今も、昔も、これからも。
後日談1 今
~あれから4年~
「冬真~!朝ですよ~!起きてくださ~い!」
気持ちよく寝ている冬真を、元気な声で叩き起す。何時もの様に。
「んん~…まだ寝る…」
変わる事のない、何時もの冬真の返し。毎日するこのやり取りに飽きたことは無い。むしろ愛おしさが増すばかりで、それは、留まることを知らない。
「だーめーでーすー!冬真は今起きないとずっと寝ちゃうじゃないですかっ!そんなのダメです!私が暇になっちゃいますっ!」
そう言い、冬真から布団を剥いでみる。
「さむい…やめろ、眠いんだ…」
そう言い、すぐに奪い取られ、今度は取られまいと布団に包まる。
こんな彼を見るのも、こんなに会話をするのも、何回もした、でも何回同じ事をしても、私だけに見せるのんびりとした彼を見るのは、ただただ愛おしい。
「もう…そんなに駄々こねてると、約束していたプリン買ってあげませんよ?」
「……僕は物で釣られる程安い男じゃないよ…」
「…間がありましたよ?」
「…気のせい」
「アップルティー…」
食いつくと知ってボソッと呟く。聞こえるように。期待させるように。
「おはよう!いい朝だね!」
「安っ!!この男安っ!!」
「値下げした!そんな事より早く!アップルティー早く買いに行こ!」
目をキラキラさせて、笑顔でアップルティーを強請る。さっきまでの眠たそうな雰囲気は無くなっていた。
ただのアップルティーだけでここまで元気になる彼がが、子供っぽくて可愛らしい。そんな彼を見ていると可笑しくて呆れて、それなのに愛おしくて、笑みが漏れてしまう。
「ふふっ…もう、わかったから、早く準備して、行こ?」
眠い体を無理矢理起こして、寧々とスーパーに向かう。週に1回、寧々とスーパーに向かう。昔は外に出かけるよりも寝る好きだった、いや、寝る事が好きなのは変わらないが、今は寧々と一緒の、この時間が好きだ。
「寧々、僕らは、そんなにデート…とかしないけど、寧々は不満…無い?」
不安だから、恐る恐る聞いてみた、この時間が僕だけが好きなら、嫌だったから。
「不満?無いですよ?そもそも私はデートで高いレストランとか、オシャレな店に行くよりも、好きな人と一緒にスーパーで買い物する方が好きですから。だって、それだけの仲ってことじゃないですか」
そう彼女は嬉しそうに、楽しそうに、そう言う。寧々のそういう顔が、言葉が安心させる。
「でも、デートが嫌ってわけじゃないですよ?私はあなたと一緒なら何処だって嬉しいし、楽しいです」
そう笑顔で、僕に言う。
「そっか」
照れてしまい、そっぽを向く。
「…そういえば、寧々、あんまり僕の事、からかわなくなったよね?むしろ素直になってる」
「だって…それは、私の照れ隠しと私の気持を隠してただけで…冬真と居ると、緊張して、どうにかなってしまいそうだったから、必死で押さえ込んでたの、その結果があれなだけ…許して?」
「別に気にしてる訳じゃないんだよ?どうしてかなーって思っただけだよ。あと、敬語も、あまり使わなくなったね?癖で出てる時あるけど」
「付き合って4年なのに、ずっと敬語も変かな?って思ったの。冬真は、私の今の喋り方嫌?敬語がいいの?」
「いや?今の寧々の喋り方、凄い好きだよ。たまにでる敬語もいいけどね?」
「そう?あなたがそう言うなら、ずっとこの喋り方にしようかな」
「…ほんと素直になったね?」
「あなたのせいだからね?」
そう言い、ずっと変わらない笑顔を、君は僕に向ける。
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