第176話 過去の愚痴
次の患者は倉本安奈16歳である。
渋沢吾郎:どうしましたか?
倉本安奈:いつまで経っても過去を割り切れない自分が大嫌いです。ほぼ愚痴になります。小学生、中学生のときにいじめを受けていました。今でも頻繁に夢に当時の状況が非常に鮮明に出てきて吐き気がします。具体的に何をされたかというと密室に閉じ込められて自慰を強要されたり(自分の中で何かが終わる気がしたので必死に断りました)教室の窓を開けて「ここから飛び降りろ」と茶化されたりしました。あと私は物心がついた頃からかわいい女の子を描くのが大好きで、よく時間があれば自由帳に描いていたのですがそれを見られて「気持ち悪い。」「レ○ズ」と罵声を浴びせられました。これが一番よく夢に出てきます。当時は「なんでこんな事するの?」と疑問でしたが今思えば自分にも問題がありました。客観的に幼少期の自身をみると壊滅的に空気が読めない自意識過剰かまちょ害悪キッズでした。頻繁に人の会話に割り込んだり、空気の読めない発言をして周りの空気を悪くしていました。おまけに友達ができても疑心暗鬼になりわざと嫌われるような事をして試すような真似をしていました。もし過去の自分と対面したら何を勝手に一人で被害者面してるんだと顔面の原型がなくなるくらい踏みつけてやりたくなります。どうしても先生に聞いてもらいたくて来ました。
渋沢吾郎:みんなそうやって大人になっていきます。いじめがあったり、失敗が当たりするのはしょうがないです。みんな経験ています。今日来た目的は何ですか?
倉本安奈:愚痴です。だれにも話す人がいませんでした。
渋沢吾郎:いま、孤立している人多いみたいですね。
倉本安奈:そうなんですか?
渋沢吾郎:今、友達はいますか?
倉本安奈:います。けど、過去の失敗を繰り返さないようにと思っています。
渋沢吾郎:今度は空気が読める人になってください。空気の読み方は原因と結果が解っていれば、自ずと悟ると思います。どうでしょうか。
倉本安奈:原因と結果ですか。
渋沢吾郎:そう。そうすれば、予測ができるようになりますよね。
倉本安奈:予測ができれば怖いものなしですね。
渋沢吾郎:そう。カウンセラーも予測の能力は必要とされています。心理的予測です。それが身についたら簡単には失敗しないと思いますが。
倉本安奈:私もそう思います。ありがとうございました。
と、倉本安奈は帰って行った。
そして夜。吾郎は清子と話した。
渋沢吾郎:今日の高校生の女の子に難しいことを言った気がする。
渋沢清子:でも、今はそれが当たり前の時代よ。いいんじゃない?
渋沢吾郎:清子は最高だよ。否定しないし。
渋沢清子:あなたも最高よ。テクニック上手だし。
渋沢吾郎:そこかい。
と、渋沢夫婦は今日も仲のいい夫婦でした。
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