「ご、ごめん〜」
「あの、昨日色々ありまして一姫が大泣きしまして、恥ずかしい姿ってのはその事です!」
「そ、そうですよ!
う、うぅ。
今回は仕方ないけど大泣きしたこと言って欲しくなかった〜」
「自業自得だ!」
「はははっ!
ごめんごめん。
からかい過ぎたよ」
俺達の会話を聞いて岡さんはバンバンと机を叩きながら大笑いする。
「もう、勘弁してくださいよ」
「いいじゃん!
いいじゃん!!
仲良きことは美しきかなだよ!」
ハイハイそうですね〜。
もう面倒なので本題を振ろう。
「岡さん、そろそろ本題に入りましょう」
「そうだね。
えっと、今回の依頼はメイド服を四着作って欲しいってことでOK?」
本題になったこともあって俺達三人は椅子にしっかりと座り直す。
「はい、二着は今、岡さんが着ているようなオーソドックスなやつで一着がメイド喫茶であるような可愛らしい感じのやつでお願いします」
「あと一着はどうするの?」
「岡さんのオススメで」
「えっと、シルエットから色まで全部私が決めていいってこと?」
「そうです。
メイドが大好きでその上、元トップデザイナーである岡さんに是非とも頼みたいんです」
「んー。
でもいいの?
もし、私が作ったのを君が気に入らなくても返品は受け付けないよ?」
「はい、わかってます」
「よし!
わかったよ!
私が最高のメイド服を作ってあげる!」
「はい、お願いします。
予算なんですが50万程でどうにかなりませんか?」
「ご、50万!」
一姫が驚いた声を上げる。
まあ、メイド服四着に50万かけるとは思わんよな普通。
「んー。
予算に合わせるのは大丈夫なんだけど、わかってるとは思うんだけどやっぱり50万なら50万の100万なら100万のクオリティって物があるからね。
まあ、その予算の中で最高の物を作るのが私の仕事なんだけどさ。
これはこの店の店主としてでは無くて君の友達としての言葉なんだけど。
メイド好きとしてメイド服買う時は予算を決めずに「予算は気にするな。だが、最高のものを作れ!」って言って欲しいなぁ〜」
無茶言ってくれますねこの人。
「あのねー。
僕は高校生ですよ?
50万だって結構頑張って絞ってるんですよ?
いくら小説書いて収入を得てるからって元トップデザイナーで今は店の店主をしている岡さんとは比べるのもおこがましいレベルの収入しかないんですから」
「そんなこと言わずにお願い!
多分私が自由にメイド服を作れる機会なんてもうないと思うの!
最高のものを作りたいの!」
顔の前で手を合わせお願いポーズをとる。
「それは岡さんの欲じゃないですか!
自分のお金で勝手に作ってください!」
「自分のとなるとやる気が出ないのー!」
「そんなものは知りません!」
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