第94話 低い自己肯定感

 今日の患者は宮川麻衣19歳である。

渋沢吾郎:どうしましたか?

宮川麻衣:私は自己肯定感が低く、周りの人から否定されるのがとても怖いです。例えば、バイトでは1度でもミスして注意されると全てが終わってしまったように絶望してしまい、次のシフトの時は緊張と不安でバイトに行きたくなくなります。また、バイト先の方が優しく「大丈夫だよ、次頑張ろうね」と言ってくれることもあるのですが、その時は「本当は使えねーやつと思っているのでは…」とネガティブに考えてしまいます。もちろん次は絶対失敗しないように!と考えて行動しています。

渋沢吾郎:それから。

宮川麻衣:そんな私も家ではやっぱりダラダラしてしまいます。母親が怒る気持ちもとても分かります。また最近は大学生になり、人間関係が広がったこともあり、遊びに行くことが多いのですが、遊びに行きすぎ、と怒られることも増えました。バイトをしてるため、基本的には自分のものは自分のお金で買っていますが、実家暮らしの為、食費や家事は親に頼ってしまうのも事実です。

幼少の時から母親に怒られるときも、バイトで怒られた時のように絶望します。母親の怒ること、言っていることは全て正しく、私が反論する余地もありません。友人は「今日親と喧嘩してさぁ〜」と軽く言いますが、私にとっては親と「喧嘩」など信じられません。言い合いが出来ることが凄いと思ってしまいます。

またそんな軽く喧嘩してさ〜などというテンションでもいられません。私が怒られた時は一気に怒鳴られ、その後何日間もギスギスした関係が続き、最悪ほとんど無視です。(私が怖くて話しかけないということもありますが)

私は母親が大好きなので、はやく機嫌をなおしてほしいし、私も悪いところを直したいと思っています。

しかし謝ると「聞き飽きた」「何に対して謝ってんの?」と言ってきます。もちろん私も大いに反省して謝るので、適当にごめんなさーいなどと言っている訳では断じてありません。言葉でダメなら行動で示そう、と家事の手伝いなどをしてみたりします。怒られたことに関することは直して行動します。しかし「急になにしてんの?」「怒られた時ばっかり」と言われます。もちろん母親の言いたい事は分かります。母親からしたら怒られたから、とりあえず謝って、急にいい行動をしているように見えるのでしょう。

しかし私は大いに反省していますし、言葉でも行動でもダメならどうすらばよいのでしょうか。たかが実家暮らしの大学生である愚娘ですが、どのように行動すれば母親にとって最善なのでしょうか。

渋沢吾郎:そうですね。周りに対しての非難に恐れすぎですね。非難されるとそれに従順になってしまう。というのもよくないかもしれません。

宮川麻衣:ではどうすればいいんですか?

渋沢吾郎:生き方を変えてみましょう。あなたの場合はこれからは自分の都合よく物事を考えた方がいいと思います。

宮川麻衣:なるほど。生き方を変えるのですね。でも、それって自分勝手ではありませんか?

渋沢吾郎:あなたの周りを大事にする価値観に自分を大事にする価値観を加えてあなたの考えに沿ってあなたの都合よく考えるのです。意味わかりますか?

宮川麻衣:うーん。

渋沢吾郎:あなたには自分の意見がないのが原因ですので自分というのを作っていきましょう。

宮川麻衣:はい。

渋沢吾郎:まずはあなたは周りを大事にする。あなたのいいところは他人を非難しなとことです。これは人間関係を築くにあたってかなりいい考えです。しかし、いちゃもんをつける相手には言いなりにあんるんではなくしっかり自己主張してみましょう。相手も人間です。相手にわかってもらえるような自己主張の仕方をしてみてください。

宮川麻衣:しかし、そんな技術は私にはありません。

渋沢吾郎:これから、身に付けるのです。それには相手の性格を見抜くのです。そうすれば、うまくいくはずです。相手の性格を見抜くためにはよく相手を観察することです。いいでしょうか?

宮川麻衣:わかりました。なんとなくわかった気がします。

渋沢吾郎:なんとなくでは困るのですが、あなたの場合、気を使いすぎです。それに、怒られたらすぐに謝るだけではだめだと母親は言いたいのかもしれません。ですので、母親と腹を割って話す機会があっていいと思います。その辺母親の意見を勇気を持って聞いてみてはどうですか?

宮川麻衣:わかりました。なんか母が言いたいことを聞いてみます。

渋沢吾郎:それでは今日はもう言いですね。

宮川麻衣:はい。ありがとうございました。

 と、宮川麻衣は帰っていった。

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