第12話【現実は厳しい】

「ご主人様。

ご主人様起きてください、学校に遅刻してしまいます。」


「ん〜。

おはよう、一姫。」


俺は、制服姿の一姫に声をかけられ目を覚ました。

あらためて考えるとすごいシュチュエーションだよな。美少女に朝起こして貰ってるんだぜ?こんなこと世の男たちにバレてしまったら皆血の涙を流しながら悔しがることだろう。


「はい、おはようございます。

朝食の支度はもう出来ていますので着替えてキッチンにお越しください。」


「ああ、ありがとう。

すぐ行くよ」


「それでは失礼します。」


そう言って一姫は綺麗に一礼して部屋から出ていった。


あの岡さんの所にメイド服の注文をしに行ってから一日が過ぎ今日は月曜日、俺と一姫が一緒に住むことになってから初めて学校に向かう日だ。変なボロを出して一姫と一緒に住んでいることをバレないように気を引き締めなければいけない。

そして、一姫のメイドとしての仕事も今日からとなる。メイド服は注文したてで無いので当分は制服か私服になるが仕事と口調はしっかりとしてもらうことにした。


え?何で一日飛んでんだって?そりゃ特に何も無かったからに決まってるだろ?一姫の必要な物を買いに行ったけど特にヤンキーに絡まれるというイベントも無く無事に終わりその後、俺は部屋で仕事に勤しんでいただけだ。


「それにしても一姫のメイドはハマってるよなぁ。」


見た目は制服だからメイド感は大分薄れているが姿勢、行動、言葉遣いの全てが洗礼されており自分で頼んだくせに驚きを隠せないでいた。


「一姫を待たせてるしさっさと準備してリビング行くか。」


俺は寝起きの重い体を無理やり起こし着替え始める。

ラブコメ漫画とかだったら着替え中にヒロインが入ってきて「キャー!」とか叫ばれたりするんだろうが現実ではそんな展開が起こることも無く普通に着替え終え、リビングに入った。


「ご主人様、どうぞお座りください。」


一姫がそう言って俺がいつも座っている椅子を引き、座るように促す。


「ありがとう。

あれ?

俺のだけか?

一姫はもう食べたのか?」


テーブルに一人前の朝食しか用意されていないのを確認し一姫に質問する。


「はい、先に頂きました。

私が調べた資料によるとメイドはご主人様と一緒に食事を取らないとの事でしたのでこれからもご主人様の先か後に頂かせていただきます。」


んー。

どうしたものか。

確かにメイドが好きで出来るだけ頑張ってもらうようにお願いしたのは俺だが、ここまでされると何故か寂しい気持ちになってしまう。

このままではこの家が居心地の悪い物になってしまう気がしてならん。


「一姫、ちょっとそこ座ってくれ。」


「はい、失礼します。」


綺麗にお辞儀をし音を立てずに座る。

え?スッゲ!

今一切音立たなかったぞ?

今度教えて貰おう。


「俺が言ったことなのに申し訳ないんだがやっぱり口調は普段通りにして行動も少し丁寧にするぐらいにしてくれないか?

それとご飯も一緒に食べよう」


「えっと、本当にいいの?

昨日まではあんなにメイドについて熱弁してきたのに」


「ああ、一姫に実際にやってもらってわかった。

これ結構寂しいのな」


「そうですね。

私もちょっと思いました。

同じ家に住んでいるのに全くの他人みないな感じがして。

まあ、実際に私達は全くの他人なんですけどね。

本当にメイドを雇っているような人達はそれが当たり前だと思っているから何も感じないんだと思いますが私達庶民には合わないですね」


「って、ことである程度普通にしてくれ。

たがメイド服は出来たらちゃんと着てくれよ」


「そこは譲れないんですね」


「ああ、絶対に譲らん。

もし、俺がメイド服なんかただの服だろ?とか言い出したら殴って目を覚まさせてくれ。まともな俺じゃないから」


「はいはい、そうですか。

普通はそっちの方がまともなんですけどね」


ご最もで。

だが俺は普通の一般人とはひと味もふた味も違うからな!悪い意味だけど、、、。


「あと、一姫は久しぶりの学校だから質問攻めにあうと思うが大丈夫か?

わかってると思うが絶対に俺の事は言うなよ。」


「ええ、大丈夫ですよ。

されそうな質問の答えはある程度考えてるし私は結構アドリブが得意なので。

透くんの事も絶対に言わないよ。

私だって困るのは一緒なんだから。」


一姫の事が周囲に知られてしまうと保護施設に入るか嫌いな親戚の所に住まさせるかの二択になるからな。


「それもそうだな。

ごちそう様。」


「お粗末さまでした。

食器下げとくから行く準備していて。」


「そのぐらいやるよ。」


「いいの、私はこの家のメイドなんだから。

あと、これ終わったら先に学校に向かうね。

一緒に登校するのはお互いのためにならないし。」


「ああ、わかった。」


「弁当もここに置いておくからちゃんと持って行ってね。」


「有難く持っていかせてもらうよ」


そう言って俺は学校に行く準備のために自室に戻る。

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