第59話 ダメ人間
次の患者は白井信男、二十七歳である。吾郎はいつものように、
渋沢吾郎:どうしました。
と言うと、白井は無念そうに言った。
白井信男:会社でリストラされました。
渋沢吾郎:あなたの気持ちはどうですか。
白井信男:自分はダメ人間じゃないかと思い始めています。
渋沢吾郎:自分の事をダメ人間って言っていますが、自分がダメかどうかは社会や世間体が決めるのではなく、自分が決めるものですよ。
白井信男:しかし、リストラされました。
渋沢吾郎:リストラは関係ないんじゃないんですか。会社が君の能力を見抜けなかったからだと思いますが。
白井信男:でもなかなかそうは思えません。
渋沢吾郎:仕事の業績は。
白井信男:まん中ぐらいです。
渋沢吾郎:じゃあ仕事が原因じゃないですね。人間関係はどうなっていたんですか。
白井信男:まずまずといったところです。
渋沢吾郎:まずまずというのはとりあえず普通に職場の人と付き合えるというところですね。
白井信男:はい。
渋沢吾郎:では、気分転換に心理テストをしてみますか。
白井信男:お願いします。
心理テストの結果が出た。
『自分自身をうまく使いこなす事ができず、自分の事を悲観的に見てしまう傾向にあります。』と出た。吾郎は言った。
渋沢吾郎:どうです。あなたにぴったりな回答だと思いますが。
信男はこれを聞いて何か気がついた感じで、
白井信男:そうですね。自分もそういわれると自信のなさが原因だと思います。
渋沢吾郎:それでは自信を持って、自分の能力を信じて、再就職してみますか?
白井信男:はい。しかし、自分自身の能力と言われましてもどういう能力を持っているか自分にはわかりません。
渋沢吾郎:それは、今まで自分は何をやってきたかを問い直したら見つかると思います。それから再就職先を見つければいいと思います。イベント業なら私は副業としてやっていますが、それでよければ言ってきてください。
白井信男:わかりました。ありがとうございます。なんとかそうしてみます。あの、今考えたんですが、一週間ぐらい落ち着いて考える場所はありますか。
渋沢吾郎:ありますよ。ペンション吾郎ってところが。軽井沢ですから気持ちいいですよ。テニスもできますし、体育館ではバレーやバスケもできますよ。
白井信男:風呂は?
渋沢吾郎:もちろん温泉です。
白井信男:あと他に何かありますか。
渋沢吾郎:自然に囲まれています。料理はおいしいです。
白井信男:わかりました。一週間ぐらい考えたいのでそこで休息させてください。
渋沢吾郎:わかりました。
一週間後、なんとか自力で立ち上がり、吾郎のイベント業をやる事になった。
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