第47話 恋愛(貴子の場合:前編)
次の患者は清瀬貴子21歳である。
渋沢吾郎:今日はどうですか?
清瀬貴子:立ち直れません。
渋沢吾郎:貴子さんにとって、彼氏は大きい存在でしたからね。
清瀬貴子:はい。それからいろいろ考えても、彼が忘れられません。
渋沢吾郎:あなたに彼の子供ができてから別れさせられたのはショックですよね。
清瀬貴子:私の親が納得しないんです。彼は何も悪くない。そう思います。
渋沢吾郎:前回、あなたはパニック症と似たような感じでした。そういう時は、気持ちを整理することが必要でした。で、ご両親はその彼と絶対付き合うなといっているんですよね。
清瀬貴子:はい。
渋沢吾郎:でも、あなたは彼を愛しているのですよね。
清瀬貴子:はい。
渋沢吾郎:彼の居場所は私がつきとめました。ですが、私はその彼の気持ちは聞いていません。また、会いたいですか?
清瀬貴子:はい。
渋沢吾郎:自分が傷ついてもですか?
清瀬貴子:はい。
渋沢吾郎:彼には妻がいます。私はどうしたものかと思っているのですが、彼は貴子さんが思っているほどの人ではないかもしれません。それでもいいですか?
清瀬貴子:はい。
渋沢吾郎:彼は今の妻と別れて貴子を取ってほしいと貴子さんは願っているので、私は止められませんが、彼が会いたくないといいましたら。
清瀬貴子:そのときはあきらめます。
渋沢吾郎:わかりました。貴子さんのご両親は納得いかないとおみますので、私が変わりに保護者としていきましょう。
清瀬貴子:ありがとうございます。
と、その3日後、吾郎と貴子はその彼も元へ行った。彼の家へ二人は行った時、彼は家にいた。
春山忠雄:貴子。久しぶり。
清瀬貴子:うん。
春山忠雄:渋沢先生からいろいろ聞いたよ。
清瀬貴子:そう。
春山忠雄:正直言って、君との関係は恋愛の外だったよ。それでも、君は俺を思っていてくれたんだね。
清瀬貴子:うん。
春山忠雄:だけど、これからは君はどうするんだ?
清瀬貴子:私は忠雄さんといたい。
春山忠雄:それは、非常に難しいんだけど。
清瀬貴子:そう。
春山忠雄:そこにいる渋沢先生がきちんと話してくれたんだ。本当は会わないつもりだったんだけど、それなりのけじめをつけてほしいって。
清瀬貴子:私たちは無理なの?
春山忠雄:無理と、言ったら君は立ち直れなくなると渋沢先生が言っていた。ただ、俺は無理なものは無理といっておきたい。
渋沢吾郎:ことの経緯は貴子さんから聞きまして、忠雄さんからも聞きました。お互いは好きであるもの同士でありました。しかし、忠雄さんいるという妻というのは実は3年も側にいないのです。こういう時は私的にはなにかの縁であるともいえます。忠雄さんの言った恋愛の外だったというのは嘘です。忠雄さんは気を使ったんでしょう。ただ、忠雄さんは今の妻のことを愛しているんです。しかし、その妻はどこかに消えてしまいました。忠雄さんにとっては辛い選択です。いつ帰るかわからない妻を待つか、今、向き合う貴子さんを待つか。それを忠雄さんはずっと悩んでいたのです。それでも貴子さんは付き合いますか?
清瀬貴子:状況がわかってきました。今は妻は側にいないのですね。
渋沢吾郎:こういうときは忠雄さんの奥さんの話も聞きたいものです。その奥さんは、私の調べでは所在はわかりません。これは忠雄さん次第です。ですが今すぐ決めろとは言いませんが、しばらく貴子さんが納得するまで貴子さんと過ごしてみてはどうですか?忠雄さんはどう思いますか?貴子さんには子供がいるということですが。
春山忠雄:そうですよね。しばらくは貴子とゆっくり話してみようと思います。
清瀬貴子:渋沢先生。ありがとうございます。
と、貴子は納得したが・・・・・・。
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