第10話 鬱なんですその2

次の患者さんは斉藤義男33歳である。

渋沢吾郎:今日はどうしましたか?

斉藤義男:今日も欝なんです。

渋沢吾郎:そうですか。前にあなたが言ったように、やっぱり噂は気になりますか?

斉藤義男:はい。自分に対しての非難中傷がひどく、自分の持っているものがすべて奪われるようで生きるのにやる気が出ません。

渋沢吾郎:そうですね。ここまで痛めつけられると、誰でも病気になりますよ。発狂しないだけすごいですよ。私は耐えられませんからね。

斉藤義男:渋沢先生は噂を知っているのですか?

渋沢吾郎:ある程度は聞いています。しかし、人は大なり小なり噂は出るものです。あなたにとっては辛いことですが、結局のところ受け流すしかないと思いますが。

斉藤義男:噂があったとわかっただけでもいいです。他の人は噂の存在すやあやふやにされているので。

渋沢吾郎:周りの人も気を遣っているのでしょう。しかし、あなたは強行突破したかったと思っていたようですがどうですか?

斉藤義男:その通りです。

渋沢吾郎:どういう方法で。

斉藤義男:相手を説得させるしかないと思っていますが。

渋沢吾郎:仮にそうするとしたら、力のある人が味方にいないと無理ですね。私は申し訳ありませんが、そこまで力はありません。

斉藤義男:とりあえず、今のところは受け流すことにしています。

渋沢吾郎:それがいいでしょう。そのうち抵抗力もついてきます。あなたには能力があります。将来活躍できる力を持っている人です。必ず道が見えてくるでしょう。

斉藤義男:渋沢先生は不思議な人ですね。なぜか話しやすい。理解されている実感があります。

渋沢吾郎:私も、並みの人生を送ってきたわけじゃないので。

斉藤義男:今日はありがとうございました。

渋沢吾郎:斉藤さん。後もう一言いいですか?

斉藤義男:?

渋沢吾郎:あなたは一人ではありませんよ。

斉藤義男:ありがとうございます。

 と、斉藤義男は満足して部屋を出て行った。

 今日も吾郎と清子は患者について話していた。

渋沢吾郎:しかし、噂を気にしている人って結構いるね。

渋沢清子:そうね。みんな表面には出さないけど、結構噂は気になるよね。

渋沢吾郎:そうだよな。噂はある意味自分の位置がわかるもんだからなあ。

渋沢清子:でも、噂は信じるものじゃないと思うよ。

渋沢吾郎:でも、半分は頭の中に入れておく必要はあると思う。

渋沢清子:そうね。でも、噂と現実はかみ合わないと思う。

渋沢吾郎:まあ、噂は誇大妄想の1つだからなあ。

渋沢清子:そうね。

渋沢吾郎:ただ、俺は噂より自分の目を信じるがね。

渋沢清子:その通りだね。

渋沢吾郎:今日はこの辺にしとくか。

渋沢清子:そうね。

 と今日の二人も有意義な夜をすごした。

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