第9話 鬱なんです

三宅京子21歳が吾郎の診察室に訪れた。

渋沢吾郎:こんにちは。

三宅京子:こんにちは。

渋沢吾郎:どうなさいました?

三宅京子:私、鬱なんです。

渋沢吾郎:いつからですか?

三宅京子:急に鬱になりました。とにかくやる気が出ないんです。

渋沢吾郎:なるほど。そういう時は好きなことをやるのがいいんですよ。

三宅京子:でも、大学の勉強があります。

渋沢吾郎:でも、勉強はいくらやっても、昔のようには頭に入らないでしょ?

三宅京子:なんでわかるんですか?

渋沢吾郎:それぐらいはわかります。ですから、好きなことからやるのです。好きなことをやって、人生を充実させるのです。あなたはまだ21です。人生は遠回りしてもまだ十分取り戻せます。まず、あなたに必要なのは、心のゆとりです。あなたの欝は、おそらく焦るところから始まったのでしょう。鬱の人は本来は頑張りやが多いんです。しかし、焦って無理をした結果、何かがプツンとした状態になるのです。そうではありませんか?

三宅京子:なんか、私の鬱の原因の本質が見えてきた気がします。

渋沢吾郎:ですから、まずは焦らず、好きなことをやっていなさい。そのうちそれが突破口になりますから。

三宅京子:ありがとうございました。

 と、京子は満足した様子で帰って行った。

 今日の夜は吾郎は鬱について話していた。

渋沢吾郎:今日もだけど、本当に鬱の患者が多いな。

渋沢清子:そうね。鬱は目に見えないストレスが原因よね。

渋沢吾郎:そうなんだよ。努力しているのに結果が出ない。恋人ができない。自分が理解されない。何かやることが見つからない。自分はだめ人間だと勝手に思う。そういったところから起こるんだよね。解決方法はとにかくプラス思考でいること。鬱になる人はマイナス思考の人が多い。だから、鬱の人に対してはプラス思考の案を出してあげるのが一番なんだよ。

渋沢清子:あなたは本当によくできてるね。

渋沢吾郎:実は清子と会うまでは鬱だったんだよ。

渋沢清子:そうだったの。

渋沢吾郎:そう。そしてはじめたことはとにかく分析してみることだった。

渋沢清子:でも、あなたは凄いね。私といたときそんなこと微塵も見せなかったよね。

渋沢吾郎:鬱を見せたら負けだと思って必死だったよ。

渋沢清子:でも、良かったね鬱が直って。

渋沢吾郎:清子がいたから自然に治ったんだよ。

渋沢清子:私は薬だったの?

渋沢吾郎:そう。万能薬だね。

渋沢清子:でも、私はあなたのそういう一面も好きだったのよ。人間らしくて。

渋沢吾郎:え?そういう雰囲気出ていた?

渋沢清子:なんか無理している感じだった。

渋沢吾郎:そうか。でも、それでも俺と付き合ってくれて嬉しいよ。なんかやる気が出てきた。

渋沢清子:今日はどういうシチュエーションがいい?

渋沢吾郎:看護婦さん姿がいいなあ。

 と、今日も二人は自分たちの夜を楽しんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る