番外編 認めたくない誤ち
祐介の夕食の為に少し遠いスーパーに買い物に行く。
何にしようか悩んだ。私には余り意思が無かったのだ。
私は好きな人に合わせ、染まる事が好きだった。だって好きな人に合わせると、好きな人と同じ事が出来るから。染まると好きな人がやってる良さも分かる。趣味でも、食事でも。
だから私はこれといって自分が食べたい物など無かった。だから聞いた。
「ねぇ、冬真、何食べたい?」
…冬真…?なんで…だって私…祐介の為に…
…嘘…嘘よ…そんなはずない…そんなはず…ある訳ない…
そこからは早足になった、ここに居てはダメだと思った。とりあえず祐介の夕食は弁当にする事にした。適当に選んだ奴だ。そして飲み物を選ぶ。手に取ったものはアップルティーだ。そしてレジに並ぶ。待ち時間にイライラした。早くここからでたかったから。
お会計が終わりアップルティーと弁当を入れ、逃げる様にスーパーを出る。追われてもいないのに。
祐介と住んでいるアパートに急いで戻る。余りにも急いでいたので息を切らせていた、アパートに着いてからは安心したようにドアにもたれる。そしてため息を着いたあとに深呼吸をする。そして弁当をレンジで温め、アップルティーをコップの中に入れる。
入れようとした。手に取っていたのは私と冬真のペアカップだった。急いで取り替えた。壊さないようにそっと置き、適当なグラスコップと取り替える。
そしてアップルティーを入れ、温めた弁当をテーブルに置いた。
何も考えたくもなかったのでベッドに体を預け、眠る。
しかしいつもの様に直ぐに眠ることは無かった。上手く寝れなくてイライラもした。目を開けて時計を見る。しかし時計には目がいかなかった。時計に向けようとした視線はその横にある私と冬真が幸せそうに笑っている写真に目が行った。鼓動が早くなり罪悪感に押し潰されそうになった。怖くなり布団に縮こまった。が、微かに残っている冬真の匂いでここもダメだと思い、慌てて布団から出る。どこか何もない場所が無いか部屋中を見渡す。しかしそんな場所はなかった。
それもそうだ。そもそもこのアパートは冬真のアパートなのだから。だから何処もかしくも冬真との思い出でいっぱいだった。だから外に逃げた。が、そこも冬真との思い出でいっぱいだった。辛かった。
一緒に笑って帰るアパートまでの道、一緒に遊んだ公園、夜の散歩で通った歩道橋。そして付き合って初めてキスした場所。逃げる場所全てが冬真との思い出が立ち塞がり、軈て逃げる事を諦めさせ、座り込む。
気が付けば夜だった。急いで逃げた為、薄着だった。帰りたくなかった、が寒かったので渋々帰ることにした。
その帰りに祐介が私以外の女の子に腕を抱かれている所を見て絶望した。
そこからの記憶は無かった。辛うじて分かっていたのは冬真の服を抱えベッドに倒れ込んでいる事だけだった。
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