第39話 ネガティブな考え

 今度の患者は山口洋介36歳である。

渋沢吾郎:どうしましたか?

山口洋介:どうしてもネガティブになってしまうんです。

渋沢吾郎:山口さんは小説家だったですね。小説家はネガティブなものが無ければ書けませんよ。悲観的なものがあるから逆に書けるのです。いいのではありませんか?

山口洋介:しかし、悲観的というのは世間にあんまり受け入れられないようです。

渋沢吾郎:ではネガティブな考えをネガティブに考えて見ませんか?否定を否定するのです。

山口洋介:たしかにそう思います。ただ、私がネガティブに考えるのは、自分にとってどうしても不利な要素があるからです。

渋沢吾郎:不利というのは、何かと戦っているのですか?

山口洋介:ええ。全体から考えるとかなり不利です。

渋沢吾郎:ということは、山口さんは状況を把握しているのですか?

山口洋介:いえ。あくまでも想像です。

渋沢吾郎:まあ、山口さんは小説家ですから、状況を考えるのはわかりますが、ネガティブはネガティブを呼ぶといいます。ですが、ネガティブというのは逆に言えば、完璧主義だともいえます。不安要素を先に考えておいて未来の不測の事態に備えるという考えはネガティブだからこそできることです。小説も不安要素が無ければストーリーになりません。

私が考えるに、山口さんは完璧主義なのではありませんか?

山口洋介:いやー。確かにその通りです。私は完璧主義なのです。だから、不安要素を考えてしまうのです。

渋沢吾郎:完璧主義はある意味、損をする生き方のように見えますが、会社を建てる場合、あらかじめクレームが無いようにするにはと考えるのであれば、ネガティブは必要な考え方と思います。山口さんは自分のネガティブと肯定的に考えれば、そういう自分で自分を仕掛ける罠から抜け出せるかもしれません。どうでしょう。

山口洋介:まったく、おっしゃるとおりだと思います。

渋沢吾郎:では、今日はこれでいいですか?

山口洋介:はい。元気が出ました。ありがとうございます。

 と、山口洋介は納得して帰っていった。

 その夜吾郎と清子は話をした。

渋沢吾郎:いやー。ネガティブな思考は実は完璧主義といえることもある。それゆえ自分にどんどん突っ込む。突っ込まれても大丈夫な状態も完璧主義といえるだろう。

渋沢清子:でも、疲れるんじゃない。

渋沢吾郎:だが、経営者にはぴったりかもしれん。

渋沢清子:そうよね。経営はどうやったらクレームがないかを考える時にはネガティブの思考は必要よね。

渋沢吾郎:人の心にはいろいろあるけれど、マイナスを生かすのも自分、プラスを生み出すのも自分。とにかく前いに進むことが大事。

渋沢清子:でも、あなたも完ぺき主義でしょ。

渋沢吾郎:そりゃ完璧な答を考えようと思うからだよ。

渋沢清子:でも、その答があなたになるから、患者はみんな来るんだよね。

渋沢吾郎:その通り、カウンセラーは聞くだけじゃ駄目。

渋沢清子:そうよね。患者は答を求めているんだよね。

渋沢吾郎:そして私は答えは必ずあると思う。

渋沢清子:そう考えるのがあなたの偉いとこ。

渋沢吾郎:そう。患者の言っていることは何か、患者がも飲めているのは何か。これが大事と思う。

渋沢清子:で、6時間目の授業は終わりね。

渋沢吾郎:今の授業だったの?

渋沢清子:そうよ。授業料払わなきゃ。

渋沢吾郎:お金は?

渋沢清子:体じゃ駄目?

渋沢吾郎:よーし、今日も頑張ろう。

 と、2人は今日もドリームナイトを過ごした。

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