第11話 僕とおしゃべりしませんか?
フランクザッパ・ストリート。
フィフス・アベニュー。
バーボン・ストリート。
実在する街路もあるけれど、空想の中や今読んでいる本の中だけにある通りの名前や、音楽の中に登場する道の名前もある。
だから、僕も何か、気に入りそうな名前を考えてみようかなと思って。
O.ヘンリー・ストリート。
実は今、オードリー・ヘプバーンと書こうとしてOと書いてしまい、ヘプバーンはAだった!と気づいて急きょヘンリーに変えた。
ジョニ ミッチェル・アベニュー。
エイミー・ワインハウス。これはお店の名前にいいナ。一杯呑み屋、というとあまりにシャレてないけど、将来もし彼と小さなお店が持てたりするようなコトがあったら、エイミー・ワインハウスって名前にしよう。
それが、とびきり美味しいコーヒーを飲ませる喫茶店であっても。
日本酒をグラスでしか出さない、頑固オヤジのこだわりの呑み屋であっても、店の名前はエイミー・ワインハウスだ。
けど。
待てよ。
頑固オヤジって……、誰のこと?
僕は多分、これから歳をとっても今のノンビリ屋が改善されるとは思えないし、思えないどころかそのノンビリ屋に拍車がかかるのは目に見えている。
彼は彼で、まるで僕の引っ込んだところを補うようにセカセカした世話焼きなところのある人だけど、それがこの先、頑固オヤジに急変するとも思えないんだよなぁ。
そうか。
僕らは二人とも頑固オヤジには不向きなんだ。
それならば、日本酒をグラスで呑むのを「こだわり」とか言っちゃうのも説得力に欠けるだろうか?
それとも、頑固と言わずにそれを僕らの流儀にしてしまえばいいのか。
「こだわり」って言葉も何か邪魔くさく感じるから、この際引き出しにでも片付けてしまおう。
『とびきり美味しいコーヒーを飲ませてくれるお店
(ただし、その日によってメニューが変わります)』
『透明なグラスで美味しい日本酒が呑めるお店
(ただし、その日によってメニューが変わります)』
どうかな? どう思う?
共通してるのは「美味しい」ということと、その日によってメニューが違うこと。
僕らは美味しいものが好きで、毎日決まったスケジュール通りに生活するとか、「こうでなければならない」とかの決まり事が好きじゃない。
それは、外から見たらとても高い志を持って甘美な自由を満喫しているように映るかもしれないけれど、要するに僕らは自分勝手で頑固なおっさんだっていうだけのこと。
…………あれ。
僕たち、頑固なの?
頑固オヤジの資質、持ってた!?
あはは!
話してみるもんだね!
じゃあ、もしも将来、街のどこかでエイミー・ワインハウスって妙な名前のこだわりの呑み屋を見かけたら、ぜひドアを開けてみてよ。
一杯ぐらいごちそうするから。
End
★お題「引き出し」(「背骨」「引き出し」「蒼白」のうち一題使用)
深夜のキッチンで、好きな本を広げグラスに少しだけお酒を注いで、彼の帰りを待っている。もし今時間があるなら、僕と他愛もないおしゃべりをしませんか?
……というノリで書きました。
好きな本のタイトルやミュージシャンの名前をぶっ込んでいます。この頃、エイミー・ワインハウスをよく聴いていました。いつもオチ等を考えずに書き始めますが、「おー!おさまったじゃーん」(当社比)と思った掌編でした。深夜、子供たちが寝静まった後でポチポチ書いた記憶があります。
#一次創作BL版深夜の真剣120分一本勝負 2017年4月参加作
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