第8話 食事

「それは…先輩の事が…貴方の事が大好きだからです…愛しているからです」

「…そっか…でもその気持ちにまだ応えれない…ごめんね。」

「…いえ、いいんです、応えなくて…でも…でもね?先輩…さっきも言った通り私は貴方の事が大好きなんです。だから私は貴方に…死んで欲しくないんです…貴方が辛いと…私まで…辛く……なっちゃい……ます…」

泣きながら寧々は言った。


正直揺らいでしまった。寧々の言葉に…想いに。


「先輩…私、言いましたよね。先輩が自殺しようとするなら私も死にますって…この言葉本気ですから…だって私…先輩の居ない世界で私が生きる理由なんてないんですよ?…先輩が私の生きる理由なんです…だから…先輩が死ぬ時は私も一緒です…」

重いと思った。だけど…嬉しかった。

(寧々が居なかったら僕はもうとっくにこの世に居なかっただろう…僕は何度寧々に救われただろう…)

そう思うと寧々に身投げを止められて良かったと思った…だから口にした。

「寧々…身投げするの止めてくれて…ありがとう…」

「そうですか…考え直してくれてよかったです…♪」

寧々はそういい笑った。さっきまで泣いていたとは思えない程何時もの…何一つ変わらない笑顔で笑った。








寧々の告白後、しばらくして寧々の家に着く。

「先輩、どうぞ上がってください♪」

「お、お邪魔します…」

これから泊めさせて貰うのだと思うと変な気分になる。相手が男なら気にせずに寛げるだろう。だが相手は女の子だ。そんな事は出来るはずが無かった。

「寧々、僕は何処で寝ればいいかな…?」

「逆に先輩は何処で寝たいんですか?もしかして…私の部屋…ですか?いいですよ…先輩になら」

最初は冗談っぽく笑っていたが、最後だけは本気の様だった。

「…冗談はまだ止めてくれないかな…とりあえず、僕はリビングで寝るよ…良いかな…?」

「…ダメって…言ったらどうしますか…?」

「えっと…」

「ふふ…冗談です…♪良いですよ、リビングでも」

冗談はまだ止めてと言ったんだけどな…けど嫌いじゃなかった。

不思議と心地よかった。

「先輩、ご飯食べましょ?私が作りますよ、何がいいですか?」

ご飯…?…そういえば一昨日の昼から何も食べていなかった…それに気付いた途端空腹感が蘇る。そして腹の音も鳴る。恥ずかしかった。寧々と2人きりのリビングで腹の音が鳴ったのだ。それも寧々に聞こえる程。とりあえず慌ててて何を食べたいか言う、腹の音は鳴らなかった事にして。

「カ、カレーが食べたい!」

「ふふ…必死な先輩可愛い♪そんなにお腹空いていたんですか?待ってて下さいね、直ぐ作りますから」

そうまた笑顔になる寧々。そして直ぐにカレーを作る作業に入る。トントントンと慣れた手つきで野菜を切る。その音が心地よかった。自分では気付かなかったが、視線は寧々を見ていた。

しばらく寧々を見ているとその姿に違和感を覚えたが、直ぐに理由がわかった。左手でやっていたのだ。すごいなと思った。右手でもあんなに早く出来ないのに寧々は左手で、あんなに早く野菜を切っていたので凄いな…寧々は…

そう思った。













その頃


あれからどれ程たっただろう…ずっと祐介の相手をして疲れた 。気持ち良くない訳では無かったが、流石に疲れたのだ。そう思っていると祐介も疲れたらしく行為をやめてタバコを吸う。

「おい、香子、金」

パチンコ代位自分で払えばいいのに…と思ったが言うと面倒な事が起こる気がしたので渋々渡す

「チッ…これだけかよ…」

腹が立った。冬真ならこんな事は言わないんだろうなと思った。

この時はなんで冬真の事が出てきたのかは気にしなかった。













「先輩、出来ましたよ」

美味しそうな匂いだった。早く食べたくてウズウズした。

それに気が付いたのだろう。寧々は少し意地悪をしてきた。

カレーを僕の目の前に置く。それと同時に反対側にカレーを置き寧々が椅子に座る。

そして寧々が

「頂きます」

と言った。寧々はゆっくり、上品に食べる。僕も早く食べたかったが出来なかった。スプーンを置いてくれなかったのだ。

「…寧々、これだと食べれないよ…?」

「ふふ…♪すみません先輩、ウズウズしてる先輩が可愛くて…つい悪戯しちゃいました♪はい、どうぞ」

やっと食べれる。空腹だったので我慢出来ず直ぐに食べようとした。しかし、その瞬間寧々に止められた。

流石にムカッときた。これ以上空腹を我慢できなかった。

表情で察したのだろう、寧々が何故止めたか言ってくれた。

「先輩、止めちゃってすみません、でも食べる前にしないといけない事あるでしょ?」

その通りだった、これは僕が悪かったので素直に謝る。そして手を合わせて言う。

「頂きます」

そう言うと寧々はまた笑顔になった。

「どうぞ、召し上がれ♪」


すぐさまカレーに手を出す。1口食べると手が止まらなかった。1口、また1口と次々に頬張る。それ程までに美味しかったのだ。


…香子の作ったカレーよりも遥かに

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