第8話 人生は難しい
次の患者は、上村洋一56歳である。
渋沢吾郎:どうぞお入りください。
上村洋一:はい。
渋沢吾郎:どうですか。
上村洋一:人生に疲れました。本当に人生は難しい。これまでがむしゃらに生きてきましたが、何も得られていません。
渋沢吾郎:私は、人生は楽しむものだと思いますが。
上村洋一:なるほど。しかし、今、私はうつなんです。どうしても人生がうまくいきません。
渋沢吾郎:なるほど、自分は今まで生きてきた成果が欲しかった。ということですか。
上村洋一:はい。
渋沢吾郎:私はこうもいます。人生は、因果の法則で成り立っています。努力があって、結果があるというのもは一般的ですが、努力の仕方にも問題があります。天は努力している者、間違っていない者は必ず、大舞台に出ると思います。そこで、成功するかしないかが決まるのです。とにかく目標を見据えて具体化し、そして行動していく。そうすれば、運がない限り成功します。どう思うますか?
上村洋一:では渋沢先生はご自分を成功者と思いますか。
渋沢吾郎:私は、軌道には乗ってきていると答えます。
上村洋一:そうですか。
渋沢吾郎:上村さん。勘違いしないで下さいね。軌道に乗るにはある程度の勉強と経験が必要です。そこのところは上村さんはどう思いますか?
上村洋一:なるほど。渋沢先生はものの見方がしっかりしていらっしゃる。しかし、努力は無駄になっていると思うとがっくりします。
渋沢吾郎:いえ、上村さんはきちんと結果を出していると思います。部下には慕われているのではありませんか?また、会社で仕事をやりきっているのではありませんか?
上村洋一:確かにその通りです。
渋沢吾郎:上村さんは人よりも数倍名声が欲しがっていると見えますが。
上村洋一:鋭いですね。
渋沢吾郎:しかし、人生で必要なのは、名声ではなく、振る舞いです。よい振る舞いは誰もが見ています。振る舞いを見ている人たちは、心の中では賞賛しています。ですから勝手に自己解釈して勝手に落ち込んでいるだけなのです。ですから、振る舞いを大事にしていったらどうですか?
上村洋一:渋沢先生は若いのに私を超えている。感服しました。また何かあったらまたきます。
渋沢吾郎:では今日は終わりですね。
と、今日の上村洋一との会話はこれであわった。
今日も五郎は清子と話した。
渋沢吾郎:今日の患者は名声がなくて落ち込んでいる人がいたよ。
渋沢清子:名声なんて自分から求めるものじゃないのにね。
渋沢吾郎:そうだよ。名声よりも、自分の人生を悔いなく生きる。自分はこれだけ頑張ったと、自分で自分を誇りに思うことが大事じゃないかなあ。
渋沢清子:そうよね。まずは、自分を認めることよね。また、人から名声なんかなくたって、生きることが楽しければ、また、価値あるものであれば、それで良いんじゃないかなあ。
渋沢吾郎:今日の清子は冴えてるね。
渋沢清子:私はいつも冴えてるの。
渋沢吾郎:今日の結論は、名声よりも充実した人生を送ること、そして、自分の人生がいかに社会に還元しているかを自分で感じること、そして最後に、自分を認めるのはまずは自分からと言うこと、だね。
渋沢清子:私、夫があなたでよかったと本当に思う。
渋沢吾郎:人生はわからないよ。最後まで。
渋沢清子:そうね。でも、あなたとの幸せがいつまでも分かち合いたいと祈っているよ。
渋沢吾郎:俺も。清子といつまでも一緒にいれますようにと。
渋沢清子:今日のあなたは100点だからたくさんサービスしてあげる。
渋沢吾郎:本当に清子のテクニックは凄いよ。
渋沢清子:あなたのテクニックのほうが上だと思うけど。
と、二人は今日の夜も楽しい時間を過ごした。
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