第7話 心の余裕
札幌南区にいる男友達に女性を紹介してもらおうと、LINEを送った。
<谷川たにがわ、久しぶり。今、暇か? 電話していいか?>
今日は日曜日で、十三時三十分頃。谷川は休みで家にいるかもしれない。それか、彼女と会っているか。
彼は役場の福祉課で働いている。少し時間が経過してから、
<おう、山崎。今は彼女の家にいて泊まるから、明日の朝にしてくれ。それか、LINEを送っといてくれれば後で見るし>
やっぱり彼女の家か、羨ましい。僕も頑張らないと。LINEを送っておこう。
<女の子紹介してくれないか? できれば年下がいい>
翌日の月曜日。朝八時過ぎにLINEがきた。きっと谷川からだろうと思って見てみた。やっぱりそうだった。本文は、
<おお、いいぞ。チョイスして後でLINEする。とりあえず、仕事に行って来るわ>
<了解!>
僕も仕事に行く支度をして出勤した。
どんな子を紹介してくれるのだろう。楽しみだ。
十七時三十分に退勤した。車の中でスマホを見た。LINEが一件来ていた。開いてみると思った通りの相手。谷川からだ。
<俺の友達だけど、会ってもいいって。いい子だぞ。優しいし。もし、仲良くなって付き合うようになったら山崎にはもったいないくらいだぞ>
そんなにいい女なのか、僕はより一層会うのが楽しみになった。
<それで、いつ会えるんだ?>
<それはまだ未定だ。決まり次第、LINEくれるってよ>
それで一旦、LINEは終わった。
さて、夕飯でも食うか。そう思い、仕事の帰りに買って来た野菜や豚肉、鯖を買ってきた。
野菜炒めに豚バラ肉を入れた。鯖の切り身に塩を振り、焼いた。トレーに今朝炊いておいたライスと、今作った野菜炒め、鯖の塩焼きを皿に載せて、居間に置いてあるテーブルに置いた。
「いただきまーす」
と、言い箸で野菜炒めから食べ始めた。美味い! 流石、僕。それから鯖の塩焼きも食べた、ご飯のお供に。これも、美味しい! そういえば、冷蔵庫に発泡酒が一本入っていたのを思い出した。僕は夕食を済ませてから、三百五十ミリの発泡酒を飲んだ。
冷蔵庫がおかしいのか、あまり冷えていない。まだ、買って間もないのだけれど。修理が出来ればその方が安い筈なので、先ずはこの冷蔵庫を買った個人の電器屋に電話をした。七回、呼び出し音が鳴り、繋がった。
『もしもし、谷崎電器です』
「もしもし、山崎です。こんにちは」
『あーっ、山崎さん。ご無沙汰しています』
「あのう、冷蔵庫をみて欲しいんですけど」
『あら、どうしました?』
今、話しているのは店主の奥さん。五十代くらいだろう。
「何か、あまり冷えないような気がして」
『そうなんですね、主人に言っておきますけど、見に行くのは何時なら都合がいいですか?』
「明日の仕事が終わってからにしたいので、十八時くらいに来てもらえますか?」
『わかりました。では、明日』
「はい、よろしくお願いします」
翌日、仕事が終わり、買い物を簡単に済ませ帰宅した。今日は谷崎さんが来てくれる。買う事にならなきゃいいけれど。もし、買うとしたら十万近くするだろう。それに、札幌に引っ越してから今年買ったばかり。電化製品も、当たり外れがあるらしい。僕は外れを買ってしまったのかな。何だか残念な気分。
時刻は十八時を少し過ぎたところ。僕は何で冷えにくいのだろうと思い、冷蔵庫の中を見ていた。でも、見ているだけでは当然のごとく分からなく、冷蔵庫を閉めた。その時だ、家のチャイムが鳴った。谷崎さんかな、と思いつつ玄関に行った。
「はーい」
と僕は返事をすると、ドアの向こうから、
「谷崎電器です」
聞こえた。
僕はドアを開けてやると、白髪頭が印象的な、でも、六十代とは思えない屈託のない笑顔で立っていた。僕は、
「お願いします」
と家の中に促した。
僕も台所に行った。
「冷えないんだっけ?」
谷崎さんは言うと、僕は冷蔵庫を開けながら、
「全く冷えない訳じゃないんですけどね」
僕は答えた。
「ちょっと見させて下さいね」
僕が谷崎電器で買った冷蔵庫は、四百リットル。一人で使うのには大きすぎた。
谷崎さんは、冷凍庫も開けていた。
「送風口に霜がついていると、壁となって冷気の通り道を塞いでしまうんですよ。それで冷気が行きわたらず冷蔵室が冷えない状態になっていると思います」
僕は、谷崎さんが説明してくれたがよく分からなかった。続けて説明してくれた。
「食品を詰め過ぎると霜がつくのであまり入れ過ぎないほうがいいですよ」
冷蔵庫の中は、独身とは思えないほど食品や飲み物などを入れていた。
「それが原因なんですね。分かりました、気を付けます」
「それで、クーラーボックスありますか?」
谷崎さんが質問したけれど僕は、
「いやぁ、ないですね」
「そうですか。それであれば、わたしが持ってるクーラーボックスを貸しますので、そこに食材等を入れて保管しておいて下さい。とりあえず、冷蔵庫の電源を抜いて霜を溶かしますので」
「分かりました」
「それで、霜が全て溶けたら乾いた布で拭いて下さい。それから再度、電源を入れて下さい。そして今よりも少ない量の食材や飲み物等を入れて下さい。多分、それで大丈夫かと思います」
僕は、
「分かりました」
と、答えてから、
「いくらですか?」
訊くと、
「いやいや、買ってもらったばかりだからお代はいいですよ」
実に良心的だな、と思った。
谷崎さんが帰った後、言われた通り、作業を進めた。
家のチャイムが鳴った。誰だろう? と思いながら玄関に言って、ドアを開けた。谷崎さんだ。
「クーラーボックス、持って来たよ」
「ああ、ありがとうございます」
「明日でも取りに来ますね。他にも使いたいお客さんがいるかもしれないので」
谷崎さんが去ったあと、僕は作業を再開した。霜が溶けるまでにやや暫く時間がかかった。
クーラーボックスには生ものも入っている。刺身や卵など。あとは、魚の切り身もある。それから豚バラ肉や、豚肉のスライスなどいろいろ入っている。飲み物もある。それらを全部入るだけクーラーボックスに入れた。結構、大きなクーラーボックス。それでも、全部は入らない。仕方がないので、飲み物は腐らないので、そこから出し生ものを先に入れた。隙間に三百五十ミリのビールが二本くらい入るくらい。数時間、経過して冷蔵庫を開けてみると、霜が溶けて水浸しになっていた。予め、雑巾を用意しておいたので、それでふきとった。ある程度拭き取って、コンセントを刺し、少なめに冷蔵庫に入れた。生ものは出しておけないので、冷蔵庫に入れた。
一応、谷崎さんに電話をしておくか。五回呼び出し音が鳴り繋がった。
「もしもし、谷崎さんですか?」
『ああ、山崎さん、上手くいきましたか?』
「はい、大丈夫だと思います。ありがとうございます」
『いいえ、買って頂いて間もないので、申し訳なくて』
そう言われ、僕は黙っていた。
『また何かありましたら、言って下さい』
僕は、「はい、分かりました」と返事をし、電話を切った。
フーッ、大変な目に合わされた。玄関のポストに谷崎電器のチラシが入っていたから、見てみたら安いのかな? と思ったので買ったまでで、それまでは知らない人だった。今度、電化製品を買う時は、大手の店に行く事にする。やっぱり個人の店は五年間保証とかも無いし、大手の店と比べたら高いかもしれない。
そう思っている内にLINEが来た。誰からだ? と、思って見た。谷川からだ。例の女の子の事かな。
<女の子の話しだけど、今週の土曜日の夜七時頃はどうかって言ってるぞ、どうする?>
<ああ、大丈夫だと思うよ>
待ち合わせ場所はどこだろう? と、思い訊いてみると、
<俺の家に来てくれ。奈々は家まで迎えに行くから>
<奈々っていうのか>
<ああ、後で自己紹介みたいなのをすると思うけど、神崎奈々かんざきななっていうんだ>
<何歳だ?>
<年齢は本人から教えてもらってくれ。俺の口からは言わない方がいいと思うから>
<了解>
今日は金曜日。明日、奈々という女性に会える。楽しみだ。僕のタイプは綺麗系より、
可愛い系。果たしてどちらだろう。気になる。明日会えば分かることだけれど。
翌日、僕は仕事が休みだけど、奈々さんに会うという用事があるので緊張していて朝早くに目覚めた。今は午前七時過ぎ、いつもならまだ眠っている時間帯。因みに三人で何をするんだろう? カラオケ? 食事? それと、奈々さんは煙草を吸うんだろうか。僕は吸うのだけれど。きっと、谷川の車で移動するかもしれないから、喫煙は控えよう。仕方ない、人の車だから。でも、訊いたことがなかったが、谷川は喫煙者なのだろうか? 暫く交流が無かったから分からない。もし、谷川も喫煙者なら運転しながらでも吸うかもしれない。それなら、僕も吸える。出来れば吸いたいから。そんなことを考えながら、ベッドから降りてシャワーを浴びる為に、下着と青いロングTシャツと、ジャージを用意して浴室に入った。
出掛ける準備はまだ早いので、とりあえず煙草に火を点けた。今夜が楽しく過ごせるといいなぁ。
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